2007けんざい
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建材情報交流会ニュース
 第34回
震災から学ぶ−耐震のあり方

*機関誌「けんざい」掲載分です。ホームページ用に再編集しておりませんのでご了承ください
  
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「2011年東日本大震災と1995年阪神淡路大震災
  −建築物被害の特徴比較と今後の耐震設計−」
 京都大学大学院工学研究科 建築学専攻
  建築構法学講座 教授 西山 峰広 氏

資料はこちら(PDFデータ)

■阪神・淡路大震災の教訓と東日本大震災
 去年3月11日に東日本震災が起こり、いくつかの地震が引き続いて起こりました。震央は牡鹿半島沖でしたが、実際は点ではなく、一帯の海底が面的に動いて地震が起こったと言われています。
 6カ月後の9月11日現在、死者1万5,782人、行方不明者4,086人、合わせて約2万人。また、多数の避難者や倒壊建物も出ています。ただ、津波の被害は別として、震度の割には建物被害は大きくなかったと感じております。
 近年の大震災としては、死者約6,400人、負傷者約4万人を出した阪神・淡路大震災(1995年)があります。両者を比べると、被害規模だけでなく死亡原因の面でも興味深い結果が浮かび上がります。
 東日本大震災では、92.5%の人が溺死、つまり津波で亡くなっています。圧死あるいは窒息死、つまり建物が振動で倒れるあるいは被害を受けたときに亡くなられた方は4.4%、焼死が1.1%です。
 一方、阪神・淡路大震災では、約4分の3の方が圧死や窒息死など、建物による被害で亡くなっています。焼死も9%ですが、溺死はありません。
 阪神・淡路大震災の被害状況や死亡原因などをまとめることで、以下のような教訓が得られました。
 1)建物の倒壊や火災を防ぐことで、人命を守ることができる、2)応答加速度あるいは応答変位を低減することにより、家具の転倒や非構造部材の脱落を防止し、人命を保護することができる。震災発生の95年以降、免震建築が急激に増えたのもそういう背景からです。「家具や非構造部材は建物に緊結する」という防災対策もかなり普及しました。

■大地震のたびに改正されてきた耐震設計基準
 わが国の建築基準法や同施行令あるいは告示などは、地震のたびに改正されてきました。
 1971(昭和46)年に建築基準法施行令が改正され、また、日本建築学会「鉄筋コンクリート構造計算基準・同解説」も改訂され、ここでせん断補強筋の間隔が細かくなりました。次いで宮城県沖地震が起き、1981(昭和56)年に建築基準法施行令改正で新耐震設計が制定され、かなり建物は強くなったと考えられています。1995(平成7)年の阪神・淡路大震災では、この新耐震設計で十分か不足か、いかに機能するかが試験される形になりました。
 その後、やはりいろいろ改正すべき点があったため、2000(平成12)年に建築基準法が改正され、限界耐力計算が導入されました。そして、今回の東日本大震災です。今までの基準はどうだったのか、どう改正すべきか。特に津波に対する設計が議論されている次第です。

■現在行われている耐震設計について
 現行の耐震設計の主流は、1981(昭和56)年施行の許容応力度等計算(新耐震)です。高層建築、免震建築では時刻歴応答解析が使われます。
 新耐震の設計には、建物が使われている間に数回遭遇するような地震に対して、弾性応答でほとんど損傷を受けないことを保証する1次設計と、建物が使われているうちに1回遭遇するかしないかの地震で、構造的・非構造的被害は受けるが、倒壊しないことを保証するための2次設計の2つがあります。このため、1次設計では荷重、せん断力、振動特性係数、層間変形角などが検討されます。2次設計では、Fesという偏心率や剛性率によって定まる係数が入り、建物の平面的、高さ方向に対する不整形による問題が検討されます。

■阪神・淡路大震災で3,911棟を外観調査
 1995(平成7)年の阪神・淡路大震災のあと、建築学会の近畿支部で、震度7の地域にあたる東灘区、灘区、中央区の一部にある3,911棟の建物全部を外観調査し、建築学会の基準に基づく被災ランクづけを行いました。その結果をご紹介します。
 建物の内訳は、71年のせん断補強筋規定の厳格化以前の建物が約18%、71年〜81年の建物が約34%と、約半分が新耐震以前の建物です。
 被害状況については、外観だけの調査特有の誤差があり得ますが、1)71年以前の建物は、無被害54%、軽微(な被害)25%、小破11%、中破3%、大破2%、倒壊2%、2)71〜81年の建物は、無被害45%、軽微26%、小破12%、中破4%、大破4%、倒壊5%、3)81年以後の新耐震の建物は、無被害66%、軽微22%、小破6%、中破3%、倒壊1%でした。
 この結果や他地域の調査結果も勘案すると、81年の新耐震設計は、大体の見方としては「機能した」と言えるだろうと考えます。
 逆に81年以前の建物、特に71年以前の建物は耐震補強が必要です。阪神・淡路大震災以降、特に耐震補強について国も補助金を出していろいろ行っているところです。

■新しい耐震設計法についての議論
 阪神・淡路大震災以後、新耐震に替わる新しい耐震設計法が必要ではないかと言われてきました。現在の議論の要点をいくつか挙げておきます。
○設計者の説明責任
 新耐震の2次設計は、人命が守られれば建物が多少壊れてもよいという考え方だと申しましたが、実際の所有者、居住者は「建築基準法を守っていれば壊れないはずだ」と考えます。両者の考え方の差を説明する責任があるかどうかです。
○耐震メニューの導入
 地震に対して、建物をどれくらい強くするか。最低限の規定は建築基準法にありますが、さらにどれくらい上乗せするか、もっと強い建物を導入するのかどうかということです。
○限界耐力計算と使用限界、損傷限界、安全限界 限界耐力計算は、実際に新しい設計法として導入されましたが、その中で使用限界、損傷限界、安全限界といったものが出てきています。
 評価指針案として、建築学会が出した「鉄筋コンクリート架構の構造特性」があります。これは、建物に加わった地震力の大きさと変形の関係を表したものです。「使用限界」は、地震が去ればほとんど損傷が残らないレベル。逆に「安全限界」は、主筋が座屈したりコンクリートが圧壊しているので、建物としては以後使えないが、人命は救えるだろうというレベルです。両者の中間点として「修復限界」がありますが、どの辺までに変形を抑えるかは難しいところです。あまり「安全限界」に近づくと、修復費用は大きくなるでしょうし、建物が使えなくなるかもしれません。
○設計者の判断と法律規定との兼ね合い
 優秀な設計者は自由な判断で設計をやりたいと考えますし、あまり考えたくないという設計者は、マニュアル的なスタイルが一番いいと考えます。その辺を法律でしばるのか、あるいはそのまま設計者に任せるのかが議論されています。

■東日本大震災の建物被害について
 ここからは、東日本大震災に話を移します。建物の被害を簡単にまとめると、「振動による被害」「津波による被害」「地盤の液状化」となります。今日は主に振動と津波の話をします。
○地震動によるRC建物の被害
 新耐震以前の古い建物が、大きな被害を受けています。郡山市(福島県)の4階建てRCの建物は、1階が層崩壊しています。有名になった須賀川市役所(福島県)は、中に入って見たのですが、中の壁、柱、外壁がかなりぐちゃぐちゃに壊れています。同市内では、プレストレストコンクリートの梁と鉄筋コンクリートの柱を組み合わせた建物の破壊が見られました。梁に比べて柱の強度が弱いため、まず柱がせん断破壊してしまったものです。
○耐震補強の有効性
 耐震補強を行った建物では、東北大学(宮城県仙台市)の建物が壊れて有名になりましたが、その他であれほど壊れた建物は、私の見た限りではありませんでした。津波の被害を受けた建物でも、耐震補強自体は有効に働いたと言えます。
○津波による木造住宅の被害
 木造住宅は津波でほとんど流されてしまい、RCの建物や鉄骨系の建物、工業化住宅いわゆるプレハブがポツポツと残っているだけです。東松島市(宮城県)の写真では、海辺からかなり内陸に入った所までテトラポッドがコロコロと転がっているわけですから、津波の威力はかなりのものです。
 鉄骨造の被害は、外壁がみな流されて骨組みがむき出しです。大体このような感じが多いです
○津波によるRC建物の被害
 約14mの津波が来たといわれる女川町(宮城県)ではRC建物(ビル)が転倒し、ぷかぷか浮いて流されたようです。写真はビルの底ですが、基礎杭が液状化で有効に働かなかったとも、杭自体が簡単に折れたとも言われています。こんなに大きく重いものが流されたということで、浮力の話、波力の話など議論されているところです。
 また、同町の魚市場では、2002年設計・施工の比較的新しい建物が大きな被害を受けました。全長80m以上、高さ11.5mの建物で、プレストレストコンクリート梁と柱の骨組みの上に15枚ぐらいのDT版が架かっていましたが、流されています。1枚のDT版は6.237kN/mの重量がありましたが、両端に塞ぎ板があり、空気だまりができやすい状態でした。計算すると、浮力が21.51kN/mで重量よりも断然大きいことが分かります。
○非構造部材の被害
 非構造部材の被害は、ガラスや天井の落下、雑壁のひび割れ、連結部の破損などとなっています。このような被害はあちこちで見られました。

■東日本大震災後の検討課題について
 国が設けている建築構造基準委員会では、東日本大震災の被害を踏まえて今後どうすべきかが議論されています。現在検討中、あるいは今後検討が必要な課題として、以下の項目を挙げています。
○津波に関する検討課題
 予測された津波の高さと実際に今回計測された津波の高さとの関係、静的荷重の三角形分布(後述)、設計用の津波の荷重の算定、遮蔽物による低減効果などがあります。さらに、1階開口部がもたらす荷重の減少、建物の転倒被害、逆に漂流物による建物への衝撃荷重なども検討中、あるいは検討すべき項目として挙げられています。
 静的荷重の三角形分布とは、津波の高さ(h)の3倍の高さで三角形をつくり、その三角形(3pgh)の力で建物が押されると想定して設計すればいいのではないかという議論です。実際に津波による被害の調査を行った結果、ほぼその妥当性が示されています。
○非構造部材、液状化、免震建物における検討課題
 非構造部材に関しても次のような点が挙げられています。天井の形状、天井の箇所、下地の構成・配置、部材単体などです。
 液状化は、現在予測する手法があるのですが、それが今回のような長い震動時間や砂質土壌に対しても妥当なのかどうか。また、液状化に関する情報表示をすべきかどうか。「住宅の値打ちが下がる」となるかもしれませんが、検討課題です。また、液状化を防ぐ対策技術の開発も望まれます。
 免震建物では、建物自体は何ともなかったのですが、エキスパンションジョイント部やクリアランス部に破損や脱落があり、これをどう考え、対処するのか。あるいは、免震部材の取り付け部がさびている、免震層が津波によって冠水したらどういう影響を及ぼすのかなどです。長周期地震動の影響も検討する必要があります。
 今まで申し上げたように、建物の被害、振動による被害と津波による被害など、現在いろいろ調査・検討されているところですが、国のほうもいろいろ課題を挙げて議論しています。したがって、近いうちに設計基準の変更が提案されると思います。


「既存木造住宅の耐震化のすすめ」
 轄糟ウ商会 営業部 営業一課
  課長 宮田 龍治 氏

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■30年以内に起こる確率は80%、「三大巨大地震」
 ご存じのとおり、阪神・淡路大震災以来、かなり大きな地震が日本を襲っており、一部では地震の活動期に入っているとも言われます。特に注目されるのが、宮城沖、関東、東海・東南海・南海の「三大巨大地震」で、これが30年以内に発生する確率は70〜80%と言われています。そんな中、2011(平成23)年3月11日には東日本大震災が発生しました。
 今回の大震災では、津波で木造住宅が流されていますが、流される前に家屋が倒壊しないような耐震対応が必要です。国のほうでも、2020年度に木造の耐震化率を95%に上げるべく、各自治体の耐震診断や設計の補助、あるいは工事に関する補助などを今、順次充実させていっています。ただ、一昨年の新聞報道によれば、08年度ベースの耐震化率は近畿圏でまだ80%前後、国全体で79%です。大阪府の木造住宅は全住戸の34%、126万戸ですが、そのうち33%、41万戸は耐震性が不足したままです。

■阪神・淡路大震災と建築基準法改正の流れ
 1981(昭和56)年のいわゆる新耐震では、木造建築についても、壁量の再強化を図るよう建築基準法施行令が改正され、耐震性能の向上が求められました。しかし、阪神・淡路大震災では、直下型地震でホゾが抜けてしまい、倒壊、圧死した人が、6,400人の死者の多くを占めました。
 これを受けて、2000年度の建築基準法改正では、引き抜き防止金物を用いて仕口を補強することが必要になりました。なおかつ壁の量、バランスを考慮した耐力壁、筋交いなどの配置もしっかりすることになっています。

■耐震性アップの5つのポイントと耐震診断
 既存木造住宅の耐震性能をアップするポイントは、1)建物の大きさ(重さ)に見合った耐力壁が確保されている、2)耐力壁の配置バランスが取れている、3)耐力壁を構成する主要構造材の接合部が緊結されている、4)建物を支える基礎・地盤がしっかりしている、5)構造材の劣化(蟻害・腐朽など)がないという、5点です。
 これはそのまま、耐震診断のチェックポイントです。実際には、国交省発行の『木造住宅の耐震診断と補強方法』マニュアル(いわゆる「青本」)に基づき、耐震診断士が診断を行います。床下に潜ったり屋根裏に上がったり、実際に触りながらきっちり目視し、チェックします。構造材の劣化を知るために、ドライバーなどを刺すこともあります。図面があればそれも参考にします。
 最終的には、耐震診断用ソフトを使って現状の耐震性能と、それに関わる補強案を作成して出力することが多いです。診断結果は各階のX軸とY軸方向ごとに4段階で表示されます。このうち一番低い数字が最終評点となりますが、1.0以上なら大丈夫、下回ると耐震補強が必要です。
 補強方法としては、1)壁面については、耐力壁や筋交いを入れる、2)基礎部分は、クラックに樹脂を注入したり、新しい鉄筋コンクリートで補強する、3)屋根は、軽い物に替える、などです。診断に基づく補強計画どおりに工事をすれば、評点1.0以上1.5未満の「一応倒壊しない」レベルになります。現行の建築基準法では、震度6弱から6強で大破は許容するが倒壊しないレベルであるという考え方です。

■筋交いでも合板材でもない金物「コボット」
 ここでご紹介したいのが、筋交いや耐力壁用の構造合板に代わる当社の新しい耐震補強金物、「コボット」です。鉄骨造のブレースの発想を木造住宅に持ってきたもので、国交大臣認定も取得済みです。特徴は、1)半間(900mm)が2.7倍、1間(1,820mm)が3.3倍の認定壁倍率を取得、2)たすき掛けにした細いブレースの長さを変えるだけで他は共用でき、サイズが豊富、3)施工が非常に簡単で、ブレースが細い(Φ10mm)ため納まりも良好、などです。特に、既存住宅に構造耐力壁を作る場合は、どうしても壁をめくらなければならないので、その後の納まりや作業性の良さは大切です。
 たとえば、土壁の場合は中身を取ることなしに細いブレースが納まり、耐力壁として構成できます。また、乾式の真壁でも、長押の部分をそのまま残しながらブレースを差し込んで納めることが可能です。さらに、素材がオールステンレスなので、意匠としてこのまま見せたり、耐力を確保しながらガラスを使って光を入れることもできます。

■診断・設計・改修の補助制度の利用がおすすめ
 冒頭に述べた診断、設計、改修工事は、国が後押しをしており、補助制度が設けられています。大阪府ですと、1981(昭和56)年以前の建物について規定の耐震診断を行う場合、上限4万5,000円で9割の補助率となっていますし、耐震改修設計や耐震改修(工事)についても補助制度があります。ちなみに、「コボット」は、大阪府の補助金を使って工事をするときの事例として紹介されていますので、安心して使っていただけると思います。
 大阪府以外の自治体でも、府県や市町村単位で補助制度を設けているところがあります。耐震改修については、所得税や固定資産税の減免が受けられますので、大いに利用すべきでしょう。
 最後に金物メーカーとしてのお願いですが、リフォームを考えるときはぜひ、耐震診断を受けていただきたいと思います。自分の家が地震に耐えられるかどうか。耐えられないのなら、ご自分と家族を守るために耐震補強をしなければいけません。今一度、声を大にして申し上げたい点です。


「鋼製下地材の耐震に対する考え方」
 関包スチール 東京営業所
  所長 北村 幸則 氏

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■今までの地震と天井の耐震対策について
 1995(平成7)年の阪神・淡路大震災から、今回の3.11地震(東日本大震災)まで、震度6以上の地震だけでも、芸予地震(2001・M6. 7)、十勝沖地震(2003・M 8. 0)、宮城県沖地震(2005・M7.2)などが起き、そのたびに国交省から天井の組み方など技術的助言が出ています。
 芸予地震の際は、大規模な広い天井が非常に揺れ、落下したり、壁にぶつかって崩壊する事例が多く見られたので、周辺にクリアランスを設けること、吊りボルトに斜め補強材(ブレース)を入れることが助言されました。
 十勝沖地震では、釧路空港の管制塔の天井などが落ちたため、段差天井についても補強すること、またクリアランスを設けることが助言されました。
 宮城県沖地震では、スポーツ施設の天井落下が非常に注目され、国交省からは過去の指導を“確実に実施”するよう助言がありました。
 こうしたクリアランスの認識は10cm以下ですが、これが非常に大きい。十勝沖地震の後は、段差部分にもクリアランスを設けることになり、意匠や音響効果などの問題があるので、特に大規模なホールなどでは、これをどうふさぐか、設計も現場も頭を悩ませています。
 今回の大震災では、大空間の天井が相当数落ちています。天井下地の模式図を見れば分かりますが、仕上げ材を受ける野縁とそれを受ける野縁受けは、クリップという薄い金具で留まっているだけなので、地震の揺れによって徐々に緩んできて、野縁ごと仕上げ材が落下しやすいのです。特に、アール天井や勾配天井など意匠的な天井に被害が多いので、シンプルな天井が一番いいのではないかと考えています。

■鋼製下地材の耐震の基本は「落とさない」
 当社では、鋼製下地材を「落とさない」ことを基本に、耐震対策に取り組んでいます。
 まず、天井下地ですが、水平力1Gがかかると想定し、10uごとにXY方向1対のブレースを設けることにしています。天井は通常、900mmピッチで吊りボルトがぶら下がっているので、9マス(約8u)くらいを1単位としています。数が多すぎる、コストがかかるとよく言われるのですが、力の伝達範囲を考えて、そのようにしています。また、使用部材は強度の面からJIS材を使用しています。
 地震による水平力を処理するブレースは、引張材とする場合と圧縮材とする場合がありますが、引張材にすると吊りボルトに圧縮力がかかるため、事前に補強が必要になりますし、吊りボルト位置の変更も難しくなります。当社はできるだけ圧縮材として、V形で入れる提案をしています。また、野縁受けに直交するブレースを留めるため、野縁受けと同じ部材を直交方向に取り付けています。

■大規模空間や天井ふところの深い場合の対処
 大規模空間について、われわれは500u以上の空間と理解しています。
 東日本大震災の後、不特定多数の人が使う空間は、狭くても広くても原則耐震天井にしなさいというケースが出ています。ただ、狭い部屋だとクリアランスもとれないので、今はその都度の判断で処理を行っています。ホテルや病院のような建物では、天井裏は設備配管が多く走っているので、通常の吊りボルトの取り付け場所を確保するのもひと苦労です。
 天井のふところが深い場合、通常1,500mm超では、中間水平補強材を縦横方向に1,800mmピッチで、斜め補強材は縦横方向に3,600mmピッチで設けなさいと、国交省の公共建築工事標準仕様書に出ています。しかし、これは耐震仕様とは別です。耐震天井の場合は、前述のようにブレースなどを配置します。
 当社では、階高が高く、天井にかなりふところがある場合、設計や現場の段階で鉄骨の吊り元(ぶどう棚)を作っていただき、天井ふところを3,000mm以下にしていただくことをお願いしています。それにより耐震仕様にも容易にできます。

■脱落防止対策のハンガー、クリップ、すべりの防止など
 吊りボルトの先で野縁受けを引っ掛けている通常のハンガーは、下からの衝撃で突き上げられると、簡単に外れます。耐震天井では、脱落、落下防止のために、ハンガーやクリップを耐震用の部材に置き換えています。また、部材の横すべりを防ぐため、一定のピッチでのビス留めも提案しています。

■耐震天井の静的実験
 ある大学において耐震天井の静的実験をしたところ、ブレースの入らない状態で揺らすと簡単に動く状態でしたが、ブレースを入れると、3,000Nで約14mmの水平変位にとどまりました。
 ブレースが有効に働いていると思います。今後、動的実験を行う予定です。

■間仕切壁下地に関して
 間仕切壁下地について、当社では細長比250以下(数値が低いほど強い)を満足する部材を使い、1Gの水平力と軸力を想定し応力検定を行って検討しています。また、それに対する面外たわみ量は、参考値として出しています。これを1/200や1/300にせよ、という指示があれば合わせることができます。

 
 
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