2007けんざい
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建材情報交流会ニュース
  第9回「建材情報交流会」”安全・安心 PART-U” (防犯)

*機関誌「けんざい」掲載分です。ホームページ用に再編集しておりませんのでご了承ください
  
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「防犯性能の高い建物部品の開発・普及」
 警視庁指定広域技能指導官 富田俊彦氏
研究熱心な泥棒
 私は警察で28年間盗犯捜査に携わってきました。10年くらい前までは泥棒の手口は分かりやすいものでしたが、今は非常に複雑になっています。
 防犯のためのピッキング対策がよく言われています。泥棒は、ピッキングをするためにいろんな道具を工夫して使います。例えばフォークやダブルクリップなどを加工してピッキング用具にしてしまいます。
 市販のピッキング用具も使います。高価な道具でも泥棒はすぐに元を取るので便利だと思うものには投資しているのです。捕まえた泥棒から押収したり、現場から回収された道具を見ると、泥棒たちは誠に研究熱心であることがわかります。その手口たるや、一般の人が考える防犯の概念をはるかに越えています。
 本日準備した侵入用具などとともに最近の手口を紹介します。
 「ピッキングが困難な錠前をつけているから大丈夫」と思っていませんか。泥棒はピッキングできなければドリルでドアのシリンダーの近くに小さな穴をあけ、サムターン(錠のかんぬきを開閉する室内側のつまみ)を回して解錠します。これが「サムターン回し」です。針金を使ってサムターンを回す手口もあります。これは昨年の1月に東京ではじめに発覚し、その後一挙に全国に広まりました。最近は、できるだけ跡を残さないために、空き巣に入った後ちゃんと閉めて出ていく泥棒も多いのです。外から道具を使って施錠します。
 サムターン回し対策としてサムターンにカバーをつける方法もありますが、その場合でも受座を壊したりドアをこじ破ります。マンションのドアについている郵便受けは簡単に壊れるのでそこから手を入れてやすやすと解錠しています。
 ほかに多いのが、ガラスを破って侵入する手口です。マンションの場合は玄関から入ることが多いのですが、一般住宅では窓からの侵入が多いのです。バーナーでガラスを小さく焼き切り、クレセント錠を押して解錠、侵入します。
 家が無人か確かめるためドアスコープの外から室内をのぞくための道具や、マンションのオートロックのセンサーを解除する道具まであります。泥棒はどこに監視カメラが設置されているかお見通しで、その方向を向かないか顔を隠してしまいます。つまりオートロックや監視カメラだけでは抑止力にはならないのが実情です。
普通の防犯の概念ではもう追いつけない
 昨年9月、「特殊解錠用具の所持の禁止に関する法律」が制定され、ピッキングの道具を持っているだけで犯罪とみなされるようになりました。
 このように、今までの概念で防犯を考えていては追いつきません。これまで持っていた常識は捨て、もっとしっかりした防犯に対する考えを身につけねばなりません。
そしてハード面を担当するみなさんにとっては、それを理解したうえでの建材づくりが重要だと思います。
 このためには、錠前だけ優れていてももちろんだめで、ドアも、窓も、ガラスも、シャッターも、全部一緒になって防犯性を高める必要があります。実際すでに4月1日にリストアップした、優れた防犯性能をもつ建物部品が多く開発されています。泥棒の多くは平均で5分から10分の間で侵入できなければ諦めるというデータがあります。体力・気力的なことと、それ以上とどまると見つかる恐れがあるからです。泥棒を少しでも長く悩ませることがポイントです。
防犯はオールジャパンで考える
防犯性能の高い建物部品の開発、普及を目的に一昨年設置された官民連携の「官民合同会議」は品目別に詳細な試験を行ないました。そこで合格した建物部品はまさに泥棒を悩ませる、優れた防犯性能を持ったものばかりです。
しかし最近の泥棒の手口は約3カ月で変わるので、的確な情報分析が必要になります。
私たちも自分の身はもちろん自分で守らねばなりませんが、わが国の防犯のレベルアップのためには、自分の家だけ良いというのではなくオールジャパンで考えるべきです。
私は長年、いつも現場を見て仕事をしてきました。これからも日本の防犯のため力を注ぐつもりですので、建築材料に関係する皆様も今日の話をぜひとも仕事のなかで役立てていただきたく思います。そうすることが必ず確かな防犯対策につながります。今一番必要なことは、どんな事件が起きてどんな事態になっているかという的確な情報をキャッチして現状を理解し、それに基づいた防犯対策を立てることです。

「指定建物錠の防犯性能表示」
 (株)シブタニ クラビス事業部 市場開発室長 大塚 清弘 氏
資料はこちら(PDFデータ)
実際の手口に即した画期的な表示制度
本日は、「指定建物錠の防犯性能表示」制度についての法律的なこととそれに対する当社の取り組み、この防犯性能表示制度と「官民合同会議」の違いについてなどをお話しします。
 建築金物全般を手がけている当社の中でも私は錠前を扱う部署にいます。「クラビス」とはラテン語で鍵を意味しています。錠前を扱うなかで、この防犯性能表示制度は非常に画期的と言えます。
 「指定建物錠の防犯性能表示」制度は、昨年6月立法化された「特殊解錠用具の所持の禁止に関する法律」という大きな法律に明記されているものです。錠前に防犯性能を明確に表示することが義務づけられ、罰則もあります。
 「指定建物錠」とは、@シリンダー錠、Aシリンダー、Bサムターンのことを指します。この3つを指定していることから見ても、この法律がいかに被害の現状や泥棒の手口を踏まえて制定されているかがわかります。
 3つの建物錠それぞれに必要な表示項目が定められています。「耐ピッキング性能」、「耐かぎ穴壊し性能」、「耐サムターン回し性能」、「耐こじ破り性能」など、泥棒の手口に対応した内容です。性能は、規定の「防犯表示性能記入カード」に、試験の結果、どのくらいの時間ピッキングやかぎ穴壊しに耐えられるかを示す「5分未満」、「5分以上」、「10分以上」といった表示をします。サムターン回しなどに対しては「あり」か「なし」の表示です。この表示のしかたは日本ロック工業会が、各社で統一されたわかりやすい表示が必要であるとして申し合わせたうえで定めた形式です。
 当社で扱う製品は、試験の結果ほとんどが「10分以上」の防犯性能を持っています。サムターンに工夫を加えたりデッドボルト(かんぬき)に鎌をプラスしたりなど、より高い防犯性能を追求しています。今後この業界ではますます防犯性能が進歩していくと思われます。
「官民合同会議」は将来的に業界ごとに分化
 「指定建物錠防犯性能」は法律で明記されていますが、「官民合同会議」は明記されていないというのが大きな違いです。また、試験の合格基準も、前者のほうが後者より厳しいものもあればその逆もあります。「官民合同会議」は防犯性能の高いものを開発、普及させるため行政や団体が合同で研究し、試験を行ない認定しようという制度です。現在は錠前、シャッター、サッシなど業界の枠を越えて合同で試験していますが、将来的には合同でなくそれぞれの業界に委譲されていき、発展・解散されるのではないかというのがわれわれの予測です。そしてそれぞれの業界の中で試験や認定がされることになろうかと思います。

「ドア及びシャッターの防犯性能向上」
 東洋シヤッター(株) 技術部 部長 中島 隆桜 氏
資料はこちら(PDFデータ)
基準は「抵抗時間」5分以上
 まず、「官民合同会議」について私なりに簡単に説明します。これは官と民が協力し合って防犯性能の高い建物部品をつくっていこうという集まりで、平成14年11月25日に設置されました。以降、侵入手口別の対策の方向性を検討してスケジュールをたて、各種開口部品の防犯性能試験の実施について検討し、得られた成果を公表しました。こうして品目別に製品の防犯性能試験を行ない、性能が認められた製品を「防犯性能の高い建物部品」目録にして今年の4月に公表しました。
 
「官民合同会議」の構成
官:警察庁生活安全企画課、同庁捜査第一課、国土交通省住宅局住宅生産課、経済産業省住宅産業窯業建材課
民:板硝子協会、日本ウインドゥ・フィルム工業会、(社)日本サッシ協会、(社)日本シヤッター・ドア協会、日本ロック工業会
 
 「防犯性能の高い建物部品」とは、各製品に定められた試験で抵抗時間(侵入者がピッキングやこじ破りなどの行為を開始してから侵入するまでの時間)が5分以上あると確認されたものと定義されています。この「5分」は一定条件下での試験にもとづいたものであり、あくまで抵抗力の強さを判断する指標と考えて下さい。
 「防犯性能の高い建物部品」に定められている品目はドア、錠、サッシ、ガラス、シャッターなど15品目です。
侵入の手口を把握することが重要
 防犯対策では侵入盗の手口を知ることが最も大切です。侵入盗の69%は5分以内に侵入できない場合諦めます。戸建て住宅では46%がガラスを破って窓から侵入し、店舗では40%が客用の出入り口から侵入するというデータがあります。そのうち最も多いのがシャッター破りです。そこで、これらのデータを見たうえでシャッターについてはどのようなものが防犯性能が高いと言えるのかを述べます。「官民合同会議」の中で(社)日本シヤッター・ドア協会が取り組んだもので、高い防犯性能を持つと認定された重量シャッター、軽量シャッター、シャッター用スイッチボックスを簡単に説明します。
 例えばシャッターを構成するメインの部分、スラットの板厚は重量シャッターで1.6mm以上(ステンレスなら1.5)、軽量シャッターで0.8 mm以上です。
 ガイドレールや中柱などもそれぞれ数値が定められています。これらの数値以下のものでは5分以上持たない、すなわち防犯性能が期待できない、ということなのです。スイッチボックスでは、よくある片開きのタイプではどうしても隙間が生じ、ドライバーなどを差し込んで開けられてしまい、中のスイッチを操作して侵入されます。当社は片開きをやめて下方向へ扉を下げる開閉方法で隙間をなくし、工具で破壊しにくいという特徴を持つ製品を(社)日本シヤッター・ドア協会に提案し、「官民合同会議」の試験で合格しました(シャッター用スイッチボックスBタイプ)。
 また、当社はシャッターだけでなく、ドアについても防犯性能を高めたものを開発し、扱っています。

「ガラスの防犯性」
 藤原工業(株) 技術部 部長 伊原 明男 氏
資料はこちら(PDFデータ)
空き巣の侵入経路はガラス破りが多い
 当社は昭和2年創業のガラス加工会社で、現在は防犯ガラスにかなり力を入れています。
これまでのお話しでお分かりと思いますが、空き巣は約7割が5分以内に侵入します。そして侵入経路の約7割がガラスを破るものです。
 防犯ガラスと言われているものにもいろいろ種類があります。家庭でもっとも使われているフロートガラスは、ドライバーで簡単に穴が空いてしまい防犯性能は低い。網入りガラスは丈夫だと思われがちですが、実はフロートガラスより弱いのです。家庭では一般的ではありませんが、ビルの玄関ドアなどに使われている強化ガラスは確かに割れにくいですが、いったん割られてしまうとその部分はガラスが全部落ちてしまい、素通しになるので防犯の意味をなさなくなります。複層ガラスは2枚のガラスを並べた構成で、2枚が破られるまで、時間を稼げますが、防犯性を持っているとは言えません。2枚のガラスを合わせた、合わせガラスが一般市販のガラスの中では唯一、防犯性を持っています。
 業界でガラスの生産量を見ると、防犯ガラスは右肩上がりになっています。当社の場合は、防犯ガラス(合わせガラス)は2年前、8,000m2/月でしたが現在は1万8,000m2/月で、24時間操業でつくっても全然追いつかないくらいです。ただ、忙しいのはありがたいのですがハウスメーカー向けは価格が厳しく、苦しいところです。
ポリカを入れて防弾にまで対応
「官民合同会議」の認定を受けたガラスは当社では5品目あります。例えば、そのうちのひとつ「ロブガード30」はPVB(ポリビニルブチラール:ガラス同士をくっつける接着剤)30milが入っており、身近なものでは車のフロントガラスに使われています(mil=1000分の1インチ、30mil=約0.76mm)。30mil、60mil、90milと厚くなるにつれ性能は上がります。最新の「ロブガードX」はガラスとガラスの間にポリカ(ポリカーボネート)を入れています。また、「ロブガードX2」はガラスとポリカを合わせた構成になっています。これら最新のガラスは厚さや構成により防犯を超えて、防弾にまで進化させることができます。
 「官民合同会議」におけるガラスの防犯性能試験のようすを紹介します(ビデオより)。当社のポリカ入りガラスはこれまで日本になかったため一から試験を行ないました。バーナーを使う焼き破り試験は30秒炎をあて、水で熱衝撃を与えガラスを割り、5分以内に解錠されればアウト。ドライバーを使うこじ破り試験、打ち破り試験もあります。打ち破りは、指定の道具で7回打ちつけてガラスを貫通しなければ合格です。
 最後に、防犯の最高レベルとはどんなものか知っていただける事例です。44マグナムをガラスに向かって撃つ試験です。5発の弾丸を完全に止めてしまうほどの最高レベルの防弾性能を持ったガラスもあります。ガラスの防犯もここまで来ているのです。
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