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2019年10月29日(火)
第58回
「これから求められる建材とは」
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基調講演
「人生100年時代に求められる住宅用建材とは」
廣兼 加明氏 旭化成ホームズ㈱ 技術本部 商品企画部長
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■ロングライフ住宅を実現するために
ヘーベルハウスは“ロングライフ”を掲げて約20年になります。ヘーベルハウスが長年取り組んできた取り組みは、SDGs(Sustainable Development Goals)(※)が目指すものと合致する点が多くあります。長期優良住宅という言葉も今は普通に使われるようになりました。しかし本質的なことは、家を長持ちさせるためには必ず修繕費がかかり、それはきちんと積み立てておかねばならないということです。
20年前に私たちがカタログに載せたメンテナンスプログラムでは重要なことを2つうたいました。一つは、へーベルハウスは30年間外装メンテナンスが不要だということ。もう一つは30年目にかかる費用について、明記しました。当時の住宅メーカーとしては画期的でしたが、30年間外装のメンテナンスが不要など、本当か? と、他メーカーや、お客様にもよく言われていました。
「それを実現するために何をすればいいか」に開発の原点があり、そこにみんなベクトルを合わせました。防水やシーリング、吹き付けなど、外装に絡むものは、メーカー各社の協力でいろいろと考え、戦略として打ち立てるところまで持っていくことができました。
※SDGs:2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発の ための2030アジェンダ」にて記載された国際目標。
■持続可能な社会のための6つの取り組み
冒頭触れたSDGsについてですが、旭化成ホームズでは6つの活動に取り組んでいます。1.生物多様性保全、2.気候変動対応、3.廃棄物削減、4.地域とのコミュニケーション、5.働く人とともに成長、6.高品質な住宅でまちづくりを支える、というもので、ホームページにも記載しています。
生物多様性保全では、旭化成グループの大きな工場がある静岡県富士市に「あさひ・いのちの森」をつくり、生命の循環をモニタリングしています。
気候変動対応では、ARIOSというシミュレーションソフトを導入してZEHの普及に努めています。今ヘーベルハウスで建てていただいている住宅は約40%がZEHです。鉄骨住宅でZEH比率40%というのは、少し前から考えると驚くべきことです。
ARIOSは、お客様が設計した家の日照や通風をシミュレーションできるよう20年前に開発したソフトです。今ではエアコンのコストや性能に対し、「こうすれば部屋の温度を均一にできる」「こうすれば冬は暖かく夏は涼しくできる」といった提案もできるようになっています(図1)。
高品質の住宅でまちづくりを支えるという項目はこの先の話に関連していきます。「60年点検システム」は60年間ずっと点検を行うという宣言。またヘーベルハウスはずっと現場での外壁塗装にこだわっています。30年間外装を持たせるためにどうすべきか、メーカー各社と共に開発を続けてきた結果のこだわりの結果です。
■ロングライフを実現する4要素とヘーベルの性能
続いてロングライフ住宅に求められる要件についてまず躯体と断熱材ですが、ロングライフシェルターを実現するために、「鉄筋コンクリートの連続布基礎」「強靭な鉄の骨格」「ネオマフォーム(断熱材)」「ALCコンクリート『ヘーベル(ヘーベル板)』」という4つの要素があります(図2)。
「ヘーベル」ALCコンクリートについて紹介します。軽量で、1,000℃まで耐えられる耐火性があり、60年以上の耐久性で、強度も高い。コンクリートに比べて10倍の断熱性を持ち、遮音性、調湿性にも優れるという、非常に優秀な材料です(図3)。
私が支店長時代にお客様に最も訴求していたのは寸法安定性です。強度などは比較しやすいとはいえ、データや数字を並べてもピンとこないものです。家は外壁部分に隙間ができてしまうと一気に劣化が進みます。寸法が安定しているということは反ったり曲がったりしにくく、隙間ができにくいというわけです。
ALCは今でこそ一般建材ですが、ここに至るまでのヒストリーがあります。ヘーベル自体はドイツ語で、60年ほど前にドイツから技術輸入しましたが、もともとはスコットランド西端のマル島(トバモリー島)で発見された白い石です。この石にトバモライトという結晶があることが分かりました。マグマ中のケイ素と石灰岩のカルシウムが、高温高圧になった地下水と反応することによって形成される結晶です。このトバモライト結晶に着目して研究されることになったというのがALCのそもそもの話です 。
ドイツから技術輸入した60数年前、旭化成は化学メーカーとしてやっており、まだヘーベルハウスはありませんでした。旭化成はこのALCを日本の住宅に使えないかと考えました。日本の住宅を向上させようという強い信念が当時の社長にあったと聞いています。
ドイツでALCコンクリートはブロック積みの材料として使われますが、日本は地震があるのでブロックには使えません。そこで外壁用に幅60cm長さ2m80~90cmくらいで長尺板をつくれないかと考えました。強度が必要なので鉄筋を入れる必要もある、きれいなトバモライト結晶を形成できる方法で大量につくる必要もある……こうした試行錯誤10年の末に開発したのがヘーベル板です。
■性能とエコを兼ね備えた断熱材・ネオマフォーム
断熱材のネオマフォームは外壁の内側に貼られています。ネオマフォームという材料自体は一般建材として工務店で使われていますが、外装の内側に使うのは意外と難しいのです。壁の中に配管などのスペースを確保するといったディテールがヘーベルハウスの特徴です。ALCコンクリートにも断熱性能を持たせているので二重の断熱、つまりダブルシェルターです。
ヘーベルハウスの現場を見ると分かりますが、床や天井にある白い部材がALCで、その内側に断熱材のネオマフォームが貼られています。このネオマフォームとボード内側の間に隙間を設けてそこに配管を設置していくので、住宅として断熱の欠損がないような収まりの技術が必要となります。
ロングライフの観点から、性能の劣化が少ない断熱材が求められます。性能比較のグラフでの最も下の線がネオマフォームの性能データです。断熱材に求められる熱伝導率の低さが時間を経ても変わらないことが分かります。従来品は環境によって断熱性能が落ちていくものでした。性能がよい上にオゾン層も破壊しないネオマフォームは、その壁を越えた断熱材だと言えます。
■時代を先取りしていた「くらしノベーション研究所」
当社では「くらしノベーション研究所」を設立し、「二世帯住宅研究所」「住まいの防犯研究」「共働き家族研究所」「シニアの住まい方研究」「ペットと暮らしの研究」「環境と住まい方研究」というカテゴリで40数年前から暮らしを研究しています。
今では当たり前の共働きも、当時は普及していませんでした。そんな時からいろいろな変化を研究していたわけです。現在は共働き家族にヘーベルハウスを建てていただくことが非常に多くなっていますが、これも研究の成果だと思っています。ペットとの共生も今でこそよく言われますが、当社ではずっと以前から研究を始めていました。
こうした研究の背景には、付加価値の考え方がありました。ヘーベルハウスは高価格からスタートしたので、相応の付加価値が必要だという発想です。今となっては早いうちに研究していてよかったと思います。
■業界初の二世帯住宅を45年前に発売
45年前の1975(昭和50)年、業界で初めて二世帯住宅を発売しました。二世帯住宅という言葉も初めて世に出しました。「ALCコンクリート住宅 旭化成ヘーベルハウス二世帯シリーズ」という新企画でした。当時は同居による嫁姑問題で、お嫁さんがつらい立場を余儀なくされても、「嫁は耐えるものだ」というイメージでした。そこで、上と下で子世帯と親世帯を分け、玄関も分けましょうという全く新しい提案をしました。当時はチャレンジでしたが、以降、二世帯住宅は広く普及するようになりました。
実は、当時旭化成がヘーベルハウスとして二世帯住宅を提案した理由は、シンプルな経済面だけでした。土地を購入して高いヘーベルハウスを建てるのは多くの人にとって難しい。ならば親の持っている土地を使って若い方々と資金を半分ずつ出し合って建て替えるということなら可能ではないかと考えたのです。今はまたトレンドが変化して、二世帯住宅より近距離に住むことを選ぶケースも増えているようです。現代の社会背景に照らして「2.5世帯住宅」も出しました。平均結婚年齢が上がって、親世帯側に単身者がいることも多くなってきたからです。
ヘーベルハウスの遮音性の高さも二世帯住宅にうってつけでした。上下に住み分けるとなると、自ずと床や壁の遮音性能が必要になります(図4)。床や壁にALCコンクリートを使ってみようと発想をした当時は、二世帯住宅のような家を提案するつもりではありませんでした。今は何をやるにしてもビジョンが必要だし、行き当たりばったりではどこでこけてしまうか分かりません。
50年前はこれほど家が余ることは想像できなかったし、シェアする、売る、貸すという発想で家づくりをしていませんでした。しかし長年の材料開発が功を奏して、湿気に強く腐らない床ができたことから、サスティナブルな住宅が結果的に実現できています(図5)。
■デザイン性も重視した「比類なき壁」
そもそもALCにデザイン性はなく、工場などで使われる材料として性能のみが重視されてきました。現在、「比類なき壁」と銘打ったヘーベルハウスのCMを2年間続けています。性能のみならずマテリアルデザインに注力しているというメッセージです(図6)。
割り石調のデザイン。これは彫った後に工場で割っています。型で焼く方法はトバモライト結晶をつくる上で非常に難しかったので、きれいにつくったものを削ってから割ったり叩いたりする技術を工場ラインで実現させました。実際に一枚一枚工場ラインで割っているので、全部微妙に違っており、自然な風合いを出せます。20年前からやってきたことですが、それにプラスしてさまざまな色を掛け合わせる「彫×塗」というキャッチフレーズでデザインを強調し、「比類なき壁」としてプロモーションしています(図7)。同じ材料でも諦めずに「もっと何かできないか」と20年ずっと戦い続けています。
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長寿命化改修 屋上防水の基礎知識
戸塚 義治氏 田島ルーフィング(株) 防水営業部 大阪支店課長
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■建物改修は、竣工時の性能を上回る必要があるに
建築構造物の改修は、2005年頃までは、竣工後年月を経て劣化したものを、改修によって新築のときの性能に戻し、それを繰り返すというのが基本的な考え方でした。しかし現在の長寿命化改修では、初期の性能値を上回ることが基本です。そして次に改修を実施する時点で、竣工時と同等の性能が維持されている状態が求められます。
竣工時の性能より上ということは、もちろん防水だけの話ではなく、コンクリートや鉄骨などさまざまなものの性能を良くしなければなりません。
まず防水の保証についてご紹介します。新築の住宅を購入すると必ず防水保証書があります。適切な防水の材料や仕様を選定する設計者、防水下地となる躯体を施工する元請建設会社(ゼネコン)、防水施工を行う防水工事会社、防水材の品質や数量管理を行う防水材料製造会社・販売会社の4社が合わせて保証書の発行を行っています。
防水にはさまざまな材料があり、それぞれを手がける会社があり、各社いろいろな組み合わせ、材料の仕様があるので、指標が必要になります。一般的に、国交省の標準仕様書と日本建築学会の「JASS8」という防水工事についての指標に準じたものが安心できる材料と考えられており、防水保証の対象にもなっています。今は民間の技術も取り入れ、審査によって国交省の仕様と同等の性能があるというお墨付きを出す制度もあります。なお、駐車場の露出防水や地下防水は一般的には対象外とされています。
■長寿命化改修では何を実施するべきか
文教施設の長寿命化改修で必ず実施する工事は、躯体の劣化に対する補修および水道や電気等のライフラインの更新です(文科省より)。防水なのになぜそんな話を?となるところですが、例えば災害時に必要になる避難所。多くは体育館などに地域住民が多数集まるため、ライフラインの整備が必要であり、適切な温度などの環境が保たれる必要があるので、そこまで考慮して長寿命化改修を行います。
原則的に実施する工事として「耐久性に優れた材料等への取り替え」「維持管理や設備更新の容易性の確保」「断熱等の省エネルギー対策」があげられています。
まず耐久性について。通常、防水は10年保証と言われており、どのメーカーもだいたい10~15年の耐久性を一つのめどとして設計しています。さらに30年や40年と、さらなる耐久性を実現する研究開発が行われています。
防水層の物理的耐用年数について記載された表を見ると、10~13年、13~15年とありますが、これよりも長い耐久性を持つものが初めて高耐久と見なされます。この数字は、旧建設省営繕局の下で実際に調べられたものです(図1)。「シート防水」にはゴムシートと塩ビシートの2種類があり、アスファルト防水にもシールのように紙やフィルムを剥がして付ける「アスファルトシート防水」と呼ばれるものがあるので少し混同しやすいのですが、ここでのシート防水は塩ビシートとゴムシートのことです。
ウレタン塗膜防水以外は全て13~15年。そして塗膜防水<シート防水<アスファルト防水の順で耐久性が高くなっています。シート防水は1枚で工事しますが、アスファルト防水は3~4枚を重ねて耐久性を確保するので、40~80年という耐用年数を想定している仕様もあります。
耐久性に優れたものとして弊社APEX仕様を紹介します。断熱押えコンクリート仕上げ「80RF」が80年、「60RF」が60年の耐久性を持っています。コンクリートがないタイプでは45年および35年の耐久性を確保。開発当時は、建物の減価償却が60年と言われる中でここまで必要なのかなと私たちも思っていたのですが、長寿命化改修で初期性能値を上回る必要が出てきたので、こうした商品も需要が出てきました。押えコンクリートの場合、紫外線の影響がないので非常に長持ちします。
■防水層の断熱について
続いて断熱について、4つの仕様を比較しました(図2)。コンクリートの上にそのままアスファルトの露出防水(A)、Aの上に高反射塗料を塗ったもの(B)、断熱材を入れてアスファルト露出防水(C)、 Cの上に高反射塗料を塗ったもの(D)。この4仕様で防水表面温度を計測した結果、A:53.3℃、B:39.4℃、C:81.1℃、D:52.5でした(図3)。
どれがいいかとなると、断熱材入りで高反射塗料を塗ったDの施工が一番と思います。高反射塗料を施すと防水層の劣化進行が抑えられます。特に紫外線劣化は大きいものです。防水層表面温度は約1.6倍になります。80℃の劣化速度は50℃の劣化速度の10倍にもなり、建物としても非常にしんどくなります。
弊社では遮熱塗料として、アスファルト防水向けに「SPファインカラー」、塩ビシート防水向けに「VTコートC」、ウレタン塗膜防水向けに「OTコートクール」を提案しています。
■60m級の強風を基準風速とした「Z工法」
維持管理や設備更新の容易性の確保に関しては、次回改修性・メンテナンス性がポイントです。2018年大阪に来た台風21号は非常に強い台風(最大瞬間風速58.1m/s)で、直前に地震もあったので、複合災害と言えました。こうした災害を想定し、必ず維持管理しやすく、耐用年数を全うできる工法を選んでいただきたいと思います。
弊社には「Z工法」という強風対応仕様があります。通常、関西近辺の強風は32~34m/s程度ですが、基準風速を60m/sにして再計算し、対応できるようにしました。風速60m/sは、富士山山頂で吹く強風です。そして外周部からの吹込みをシャットアウトする構成、接着と金物・アンカーを含めた確実な固定力を特長としています。
弊社は従来シングル工法という工法を提案しており、32~34m/sの強風ならこれで本来飛ばないはずでした。しかし60m/sレベルという昨今の異常な気象の中で実際飛んでしまったわけで、現在はZ工法を提案しています。
強風対応として免振工法もあります。塩ビシート防水では風圧によるフラッタリング(バタつき)で劣化し、破断が生じる場合があります。そこで免振ディスクを設置し、ディスク自体が動くことで風の力を逃がす工法を開発、長寿命化対策として提案しています(図4)。免振工法は国交省の建設技術審査でその性能が証明されています。これが冒頭に話した「国交省が民間の技術を取り入れた」一例です。
■文教施設に求められる防災機能
文科省による「災害に強い学校施設の在り方について」という方針に基づき、体育館などが避難所となる学校施設では、特別な防災機能が求められます。温度や通風などの室内環境やプライバシーといった観点もありますが、ここでは防水や断熱が中心です。
ヘリコプターの動態管理システムもあげていますが、これは災害対策用ヘリサインです。学校や病院の屋上に色を付けた番号を振るもので、東日本大震災後、活発な動きが出てきました。それまでは塗料で施工することが多かったのですが、防水層の上に塗ることで防水層への悪影響が懸念されるようになりました。そこでフィルム状のヘリサイン「フレクターフィルム」を提案しました。1字がだいたい4m×4mの大きさで、塗料で施工すると非常に手間がかかりますが、フィルムなら貼るだけです(図5)。
PRのためにQRコードを貼る企業もあります。再帰性反射機能を付加すると、夜間でもヘリコプターからのライトに高い輝度で反射します。こちらは日没後30分くらいの時刻ですが、かなりはっきり見えています(図6)。金属の屋根にも同じようにフレクターフィルムを貼り付けることができます。アスファルト、塩ビシート、ウレタン塗膜防水、いずれの防水層でも使用できます。
■金属屋根改修と断熱効果について
断熱+塩ビシート防水+高反射塗料で、駅舎などの金属屋根断熱改修が可能になります。もちろん体育館でも同様です。高反射塗料を塗布することで防水層の熱劣化を抑制し、屋内への熱の流入が抑制できるというわけです。瓦棒の間に断熱性を敷き込み、防水層を施工して高反射塗料を塗装します。こうすることで屋根の下の環境、つまり体育館内や工場内が大変快適になります。
断熱効果は、屋根裏温度検証実験により証明されています。もちろん構造や屋根材などでいろいろと条件は変わってきますが、屋根裏の温度が約15℃低減されるというデータが得られています。国立教育政策研究所の文教施設研究センターが学校施設のエコ改修推進のために作成したエコ改修メニューの一覧(対象箇所、内容、工法など)があるので、詳しくは資料をご覧ください。(https://www.nier.go.jp/shisetsu/pdf/modelplan.pdf)
また参考資料として、室内の温熱環境の改善に関するデータも添付しました。ここでは、屋根の断熱・遮熱性能の向上と自然換気による効果で、夏期の場合改修前より最大で約3℃低くなるとしています。実際には換気もかなり重要なのですが、そこまで入れると非常に難しくなります。 マンションの最上階辺りに住んでいる方が、あまりに暑いので断熱材を施す工事をしても、あまり顕著な違いは感じづらいものです。なぜなら実際には湿気を減らしたり通風をよくしたりすることによって感じられる快適性も大きいからです。とはいえ断熱材の施工で住環境を維持しやすくなることは間違いないでしょう。
先ほどから高日射反射率塗料(高反射塗料)についてよく触れていますが、まずお伝えしておきたいのは、これは断熱ではないということです。一部の方々は十数年前からこれをよく「断熱塗料」だとして話をしていました。もし断熱なら、室内側から熱は逃げていきません。高反射塗料はあくまでも遮熱塗料なので、上からの紫外線や赤外線といった光線を反射することによって熱の上昇を抑えることはできます。しかし室内側の建物の下の部分からの熱は逃してしまうので、断熱とは少し違うわけです。この違いの把握が必要と申し上げます。
以上、現在普及しつつある長寿命化改修に対して必要となる屋上防水のお話をさせていただきました。これは国の施策や方針にのっとって行っているものですが、皆さまの住まいや地域コミュニティの部分でもきっと役に立つ話だと考えております。
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繊維床材(カーペット)で快適なフロアライフのご提案
板東 敦史氏 アスワン㈱ 商品統括部 第二商品部長
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■舞い上がるほこりはフローリングの1/10!
表題のテーマで、健康と安心・安全性に優れ、多彩な快適性能を持ち、環境にやさしいという特長を備えた素晴らしいカーペットについてお話しいたします。
現在では一般的な住宅の床材といえばフローリングではないでしょうか。そのためカーペットの意匠性やコストについて間違った知識をお持ちの方も多いと思います。
○健康と安心・安全性
日頃こまめに掃除をしていても、少し時間が経つと部屋の隅にはほこりがたまっています。カーペットはフローリングよりほこりが多いイメージがありますが、両者のほこりの舞い上がり量を比較したデータをご覧ください。
ハウスダストが舞い上がって3分後の微粒子のm2当たりの個数を調べた調査です。ここから分かったのは、カーペットのハウスダストの舞い上がり量が、フローリングに比べてわずか1/10であることです(図1)。
実際にハウスダストが舞い上がる様子は微粒子可視化システムを通して見た動画をご覧ください。日常生活でハウスダスト発生は避けられないので、カーペットを敷くとフローリングより吸い込む量が少なくなりますよ、と私たちはお伝えしています。
また高齢化社会の現代、家庭内での転倒事故は死亡原因の約1割を占めています。従って安全面を考える上で滑りにくさはとても大事です。各種床材(カーペット、塩ビタイル、磁器タイル、フローリング)の「すべり指数」を比較すると、カーペットの数値が最も低く、滑りにくいという結果が出ました。
乾燥した状態、濡れた状態(何かをこぼしたときを想定)のいずれでも低く、他の素材では濡れた時の指数がはね上がるのにもかかわらず、カーペットはいずれもあまり変わらず低いすべり指数でした。
転倒時の衝撃力も低いので万一転倒しても安心です。各種床材の転倒時の衝撃力を比較した調査では、畳に次いで「カーペット+アンダーフェルト(下地材)」「カーペットのみ」「タイルカーペット」の衝撃力は低いものでした。他、低い順にクッションフロア、塩ビタイル、フローリング、コンクリートでした。
更に、防炎認定やホルムアルデヒド対策品認定もあるので、身を守るという点でもカーペットはおすすめできます。 特にカーペットはダニの原因であると誤解されがちですが、カーペットは無実です。20数年前、マスコミで「ダニはカーペットにいる」と報道されたことがあり、カーペットが叩かれた形になりました。その時期を一つの境としてカーペットの需要が減少しました。
そもそも製造時のカーペットにダニはいません。日常生活においてダニは決してゼロになりませんし、布団などの中に常に存在しています。室内のダニはほこりとともにハウスダストとして舞い上がりますので、カーペットを敷いているほうがむしろ舞う量を少なくできます(図2)。
○快適性
熱伝導率が小さく、熱容量が高いカーペットは、「接触温熱感」に優れているので素足でも暖かく感じられます。ウールカーペットとフローリングに手を置いたとき(5秒間置いて離す)の温度を比較したサーモグラフィーではその違いがはっきりと分かりました。要するに熱をためてホールドしてくれるわけです。
マンションなど集合住宅で音の問題は常に起こりますが、カーペットは音を吸収するので騒音が出にくいというメリットがあります。これも5種類の床材を比較したデータがあります。「カーペット+アンダーフェルト」と「カーペット」のみが最も騒音レベル(dB値)が低くなりました(図3)。
またクッションのように衝撃を吸収する特性から、歩行時の疲労が少なくなるため、家事などで動き回っても足腰の疲れを軽減してくれます。
○省エネ
寒くなると頭が痛いのが暖房費。室内の熱は開口部と床で約6割流出してしまいます。フローリングで床暖房もいいのですが、弊社ではカーテンとカーペットで窓・床をガードして暖房費を節約することを提案しています。
■花粉、ハウスダスト、ニオイを分解するカーペット
弊社の「ハイドロ銀チタン®」カーペットは、機能性に優れた、超衛生的な業界初の商品です。医師の発想から生まれたクリーン技術で、花粉やハウスダスト、ニオイなどのタンパク質を分解する、人の肌にも優しく安心・安全で衛生的な機能を持つカーペットです(図4)。
続いて「びっくりするほど汚れが落ちる」カーペット。私は商品部に在籍していますが、二十数年営業を担当していたのでユーザーや施主と接する機会が多くありました。カーペットを買わない人が「買わない理由」ははっきりしています。一つは「フローリングのほうがきれいだから」、もう一つは「汚れが落ちなくてみっともないから」。
この商品に使用しているPTT繊維は、防汚性・弾性回復力・耐久性に優れたソフト感のあるバイオ技術繊維です。液体をこぼしても汚れが中にとどまらないようになっているのです。動画からもお分かりのように、コーヒー、赤ワイン、しょうゆなどをこぼしても、本当にびっくりするほどきれいに汚れが落ちています。
■ダニ、虫、カビ、まとめて解消するマルチ機能
「ムシカビクリーン」カーペットは防虫・防ダニ・防カビ・抗菌のマルチ機能を有する商品。施主の方々はダニやカビを本当に気にされています。店頭に買い求めに来た人がする質問も、ほぼそれに関することです。今、防ダニカーペットは各社からあふれかえるほど発売されており、どこへ行ってもいくらでも並んでいます。
そんな中で弊社が提案しているのは、防ダニだけではなく防虫・防カビ・抗菌も備えたマルチ機能のカーペット。生活の中で一番気になる部分を解消できるようになっています。
「ムシカビクリーン」カーペットの本質は、敷くと家から虫やダニが一切いなくなるわけではありません。何も敷かない床材だけの状態やマルチ機能を持たないカーペットを敷くよりはずっと安心安全快適であるということです。
■日本ならではの、素足や肌に心地よいカーペット
ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン、アクリルなど、カーペットにもいろいろな素材があります。もともとカーペットは土足用であって、われわれ日本人が土足で使わないだけです。土足を前提とする海外仕様から生まれたカーペットは、一般的に強くて硬さもあるウールが使われます。
日本人もそのようなカーペットを何十年と使ってきたわけですが、土足文化でない私たちにとって「ウールはよいが、何かちくちくする」ものでした。そこで、レギュラーウールではなく、セーターやスーツに使われる「メリノウール&ファーストラム」カーペットを新しく開発しました。
羊の種類は非常に多く、3,000種くらいあるのですが、その中でも最も白く細い毛を使ったのがメリノウールです。ファーストラムは生後1年以内の子羊から最初に刈り取ったウール。それらをブレンドしてカーペットをつくりました。
私たちは、リビングにソファがあっても、床に座ったり寝転がったりするほうがやはり落ち着くわけです。そうなると、肌に触れるカーペットはふんわり柔らかいものが好まれます。
■フローリングのようでいて柔らかい新感覚繊維床材
本日最後に紹介したいのが「ロボフロアー」カーペットです。皆さんのお手元にもサンプルを配布しました。繊維床材が持つデザイン性と安全性に加え、さらにセラミックなど硬質床材が持つ耐久性とメンテナンス性も兼ね備えた“第三の床材”です(図5)。
わずか1cm角の中に7,000本のナイロンを植毛しています。つまり1㎡に7,000万本のナイロンの糸が立った状態で生えている。したがって、物をこぼして汚れても上の部分で止まってくれます。基布にはグラスファイバーと防水性P.V.Cを使用しているので下地にも浸み通ることがありません。
7,000本/㎠の「点」で足を支えているというイメージは、ベッドでいうところのポケットコイルでしょうか。昔のベッドは体が沈んで腰に負担がかかりましたが、ポケットコイルは点で体を支えるので腰が楽になります。ロボフロアーも同じで、点で足を支えるので、非常に薄いですが足がとても楽なのです。
ロボフロアーは医療・福祉施設をはじめさまざまな施設やスペースで使われています。一般の住宅リフォームで、フローリングの上に敷いて使う方も多くおられます。関西での一例をあげると、医療施設では大阪中央病院、教育施設では大阪音楽大学、商業施設では阪急オアシスなど。年間1,800万人以上が利用する関西国際空港のボーディングブリッジにも使われています(図6)。
最近特に注目されているのがペットと共に暮らすライフスタイルです。のりを使わずフローリングの上にロボフロアーを貼ることができます。床面は吸着、カーペット側は粘着タイプになっている専用吸着テープを使用することで、大掛かりな工事をせずにペットのためのプチリフォームが可能となります。ペットが快適・安全に暮らせるカーペットとして、多数の問い合わせをいただいています。
日頃カーペットの話を聞くことはあまりないかもしれませんが、こうしてお時間を頂戴できたのでいろいろとご紹介させていただきました。カーペットはあらゆるシーンに快適な空間をつくり出します。ぜひお施主様への採用をお願いしたく思います。
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