日本は超高齢社会にまさに突入しようとしています。昨年の発表では、65歳以上の方が2,358万人いて、全人口の18.5%だということでした。介護保険で要介護・要支援に認定されているのは329万人(13.95%)になります。
介護保険はわれわれ建築業界にも影響をもたらしました。介護保険における政府のねらいは、寝たきりにせず、能力に応じて自立した生活を営めるようにすること、そして施策を施設介護から居宅介護を中心にするというものです。日本には寝たきりの高齢者が実にアメリカの5倍。これは、狭い、暑い、寒い、段差が多いという日本の住宅環境に一因があります。そこで介護保険から住宅改修費(20万円)が給付され、ほかに介護福祉用具の購入やレンタルの費用なども支給されています。
一方、厚生労働省では5、6年前からリフォームヘルパー制度を提唱しています。ただリフォームするのではなく、高齢者が自立して生活できる住空間をつくるため、医療、保健、福祉、建築の知識を持った専門家が対応し、相談しながら行なうというものです。
これまでのリフォームの商品コンセプトは、「美しく快適で夢がなければならない」というものでした。これからの商品開発コンセプトは高齢者に優しい、優れた施工性、介護の視点での機能性、さまざまな家に適した品揃え、後付けが容易なこと、などです。
今までの商品は、金具などができるだけ「見えないように隠す」ことに重点を置いていましたが、そういう金具では施工が困難などの問題がでてきました。年を重ねると体の機能が変化するので後で手を加えることを視野に入れなければなりません。
改修によって、高齢者だけでなく一緒に住む人にとっても安全で快適なものであるということが、これからのリフォームには必要になってきます。
今までの考え方では、手すりはとにかく強度が大事で直径45mmなどの太いものが中心でしたが、自立支援を考えると上下移動補助には直径28〜32mmが最も握りやすく、手を滑らせながらの移動補助には直径32〜36mmぐらいがベストです。手すりの高さを調整することも必要になってきます。
屋外の手すりはステンレスが主流でしたが、長野の豪雪地域で玄関に手すりをつけるサービスをしたところ、「冷たくて持てない」と不評でした。それ以降、屋外の手すりにも樹脂か木を使用するようになりました。
1日か2日という短期間で工事を完了せねばならないニーズに対して、アンカー止めをする、高さの調整がすぐにできる、現場で部品を拾い出して施工できるなどの商品が必要になります。
また脳血管障害やパーキンソン病の方のために、今は手すりの連続性が要求されています。
介護保険がスタートしたころは、みすぼらしい手すりがつけられていることがありました。現在3年目ですが、設置する前に商品を見せて欲しいという要求が非常に多くなりました。介護保険はタダではなく、積み立てて得る権利です。そうすると自分の家にあった手すりが欲しいという要求がでてきます。これからデザイン性も大切になると思います。
介護保険の住宅改修費に加え、大阪市では高齢者住宅改修費助成という枠があります。これを組み合わせると、改修可能な範囲が広がります。このような形で高齢者の生活を支えるための商品開発がますます必要になってくるでしょう。
今後マーケットにはいろいろな商品が出てくるでしょう。高齢者の自立支援のためにどんな機能をもりこんだ商品を作れるかがわれわれの仕事だと考えます。 |