2007けんざい
社団法人日本建築材料協会
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建材情報交流会ニュース

 第41回
「建築物の安全性」

*機関誌「けんざい」掲載分です。ホームページ用に再編集しておりませんのでご了承ください
  
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「耐震改修促進法改正の概要と建築物の安全性確保に向けた取組み」
国土交通省 近畿地方整備局 建政部 建築安全課 課長補佐 久保 健治 氏

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■将来的にはM9クラスの地震が予想されている
 近年の地震発生状況をご覧ください。気象庁のホームページから引用していますが、左が199(6 平成8)年から200(5 平成17)年までの10年間、右が200(6 平成18)年から昨年の4月までの発生状況です。このように、地図にプロットすると日本各地で地震が発生しているということと、震源の深さが浅い地震が多数発生していることが見てとれます。(図1)
 「文部科学省地震調査研究推進本部のホームページ」によりますと、将来的にも日本各地で地震の発生が予想されています。特に南海トラフ巨大地震ではマグニチュード9クラスの地震が予想されており、30年以内の発生確率は60%〜70%といわれています。

■幾度もの改正が重ねられてきた建築基準法
 建築基準法は1950(昭和25)年に制定され、地震被害を受けるたびに改正を重ねてきました。(図2)
 1978(昭和53)年の宮城県沖地震を契機に2次設計の導入や、木造建築物の必要壁量の基準強化などを柱にした新耐震基準を1981(昭和56)年に導入しています。1995(平成7)年の阪神淡路大震災では、新耐震基準以前の建築物を中心に倒壊・崩壊の被害が多数発生しました。この年、耐震性能の低い建築物の耐震改修を促すために、多数の者が利用する建築物への指導・助言や指示を行うことや耐震改修計画の 認定制度を盛り込んだ耐震改修促進法が制定されました。
 2006(平成18)年には耐震化率の目標を導入、指示に従わなかった場合にその旨を公表するなどの改正が行われています。その間に構造計算書の偽装問題が発生し、構造計算適合判定制度の導入、構造計算基準の明確化など、建築確認や検査の厳格化も行われました。

■許容応力度計算と保有水平耐力計算
 一般的な建築物に関し、地震により建築物に働く水平方向の力と変形の関係をモデル化した図を示します。(図3)
 弾性域では加わる力に比例して変形が大きくなります。地震力が除かれると各構造部材は元の状態に戻るので、建築物は無被害で損傷は生じません。許容応力 度計算では、震度5程度の中規模地震で建築物の各部 分に生じる力が、弾性域の限界値である許容応力度を 超えないことを確認しているものです。
 また、弾性域の範囲を超えると、わずかな力の増加 でも大きな変形が生じます。この領域を塑性域と呼び、 塑性域に達すると地震力が除かれても、完全に元の状 態には戻らず、各構造部材には変形や損傷が残ります。
 一般的に建築物は多くの構造部材で構成されており、 一部の部材が塑性域に達してもすぐに崩壊はせず、少 しずつ様々な構造部材が損傷を受けることにより地震 のエネルギーを吸収し、それに耐えることができます。 損傷を受けながらも耐えられる限界を計算し、その限 界が震度6強から7程度の大規模地震動で建築物に生じ る力を超えることを確認するのが保有水平耐力計算や 限界耐力計算と呼ばれる設計手法です。
 阪神淡路大震災では、死亡者の約9割が家屋や家具倒壊による圧死でした。建築物の被害は、198(1 昭和56)年以前、すなわち新耐震基準以前の旧耐震の建築物に集中していました。「軽微・無被害」の割合が旧耐震以前のものでは34%、新耐震基準を用いたものは75%でした。旧基準と新基準、両者の間で約40ポイント以上の改善がみられたので、198(1 昭和56)年の基準法改正は建築物の安全性確保にかなり奏功したといえます。

■耐震改修促進法改正の背景と概要
 耐震改修促進法は199(5 平成7)年に施行され、都道府県あるいは市町村において策定された耐震改修促進計画に基づき、建築物の耐震化を推進してきました。2005(平成17)年、中央防災会議で「地震防災戦略」が策定され、住宅および多数の者が利用する建築物の耐震化目標を、201(5 平成27)年までに90%にすると設定しました。200(5 平成17年)時点ではおよそ75%だったので、10年間で約15ポイントアップする目標設定でした。
 ところが2008(平成20)年時点で住宅が約79%、多数の者が利用する建築物については80%の耐震化率にとどまり、達成すべき数字に対して約2ポイント下回っていました。さらなるてこ入れの必要性を感じていたところに、2011(平成23)年3月の東日本大震災が発生し、建築物に甚大な被害が生じたため事前の備えとして建築物の耐震化を着実に進め、人的・経済的被害を可能な限り軽減する必要性が再認識されたところです。また近い将来発生が予想されている南海トラフ巨大地震による被害想定が公表され、東日本大震災を上回る被害が発生することも確実視されています。以上のことより耐震化促進のための規制強化、円滑な促進のための措置および支援措置の拡充により耐震化を促進することが喫緊の課題と言えます。
 改正点の概要の1点目として、指導・助言の対象を拡充しました。住宅や小規模建築物を加え、全ての既
存耐震不適格建築物が対象となっています。
 また2点目として指示・公表の対象に都道府県または市町村が指定する避難路沿道建築物も加えています。3点目として耐震診断の義務付け及びその結果を公表することが新たに設けられました。(図4)
 また、円滑な促進のための措置として建ぺい率・容積率の特例措置の創設、区分所有建築物の大規模改修を行う場合の決議要件の緩和ならびに耐震性に係る表示制度の創設を行いました。

■住宅・建築物の耐震改修への支援制度
 住宅や建築物の耐震改修にかかる支援策は、住宅建築物安全ストック形成事業として、民間の建築物の場合、耐震診断は国と地方公共団体が1/3ずつ合計2/3の交付率で支援してきました。耐震改修や建替えなどは、建物の種類によって国と地方公共団体で合計で2/3、または23%の交付率で支援してきました。今回、耐震対策緊急促進事業を創設し、民間の義務付け対象建築物に対しては、国による補助が耐震診断で1/2、耐震改修で2/5または1/3まで助成可能になり、重点的緊急的に支援することとしました。
診断が義務づけられる地方公共団体の建築物に対する補助率の拡充も201(3 平成25)年度補正予算で行われています。また、201(4 平成26)年度当初予算でも耐震診断・耐震改修等に係る支援措置の充実と、天井ならびにエレベーターの改修に対する支援の推進および超高層建築物の長周期地震動を踏まえた改修に対する支援の創設を行っていきます。
 その他、法人税、所得税、固定資産税を対象とした税法上の特例措置も講じられます。

■いろいろな耐震改修工法について
 事例として多い耐震改修が耐震補強です。これは壁の補強として鉄骨のブレースやRC造の耐震壁を新設
する工法です。その他、柱単体の補強工事として鉄板巻き補強や連続繊維巻き補強の他、建物の外側にフ
レームを取り付ける外付けフレーム工法等があります。
 制震ダンパーなどの制震装置によって建物に伝わる地震力を軽減する補強方法が制震補強です。新設する鉄骨ブレースに制震ダンパーを組み込んだり、外付けフレーム工法のブレースに制震ダンパーを組み込んだりと、複数の工法を組み合わせた改修工事も行われています。免震補強はアイソレータという免震装置を建物の下や中間階の柱の途中に設置して地盤から伝わる地震力を軽減する方法です。この中之島中央公会堂もこの工法によって補強されている建物です。
 耐震診断の費用について、一般的な例を紹介します。延べ面積が3,000u未満の建築物では1uあたり約3,250円、また3,000u〜5,000uの場合は1,450円程度、5,000u以上で1,100円程です。規模が大きくなるほど単価は安くなりますが、最小値〜最高値までの幅が非常に広いので、あくまで目安ととらえてください。

■天井脱落対策にかかる基準整備について
 天井脱落に関してはこれまで大規模空間を持つ建築物の天井の崩落対策を進めてきたところですが、201(1 平成23)年の東日本大震災とその余震で体育館・大規模ホールなど多数の建築物で天井が脱落し、大きな被害が発生しました。このことに鑑みて同年、建築基準政令促進事業により、国土技術政策総合研究所に設置した建築構造基準委員会の技術制的検討に基づき、201(2 平成24)年7月、建築物における天井脱落対策試案がとりまとめられ、関連告示が制定・改正され本年4月1日に施行されます。
 脱落によって重大な被害を生じるおそれがある天井を、「特定天井」と定義しています。構造上安全な天井の構造方法として、一定の仕様に適合するものを「仕様ルート」、計算で構造耐力上の安全性を検証するものを「計算ルート」並びに国土交通大臣の認定を受けたものを「大臣認定ルート」と称し、要件を定めています。(図5)

■吊り材、斜め部材など、仕様ルートの部分モデル図
 特定天井の構造方法の一例として、仕様ルートにおける技術基準の概要を紹介します。一般的な吊り天井は1uあたり20kg程度までのものが多く、単位面積質量が大きくなるほど脱落時の危険性が増大することから、仕様ルートで設計できる範囲はこれを上限とします。20kg/uを超える天井は計算ルートまたは大臣認定ルートを用いて構造耐力上の安全性を検証することにより設置が可能です。天井材の緊結は、天井下地材や斜め部材として用いられる薄板の鋼材は、溶接で十分な耐力を確保することは難しいため、現場溶接による接合を禁じています。
また吊り材はJIS A6517。201(0 平成22)年に定める吊りボルトの規格に適合するもの、またはこれと同等以上の強度を有するものとしなければなりません。吊り材および斜め部材の取り付けに、後施工アンカーを使用する場合は金属系アンカーに限定しています。これも吊り材全体の3割以下の範囲で1カ所に集中しないように使用することを原則としています。やむを得ずこれに依りがたい場合は打音検査等のほか、その1割以上について引張試験を行うなど施工管理の徹底を図る必要があります。
 吊り長さは3m以下とし、おおむね均一とします。斜め部材の配置は、2段ブレースは吊りボルトに圧縮力などの複雑な応力が作用するため、原則採用できません。天井面構成部材と壁との間には6cm以上のクリアランスを設け、天井面構成部材がクリアランスを介して隣接している場合には、そのクリアランスは12cm以上とする必要があります。(図6)
 天井基準関係は、一般社団法人建築性能基準推進協会のHPで各種データが公開されています。

■昇降機の地震に対する脱落対策について 東日本大震災でエレベーターの釣合おもりの脱落や レールの 変形が多数発生しました。これを受け、地震 その他の震動に対する釣合おもりの脱落防止ならびに 主要な支持部分の構造上の安全性に関する政令などが 改正され、本年4月1日に施行されます。従前のエレ ベーターの地震対策はかご・釣合おもり枠の脱レール 防止、主索の外れ防止、駆動装置・制動装置の転倒防 止などについて規定されてきましたが、釣合おもりの 脱落防止・主要な部分の構造上の安全性に関する規定 がありませんでした。そこで今回、釣合おもりの脱落 防止および主要な支持部分の地震に対する構造計算の 基準を規定しました。ほかに昇降路・制御装置および 安全装置について、安全上支障のない構造方法を定め る告示も併せて公布されています。
 住宅建築物安全ストック形成事業の拡充では、補助対 象の追加拡充するとともに、本年4月の消費税率引き上げ に伴う補助対象限度額等を引き上げるなど、エレベーターの防災対策改修に対する支援も追加し、利用者の安全確保と住宅・建築物の耐震化を引き続き推進します。(図7)

■エスカレーターの脱落防止措置に関する技術について
 エスカレーターの脱落対策も改正政令、告示ともに本年4月1日に施行されます。エスカレーターの構造方
法には「仕様ルート」と「特殊検証ルート」があります。仕様ルートには端部に十分な「かかり代」を確保する「対策1」と、かかり代によらない脱落防止装置(バックアップ措置)を講じる「対策2」があります。対策1のかかり代は中規模地震時の層間変形角の5倍の層間変位+20mm以上を原則としています。建築物の変位を構造計算によって確かめた場合は1/100を下限に緩和できますが、層間変位によりトラスが圧縮を受けないようすき間を設ける、非固定部は層間変位に対して支障なく追従できること、固定部は地震に対して破断が生じないようにする必要があります。
 対策2は昇降高さ×1/100+20mm以上のかかり代を設けた上で、かかり代によらないバックアップ措置を講じるものです。バックアップ措置の具体例として、下階の床から支持柱を設ける、鋼材・ワイヤロープなどで支える、上階の梁からワイヤロープで吊るなどの措置が考えられます。バックアップ措置は原則エスカレーターを落下させずに支持して、層間変位に追従するものとし、すき間、非固定部・固定部の強度は対策1と同様にする必要があります。エスカレーターが床、地盤上に自立する構造の場合など、エスカレーターが脱落するおそれがないことが明らかな場合には、技術基準の適用範囲外ということになります。
 今回ご説明しました耐震改修促進法については、パンフレットも作成していますのでぜひご覧ください。

 


「建築基準法改正に伴う天井耐震について」 株式会社オクジュー 開発営業室 室長 岡 昌史 氏
              開発営業グループ技術室 室長 湯池 智聖 氏

 


日々内容が変化しておりますので講演録は控えさせていただきます。
技術的なことは直接オクジュー様(TEL (06)6312-4131(代))へお問い合わせください。
 


「天井材料の機能と超軽量石膏ボードのご紹介」 吉野石膏株式会社 需要開発部 室長 廣瀬 俊 氏

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■吸音性能は、天井材の大きなテーマの一つ
 天井の裏側では、下地を吊りボルトで吊ってハンガーで受け、クリップでバーを吊って下地材をスクリューで留めています。どんな天井もほぼ例外なく同じ構造になっています。天井材がないと、電気配線などが露出するため格好の悪い仕上がりになってしまいます。(図1)さて私たちが天井材に関して最も重要なテーマとして掲げているのが吸音です。室内で声がよく通るのは天井の吸音性能が優れているからです。
 吸音とは、音響エネルギーを反射させないこと。一方遮音とは、音響エネルギーを透過させない、つまり音を遮断することです。天井に吸音性能があるかないかは重要なことです。吸音性能がないとどうなるか。私の声は反響していつまでも音が残り、聞きとりにくくて講演どころではないでしょう。吸音を施すとエコーが残らないので、声がきれいにはっきりと聞き取れます。

■さまざまな吸音材料を用途で使い分ける
 吸音の材料には、孔あき板材料、多孔質材料(ロック ウールなど)、柔らかく密度の低い板材料と、大きく分 けて3種類あります。基本的に、コンクリートなど硬いものほどよく音を反射します。板材料では、板が振動して吸音します。ロックウールなどの繊維板では、繊維と繊維の間に音が入り込んで摩擦が起こり、振動エネルギーが熱エネルギーに変換されて吸音します。
 孔あきの吸音板は、背後に空気層を設け、音が孔を通過するときの振動エネルギーが熱エネルギーに変換されて吸音します。繊維板より孔が大きいので比較的波長の長い低音域・中音域に効果があります。
 弊社の天井材「ジプトーン」は石膏ボードでできています。比較的コストが安い天井材として認知されていますが、孔がないので吸音性能もありません。「ソーラトン」は不燃材料で優れた意匠性を持ち、吸音材では優秀な材料だという評価を頂いています。四角い孔を持つ吸音材「スクエアトーン・ D」は低音・中音域に有効な不燃材で、人間の声に波長がピッタリ
合っています。
 弊社製品の吸音率を比較したグラフがあります。人間の声は500Hzあたりで発声されるので、これに合った吸音材料を探すことになります。学校などには孔あきの吸音板「スクエアトーン・ D」が有効です。「ソーラトン」は人の声からは外れており、もっと高音域が吸音のピークとなっているので、電話が鳴ったり、声以外の波長の音が発生したりする事務所の天井などによいでしょう。なお「ジプトーン」に吸音を期
待してはいけません。間違って大阪市内の学校などで「ジプトーン」が標準仕様になっているのですが、学校の教室は残響を残すと子供たちの声がうるさいし、先生の声も聞き取りにくくなってしまいます。天井部材の選択では重要なポイントなので、注意が必要ですね。弊社でもしっかりご説明を申し上げるようにしています。(図2)大型ショッピングセンターではよく「ジプトーン」を採用いただいています。「ジプトーン」は低コスト
で優れた材料なのですが、重量の点でまだ改良の余地があったため、非常に軽い「ジプトーン」も開発しま
した。この軽量ジプトーンは、ショッピングセンターのように不特定多数の人々が足を運ぶ場所で非常に有
効です。仮にいきなり天井が落ちてきても、従来品よりはかなり被害が軽減されます。後ほど詳しく説明し
ます。

■軽く柔らかい繊維板「ソーラトン」
 化粧ロックウール吸音板の「ソーラトン」は、共同住宅のエントランスなどによく使われます。オフィスビルでは、同じような繊維板ではありますが、グリッド天井と呼ばれるものが中心です。これは石膏ボードの捨て貼りがなく、バーの上に直接繊維板を載せている状態です。これも弊社で取り扱っていますが、グリッド天井も耐震基準に合わせたものが求められています。先ほどの特定天井がらみのお話の中で、繊維板であって4kgを切るもの、というキーワードがありましたが、「ソーラトン」のグリッドの天井材では現状、4kgを超えるものしか販売していません。しかし近日中には4kgを切るものをご案内できると思います。
 現在、新しいビルはだいたいグリッド天井になっているので、捨て貼り工法、石膏ボード+岩綿吸音板で15kgくらいになります。15kgを左側のタイプにすると4kgを切るのではないかとも考えています。(図3)
 病院では吸音の性能がある程度必要ですね。最近は化粧石膏ボードを使うケースも増えてきています。某大学のエントランスホールでは繊維板を直張りしています。「ソーラトンワイド」という商品で、先ほどのグリッドとまた違うのですが、下地材に対して直接繊維板をスクリーンで留め付けています。これも、柔らかい材料なので落ちてきても大きな被害にはなりにくいと思われます。屋内ではなく、車寄せ、軒天、地下通路などに使われる「ソーラトン不燃軒天」という材料もあります。
 学校の教室には「スクエアトーン・ D」が適しています。学校というと、音楽室の丸孔の吸音板というイメージですが、あれは吸音性能があまり高くありません。四角い孔の「スクエアトーン・ D」タイプは格段に吸音性能を改善しているので、学校の教室にぴったりです。(図4)裏にあるたくさんの配線などを隠して、かつ吸音、不燃、仕上がりの意匠的にも優れている、そんな天井材です。
 建築物の用途と推奨する天井材料の関係をマトリックスでまとめてみました。「私は普段から適切に判断
して天井材を振りわけているから問題ない」というかたも多数いらっしゃると思うのですが、意外と吸音の
必要なところに使っていなかったり、要らないのに使っていたケースがあるかもしれませんね。(図5)

■防災の観点から開発された軽量版「ジプトーン」
 最後に、弊社で開発した軽量の天井材について説明 します。従来「ジプトーン」と呼んでいる商品ですが、 これの「ウルトラライト」です。従来の石膏ボードに 比べて25%軽量化しています。
 吉野石膏の天井板「ジプトーン」は急に軽くなった わけではなく、徐々に軽量化してきました。まず第一 段として、2008(平成20)年に従来の「ジプトーン」か ら全面的に「ジプトーンライト」に切り替えました。 7.1kg/uだったものを、6.2kg/uに軽量化しました。
 今でこそ特定天井がらみで軽量化、軽量化といわれ ていますが、弊社では以前から天井の落下も考慮し、 可能な限り少しずつ軽量化を図ってきました。2014(平成26)年に入り、「ジプトーンライト」からさらに「ジプトーン・ウルトラライト」を開発、一気に4.7kg/uになりました。2008(平成20)年当時の7.1kg/uから比べると相当の軽量化です。(図6)
 軽量化といっても、石膏の量を減らせばいいというわけではありません。減らすのは簡単ですが、天井材として機能しませんし、不燃の認定も取れません。全体の重量に含まれる有機物、つまり石膏ボードの表面に巻かれた紙の割合も重要で、準不燃・不燃の認定に関わってきます。よくお客様から「石膏の量を減らしただけ」と簡単にいわれるのですが、そうでもないのです。しかし繊維板に近いレベルの軽さだというのは、手に持つと実感していただけると思います。
 万が一のことがあったときに少しでも負担を軽減できると考えた結果の商品です。今日のキーワードで吉
野石膏ができることといえば、天井材の重量をひたすら軽くすることです。

■JIS規格に関する注意事項と規格の位置づけ
 「ジプトーン・ウルトラライト」は従来の石膏ボー ドと異なるため、防耐火、遮音、耐力の認定構造や告 示の構造および省令準耐火構造には使用できません。 また、JIS規格を要求される場合にも使用できません のでご注意ください。天井に特化しているのは、その 方がスムーズにご案内できるからです。天井に関して は、軽い不燃材料・軽い準不燃材料を開発したという ことで、防耐火性能に間仕切りなどでからんでくるこ とがないため、すぐにご案内ができるというわけです。 防災の観点からも、軽いかどうかを求められるのは、 基本的に天井の下側の部分だと思います。 
 今日の本題とは関係ないのですが、JISに関して一 つだけ申しあげておきます。JIS材、JIS規定、構造の専門の方はご存知だと思いますが、建築基準法の第37条に、「指定建築材料」という定義があります。これは鉄骨の構造部材などに定義されるものなのですが、もし建築基準法でJISの確認が必要になった場合、この天井材には必要ないことになります。しかしJIS材でないから使えないとはおそらくいえません。もちろんJISはあったほうがいいとは思いますが、むしろJISが絶対必要なところは、建物の中では少ないと思います。
 JIS日本工業規格は国の国家標準ということになっていますので、それに近いものをつくる必要はあります。ただし新しい材料の評価に関しては、まだまだその規格が追いついていないことがあります。この「ジプトーン・ウルトラライト」は、規格が追いついていないという位置づけなのであって、使えないというわけでは決してございません。その点も合わせてご認識いただければと思っております。防災の観点からいうと少し外れる部分もあったかと思いますが、天井について改めて皆さんにも考えていただきたいと思い、吸音の性能をからめた天井機能のご紹介をさせていただきました。


 



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