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第32回
「今後の高齢者住宅について」
*機関誌「けんざい」掲載分です。ホームページ用に再編集しておりませんのでご了承ください
掲載情報は全て著作権の対象となります。転載等を行う場合は当協会にお問い合わせください。
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「今後の高齢者住宅施策について」
国土交通省 住宅局
住宅総合整備課 係長 岩田 賢治 氏
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資料は当日配布のみです。
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■日本の高齢者向け住まいの現状とは
日本では、高齢者が暮らす住まいは、大きく3つに分類されます。第1は、要介護高齢者を対象とした「介護保険3施設(特別養護老人ホーム・老人保健施設・介護療養型医療施設)」。第2は、住宅と施設の中間を担う「居住系施設(有料老人ホーム・軽費老人ホーム=ケアハウス・認知症高齢者グループホーム・養護老人ホーム)」。これらはともに厚生労働省の所管となっています。
一方、第3の「高齢者向け賃貸住宅(高齢者専用賃貸住宅・高齢者向け優良賃貸住宅・シルバーハウジング)」は、国土交通省が所轄しており、運営主体も民間事業者、医療法人、社会福祉法人、地方公共団体などさまざまです。
日本の全高齢者に対する介護保険施設・高齢者向け住宅等の割合を諸外国と比較すると、介護保険施設等の施設系は諸外国並みに供給がなされているものの、高齢者専用賃貸住宅や有料老人ホーム等の住宅系は0.9%であり、デンマーク8.1%、英国8.0%などと比較すると不足している状況です。こうした現況を踏まえ、国土交通省は2020年を目処に住宅系の割合を欧米並みの3〜5%に整備促進していくことを成長戦略に掲げています。
■3種類の「高齢者向け賃貸住宅」
国土交通省では、平成13年制定の「高齢者の居住の安定確保に関する法律」(以下、「高齢者住まい法」という)に基づき、「高齢者向け賃貸住宅」の供給促進を図ってきました。平成21年の同法改正では、生活支援サービス(ソフト)と密に連携した住まい(ハード)が必要との観点から、同法を国土交通省と厚生労働省の共同所管に切り替え。地方公共団体の「福祉部局」と「住宅部局」が共同で、一定期間内にどれくらいの高齢者の住まいを確保するか等を定めた計画策定や、高齢者専用賃貸住宅の登録基準の導入などを行っています。
現行の「高齢者住まい法」上、3種類の「高齢者向け賃貸住宅」が規定されています。
「高齢者円滑入居賃貸住宅(高円賃)」は、高齢者の入居を拒まない住宅として、都道府県等に登録されたものです。床面積が原則25u以上、水洗便所や洗面設備等の設備を有している等、一定の基準を満たす住宅を、賃貸住宅を探している高齢者の方に情報提供する施策です。
「高円賃」のうち、入居者を専ら高齢者とする賃貸住宅は「高齢者専用賃貸住宅(高専賃)」として登録されます。
「高円賃」及び「高専賃」が情報提供のための登録制度であることに対し、「高齢者向け優良賃貸住宅(高優賃)」はバリアフリーを標準仕様とし緊急時通報設備を備えたものとして、地方公共団体に認定をされた賃貸住宅です。
それぞれの実績は、「高円賃」約8万戸、「高専賃」約4万5,000戸、「高優賃」約3万5,000戸です。
■「高齢者向け優良賃貸住宅」の現状
ここで「高優賃」の認定基準について簡単にご説明すると、○5戸以上供給○耐火構造または準耐火構造○各戸の床面積は原則25u以上○各戸に台所、水洗便所、収納設備、洗面・浴室設備を備えること(台所や浴室等を共同利用とする場合は、床面積原則18u以上)○高齢者向けバリアフリー構造○緊急時対応サービス○10年以上管理○入居者の公正な選定、などです。
認定を受けた「高優賃」の事業者に対しては、国のバックアップのもとで、地方公共団体が整備費や家賃の減額を補助しています。また、基準を下回る収入の人に対する家賃補助も行われます。さらに、税法上の特例や住宅金融支援機構による融資などを整備することで、民間事業者が高優賃を供給できる環境をつくっています。
現状の「高優賃」では、緊急時通報サービス以外の生活支援サービスは任意ですが、今後は、日常の安否確認や困った時に相談できる体制など、幅広い支援サービスが求められていくと思います。そこで、今年度からは、国が直接民間事業者を補助する「高齢者等居住安定化推進事業」を立ち上げ、生活支援サービスが付いた「高専賃」を供給するために、試行的に補助制度を実施しています。自宅と施設の中間的な賃貸住宅を供給し、居ながらにして必要な生活支援サービスを受けられる環境を整えることで、「自宅か施設か」という限られた選択肢しかない現状の改善につなげたいと考えています。
■「サービス付き高齢者向け住宅」への期待
国の新成長戦略や国土交通省の成長戦略では、生活支援・医療・福祉サービスと一体化した高齢者向け住宅の供給拡大を目標としています。しかし、現状では、「生活・医療・福祉サービスとの連携が不十分」「数が少ない」「制度が複雑」「消費者保護が不十分」といった課題が残されています。
そこで、国土交通省および厚生労働省では、「高齢者住まい法」を改正し、「サービス付き高齢者向け住宅制度」を創設することを検討中です。想定している内容としては、○「高優賃」と同様のハード登録基準○安否確認・生活サービス相談などを最低限とするサービスの登録基準○高齢者の居住の安定を図るための契約形態(賃貸借または利用権方式)○前払家賃(入居一時金)の返還ルールや保全措置○サービス提供に関する事業者の義務○行政による立ち入り検査などの指導監督権限、などです。また、「サービス付き高齢者向け住宅」の供給促進のために、予算による補助・税の軽減・融資制度の充実も検討中です。
将来的には、住み慣れたところで必要なサービスを受けながら安心して暮らせる環境、24時間対応の訪問看護・介護が図られる環境、まちなか各所に立地されることによる多世代交流のまちづくり環境を、「サービス付き高齢者向け住宅」の供給を通じて進めたいと考えております。
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「建築会社から見た高齢者向け住宅の市場動向」
積水ハウス梶@医療・介護推進事業部
課長代理 天野 武 氏
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■賃貸住宅市場の現状と高齢単身者ニーズ
私たちの部署が取り組んでいるのは、高齢者にとっても、そこを運営する事業者(介護事業、医療事業者の方々)にとっても、さらに当社の顧客である土地オーナーの方にとってもWINの関係になるような事業である、高齢者向け住宅の受注促進です。
まず、賃貸住宅市場の全体傾向として、○貸家自体の着工数の減少○賃貸住宅における空家率の増加傾向○人口構成の変化(高齢化率の高まりと高齢単身化世帯の増加)が挙げられます。
こういう環境の中で、特に高齢者の単身者世帯では、6割以上の方々が、健康や介護、生活費などの面で、何らかの心配を抱えておられます。調査結果を見ても、「自分の健康のこと」、「病気のときに面倒を見てくれる人がいない」、「一人暮らしや孤独になること」、「生活費など経済的なこと」など、すべての項目で、単身世帯の割合がいちばん高いのです。こうした悩みを解決するための何らかのソリューションがあれば、ビジネスとして十分成り立つと思います。
一方、土地オーナー様の視点から見てみますと、空室率の増加を心配される一方で、先ごろの「タイガーマスク現象」に見られるような社会貢献への意識の高まりが見られるようです。さらに、少子高齢化の時代にあって、事業の安定性・将来性を模索される方も多くおられます。
私ども建築会社から土地オーナーの方におすすめする土地活用事業は、こうした諸問題を解決できるようなソリューションということになるでしょう。そこで、提言しているのが高齢者・介護系事業による土地活用の提言です。具体的には「地域社会への貢献度の高い事業」であり、「高齢社会のニーズに合致した事業」であり、「長期で安定した収支が見込める事業」─一括貸しの長期契約を結ぶことで、安定した家賃収入が可能─ということで、土地オーナー様におすすめできると考えます。それはまた、高齢者の単身者世帯の不安や悩みを解決するソリューションともなると考えています。
■運営者も土地オーナーも満足できるスキームこそ
従来、貸家を含めた土地活用のスキームは、不動産会社が土地オーナー様の建てたものを借り上げる形がメインでした。しかし、当社の高齢者向け賃貸住宅のスキームでは、運営者は介護事業者、医療法人、社会福祉法人、開業医などが借り上げを行います。
このスキームが成立するためには、双方にメリットが必要です。運営者のメリットは、○借り上げることによる初期投資の抑制とスムーズな事業拡大○良質な土地情報の入手と比較検討○良質な建物による運営です。一方、土地オーナーのメリットは。先ほども触れたように、○高い需要見込み○長期安定○社会貢献性○税制メリット、などです。つまり、運営者の事業拡大のニーズと、土地オーナーの資産活用ニーズを、積水ハウスを介してうまくマッチングすることが、この事業における当社の役割といえます。今後、さまざまな事業者・医療法人などと連携しながら、高齢者の住まいを創出するという役割を担っていきたいと考えています。
■住宅モデルは「自立型」「介護型」「医療型」の3つ
基調講演にもありましたが、高齢者向け賃貸住宅には、「25uタイプ」と「18uタイプ」があります。前者はいわば「自立型」で、入居者は元気だが、独居、虚弱、慢性疾患などの不安を抱えている方と想定されています。当然、生活支援や介護サービスがつきます。当社では、一般住宅に近いものをベースにしながら、全面バリアフリーで手すりを設け、車イスでも自由に動けるゆとりを設けたプランをご提案しています。
一方、後者は食堂と浴室が共用のタイプで、医療法人が建てるケースが多くなっていると感じます。このタイプはさらに、中・重度の要支援・要介護者を対象とした介護サービス付きの「介護型」と、医療依存度の高い方を対象とした病室のような「医療型」に分けることができますが、いずれも介護・医療サービスを併用させています。共用部にLDK、浴室、収納、管理室を設置しており、機械浴室をつけるパターンが多いと思います。また、デイサービス・訪問介護などのサービスを併設するタイプが多いです。その他、実例も多数取りそろえておりますので、ぜひお問い合わせいただければと思います。
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「オリックスグループが取組む高齢者住宅について」
オリックス不動産梶@
運営施設開発第一部長 国仲 伸浩 氏
開発第二課長 蜂須賀 公次郎 氏
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資料はこちら(PDFデータ) |
■原点は「長く愛される街をつくる」
オリックスグループの高齢者住宅開発の特徴は、単独の高齢者住宅よりも、それに付随するクリニックや調剤薬局、さらにマンションなどを含む複合的な開発です。10年ほど前から各地で開発を手がけており、その第1号デベロッパーであると自負しております。
入居者ご本人とその親御さん、また、一人になったご本人とその子供さんなど、長いスパンでその街を愛し、受け継ごうという方に買ってもらえれば理想だな、という発想で始めました。住宅地に老人ホームはどうか、という声もありましたが、やってみると、実績だけでなく、そのコンセプトにも高い評価をいただきました(図1)。首都圏では「マークスプリングス」「千葉みなと海岸通/駅前通」「流山おおたかの森」など、関西では尼崎、御影、弁天町などの事例があります。
私を含め、ここにお出での方々は皆さんお元気ですが、人生90年時代に郊外の一戸建て住宅に住み続けることはなかなか難しいかと思います。自分で最後まで暮らせるのが理想ですが、そばに便利な施設がそろっていないと、外出するのも億劫になります。
しかし、マンションに住んでいて、低層階にこういった施設があれば、精神的に安心が得られると思います。複合的な街づくりによって、住宅としての価値をさらに高めようという思いで開発に取り組んでおります。
■開発〜運営のすべてに、責任をもって対応
次に、運営者視点からのお話をいたします。現在、介護運営会社は全国で約2,400社ありますが、運営施設数トップ10企業の業界シェアは、全体の2割程度しかなく、まだ寡占化にもほど遠い現状です。
参入企業の傾向は、地域ごとの小規模な運営会社を別にすると、3つに大別できると思います。1)在宅介護や他のサービス業からの参入(ベネッセ、ニチイ学館、ワタミなど)、2)大規模な福利厚生を手がけてきた重厚長大型・インフラ系企業からの参入(大阪ガス、神戸製鋼など)、3)ファイナンス系企業からの参入(オリックスグループ、東京海上、三井住友海上など)。中でも私たちは、開発から運営まで責任をもって行える数少ない企業の一つと自負しています。
当グループでは、オリックス・リビングを通じて、「グッドタイムリビング」(有料老人ホーム)、「プラテシア」(高齢者向け賃貸住宅)をブランド展開中です。このうち「グッドタイムリビング」は、介護サービスと居住機能を一部分離した「住宅型」有料老人ホームです(他に、「介護付き特定施設」と「健康型」(介護状態になると退去)もありますが、「住宅型」と「介護付き特定施設」の基本スペックはほぼ同じです)。
施設設計の基本は、なるべく居室にこもらず、外(共用部)で楽しく過ごしていただくことです。このため、居室は18u〜20uでも、共有部分を含む一人当たり面積は50u程度を確保しています。室内にはトイレ、洗面、ナースコールや緊急通報ボタンが設置済みです。
対象はアッパーミドルといわれる方々で、おおむね1,000万円前後の入居一時金と、20万円前後の月額利用料(食費含む)をいただくのが基本です。ターゲットエリアは、人口および高齢世帯が増加し、核家族化の進行が顕著な首都圏、関西圏です。
■強みは、「信用力」「開発力」「運営力」
私たちの高齢者住宅事業の強みは、○“終の棲家”に最も求められる「信用力」○豊富なデベロッパー体験に基づく「開発力」○ホテル経営や旅館再生など、多数の事業に裏付けられた「運営力」、にあります。
特に「運営力」では、「ゲスト=入居者」の方々の満足を重視する「ホスピタリティ」、均一のサービスクオリティを確保できる研修機能を持つ「介護」、医療機関との提携により、ホームドクター的な計画診療や看護師配置を最大限に活用した「医療」に強みがあります。現在、入所者の約4割が要介護度3以上となっており、最後の「看取り」まで行うことを基本コンセプトに、かなり介護度の高い方でもご入居いただけます。
当グループでは今後、もう少し施設の数を増やしていこうと考えております。条件を満たす土地があれば、お気軽にお問い合わせいただければ幸いです。
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