2007けんざい
社団法人日本建築材料協会
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建材情報交流会ニュース
 第31回
 香港・中国の建築・建材市場の魅力と課題

*機関誌「けんざい」掲載分です。ホームページ用に再編集しておりませんのでご了承ください
  
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「中国ゲートウェイとしての香港の魅力」
 〜香港・華南地域の経済状況と課題〜
 香港貿易発展局 大阪事務所長 ベンジャミン・ヤウ 氏

資料はこちら(PDFデータ)

■中国にあって自由経済を保持し続ける都市、香港
 香港は1997年に中国へ返還され、以降13年間は中国の経済発展に伴って成長してきました。香港には1950年から70年にかけ、大量の中国人が本土から移り住みました。中国と香港のネットワークの基盤も、このころに形成されました。香港は貿易で経済を発展させ、70年代は多くの工場が集中していました。
 香港は非常に人口密度が高く、中でも旺角(おうがく)は、世界一人口密度が高い地域です。ピーク時は何と13万人/kuもありました。高層ビルが多いので、タテに人が密集しているわけです。香港の人口が700万人に達したのは2009年です。1841年にイギリスの植民地になった時はわずか7,450人でしたから、約170年で100倍近くに膨れ上がったことになります。
 返還後の一国二制度政策のもと、香港は国としては中国に所属していますが、経済、法律、税制などはイギリス統治時代の制度が守られています。この制度は、2046年まで続けられることが決まっています。
 香港経済は、中国の経済発展にともないプラス成長が続いています。2010年の経済成長率もプラス4〜5%になると予測されています。一人当たりの所得は約3万USドル(2009年)、中国人の平均的な所得の10倍程度です。東京で約5万USドル、大阪で4〜5万USドル程度、日本全体平均が3万5,000〜6,000USドル程度ですから、香港の生活水準は日本に近いと思います。毎年多くの香港人が日本を訪れますが、日本の文化を吸収して香港に戻り、日本の生活を参考にして暮らす人もいます。
 香港を訪れる観光客は年間3,000万人で、人口の4倍以上です。これは香港の大きな特色の一つでしょう。うち1,800万人程度が、中国本土からの観光客です。
 香港は土地が狭いので、工場という形態は効率的でなく、現在ではほとんどの工場が北の方──広東省の東莞(とうかん)や深圳(しんせん)などに移転しています。したがって、香港経済の中心はサービス産業で、GDPの93%を占めています。最も多いのが貿易、次に金融、ビジネスサービス、観光と続きます。
 香港には独特のライフスタイルがあります、中国の伝統とイギリスの影響を受けた文化であること、華人のネットワークがあること、などです。中国の各省、各市だけでなく、東南アジアに住んでいる華僑の大規模なネットワークがあるのです。

■インフラ整備でより魅力的なゲートウェイに
 香港とつながっている広東省は、経済成長率がプラス10.1%(2008年)。中国で最も経済の発展した省で、華南地域で最大の消費市場です。人口は9,540万人で、香港の700万人を合わせると1億人を超えます。1億人のマーケットは世界でもそうそうありませんから、華南地域だけでも1億を超えるというのは、ひとつの大きなポイントです。
 広東省最大の経済発展地域は「珠江デルタ地域」です。この地域は、人口で広東省の約半分、総輸出入高では中国経済全体の1/4を占めています。そのうち、香港資本の工場は約7万社に上ります。
 2010年4月、華南地域をこれからより一層発展させていくため、香港と広東省の間で「粤(えつ=広東省)港連携協定」が結ばれました。北京政府も今後の華南地域の発展に意欲的です。2010年11月に広州アジア大会が開催されましたが、これは2008年の北京オリンピック(華北)、2010年の上海万博(華中)に続き、華南地域を盛り上げることを目指した北京政府の政策の一環です。
 香港返還後には、香港から広東省・深_を結ぶ高速道路や鉄道が多く建設されました。また、香港から西の珠海・マカオ方面へは、建設中の「港珠澳大橋(全長40km)」でつながる予定です。この橋で香港と珠江デルタ地域の西側がつながれば、人・モノ・金の流れがますます活発になると思われます。これは香港政府が進める大きなプロジェクトのひとつです。
 もう一つの大プロジェクトに、「啓徳国際空港跡地再開発」があります。1998年、赤_角島に香港国際空港が開港し、香港の中心地に近い九龍にあった啓徳国際空港は閉港しました。再開発計画は、この旧空港跡地に、住宅、スポーツ施設、商業施設、観光地、インフラなどの機能を整えるというもので、2021年に完成の予定です。これらは今、香港の建築業界を最も熱くしているプロジェクトといえましょう。

■香港を大いに活用してビジネスチャンスを!
 ここで、香港の建築市場の現況を概観してみましょう。香港の建築には「高層ビルが非常に多い」「斜面に建っている」といった特徴があります。また、建築産業全体として見ると、「国際企業が多い」「動きや反応が敏速」「中国市場に進出している」といった特徴もあげられます。
 香港は土地が狭いので、建築産業はどんどん中国に進出しています。中国社会は住宅に対する考え方が香港と似ており、ある程度収入が安定したら結婚して自分の家を持つ、つまり「家を持って初めて一人前」のような感覚があります。また、香港のさまざまな建築物自体が、年間約1,800万人も訪れる中国人に対して、ショールーム的なPR機能を発揮し、中国市場に影響を与えているという側面もあります。
 ここにお集まりの建築・建材関係者の皆さんには、このような特長を持つ香港を、ビジネスチャンスのためにもっと活用していただきたいと考えています。中国へのゲートウェイであることはもちろん、自由経済が維持されているので安心・安全ですし、中国本土・東南アジアへの緊密な華人ネットワークもある。また、香港ドルは世界で流通している通貨単位なので資金調達や回収がしやすいというメリットがあります。当貿易発展局では、香港にご興味のある方々は、いつでも歓迎いたします。


「香港貿易発展局の支援・紹介」
 香港貿易発展局
 アシスタント・マーケティング・マネージャー リッキー・フォン 氏

資料はこちら(PDFデータ)

■展示会を中心に日本や世界の各地域へ製品販促
 まず、香港貿易発展局についてご紹介いたします。本局は、香港の対外貿易発展のために設立された機関で、世界40カ所に事務所を持ち、日本にも大阪と東京に事務所があります。香港のさまざまな製品・サービスなどを日本に持ち込むのがメイン業務ですが、香港を通した中国市場への日本製品販売についても、さまざまなサポートを行なっております。
 本局では、年間を通して各種展示会やセミナーを開催しています。展示会は世界最大級、あるいはアジア最大級のものを、香港で年間約30回開催しています。皆さまに関わりの深い展示会としては、毎年10月に行なわれる「香港国際建築資材・装飾資材・機械設備展」があります。まだ日本の出展社が少なく、ほとんど中国・香港からですが、出展内容を見ると、やはり日本からすれば一昔前のものだな、という声が聞かれます。だからこそ日本製品が売れるのですね。
 「香港国際建築資材・装飾資材・機械設備展」は2008年から始まった、まだ歴史の浅い展示会ですが、ぜひ皆さまにも一度ご覧いただきたいものです。出展費用もスタンダードブース(9u)が2,790USドルと、日本よりもお安くなっていると思います。

■「エコ・エキスポ・アジア」で注目の省エネ建材 もうひとつご紹介したいのが、毎年11月開催の「エコ・エキスポ・アジア(環境保護関連国際見本市)」です。6回目となった昨年は「グリーン・ビル・ゾーン」という新設のゾーンが登場しました。
 香港政府は「グリーン・ビル・ポリシー」を打ち出して、ビルの省エネ(=グリーン・ビル)に非常に力を入れております。2009年6月には、10億香港ドル(約120億円)を投入してグリーン・ビルを促進していくことを発表しました。これは、断熱材や断熱効果のあるコーティング剤など、ビルの省エネにつながる建材や建築に関するものであれば、助成金を出すというものです。「エコ・エキスポ・アジア」の新ゾーンも、この流れの中で登場したわけです。
 「グリーン・ビル・ポリシー」に向けて2008年に行なわれた調査によると、香港にある約3万棟の商業施設のうち、「グリーン・ビル・ポリシー」の基準を満たしていないビルは約7,000棟あるということでした。香港のビルは40階建てぐらいは普通なので、7,000棟というのは膨大な仕事になります。
 皆さまの中で、省エネ関連の建材を扱っておられる方々は、ぜひこの「エコ・エキスポ・アジア」への出展をご検討になってください。現在の展示内容は、断熱材ひとつをとってみても、まだまだというものが多いです。日本の高品質な製品を出展すれば、間違いなく注目されるでしょう。こちらもご活用いただければと思います。

■展示会をサポートするサービスも充実
 「エコ・エキスポ・アジア」に限らず、本局開催の展示会には日本の展示会よりも多くの国のバイヤーが来場します。中国、東南アジア、欧米へと取引先を拡大するチャンスにもなるかと思います。
 展示会に関連したサービスも充実しております。たとえばプロモーション活動。展示会があるときは必ず、世界の主要都市40カ所にある当局事務所が保有するデータを、オンラインで皆さまにご案内しています。当局のネットワークを使って展示会の宣伝をしたり、展示会ごとに開設されるホームページ内に各出展社が専用ページを設けることも可能です。
 また本局では、各業界別のプロダクト・マガジンも発行しています。各界の最新情報および皆様の広告を掲載した雑誌を、世界40カ所の事務所が、バイヤーの方々やこれまで取引のあったところへ無償で送っています。このように、「展示会」「オンライン・プロモーション」「雑誌」という3本立てで皆さまの商品を広く紹介できるようになっているわけです。

■ビジネス・マッチングで最適なパートナーを
 本局のサービスに「ビジネス・マッチング」というものがあります。これは、香港企業の中から、皆さまの事業ニーズにマッチした取引先を探しだすサービスです。当局独自のデータベースサイトに、サプライヤーやメーカーがアクセスすることで、いろいろな情報を無料で検索することができます。
 「カスタマイズ・ビジネス・マッチング」という有料のサービスもあります。かなりお手頃な手数料で、要望に沿った香港企業の紹介を受けられます。日本企業の場合、建材関連はまだありませんが、飲食関連でいくつかの成功事例があります。
 一例をご紹介すると、2009年、香港でビジネス・マッチング・サービスを利用した飲食関連の商談会を開催し、日本企業15社と香港企業25社が参加しました。
 本局のマッチングサービスは、事前に情報交換をきちんと行い、相手に関心のない企業は初めから紹介しないシステムなので、商談会でも「とりあえず買ってみるかな」といった企業はありません。お互いがそこに座った時点で、商品の値段交渉を始めるという段階にまで持っていくわけです。この商談会でも、2社の日本企業がその場で取引に成功し、その後さらに数社が決めたそうです。この事例からも、きわめて効率的なサービスであることがお分かりいただけると思います。
 展示会への出展とビジネス・マッチングを併せてご利用いただくと、本局もその後のフォローがしやすくなり、成功の可能性が高まります。建材関連の展示会で、貴協会を通じてこのような試みができれば、相乗効果が得られるのではないでしょうか。
 ご紹介したもの以外にも、本局では多様なサービスを提供しています。香港の建材協会や建築士協会とのつながりもありますので、「視察がしたい」「こういう情報がほしい」などのご要望がありましたら、お気軽にお問い合わせいただければと思います。

●香港貿易発展局
 http://www.hktdc.com


「中国への進出のポイントとその留意点」
        〜中国での企業設立、貿易取引〜
 日本貿易振興機構(ジェトロ)
 大阪本部 貿易・投資アドバイザー  竹村 仲生 氏

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■外資系企業が中国の経済成長に大きな影響
 中国の経済は、成長率予測を見ると2010年は10.0%、2011年は9.7%と、非常に良い状態を維持しています。実績面でも、2009年通年のGDP伸び率は8.7%で、中国政府が目標にしていた「8%堅持」を達成しています。2008年11月の経済政策に基づく、全国規模での公共投資が生産を刺激した結果です。
 たとえば、世界一を誇る新車の販売台数(2009年:1,364万台)は、2010年には1,700万台に達する見通しです。一方、2015年には生産過剰になるのではとの予測もあります。
 ジェトロの調べでは、中国の貿易総額2兆2,072億7,000万ドルの1/2以上を、外資系企業が担っています。それだけ中国経済の成長に貢献しているわけです。

■中国における日本企業の業務展開
 中国に進出している日本企業は2009年現在で約3万社あります。2007年は約2万3,000社で、中国の全外資企業の8%を占めていました。最近は、これまで出遅れ気味だった分野への参入も盛んです。
 たとえば、医薬・医療分野では、上海に日本の大手製薬企業の研究所や薬局チェーンが進出しています。中国の医薬品市場は年間20%以上の伸びが期待できると見られ、欧米各国も注目しています。
 自動車、建設機械、空調関連は、中国国内販売の充実を目指しています。日用品、生活用品も、輸出ではなく中国で出店して販売するケースも増えています。背景には、中国の生活レベルが上がり、ゆとりのある都市生活者が増えたことがあります。
 今まで進出が難しかったサービス業でも、国内市場縮小のため海外に販路を求め、中国に進出しています。警備事業、温泉施設、旅行業、婚礼プロデュース業、通信教育などです。また、3.8億人という中国のネット人口(日本の4倍弱)をターゲットに、大手のインターネット通販も中国へ参入しつつあります。

■進出のカギは、長期的ビジョンの設定
 中国市場に進出するには、5年後、10年後のビジョンをしっかり描くことが重要です。農建機関連のK社の場合、2003年に上海に最初の会社を設立後、2010年には無錫にも設立。また、化成品関連のS社の場合は、2002年に常熟と蘇州にまず進出、2010年に湖南省で工場運営会社を設立など、いずれもきわめて計画的に事業を展開していることがわかります。
 建材関連のD社の例では、まず上海に製造会社をつくり日本向けの輸出を行ない、その後、寧波に販売会社を設立して中国国内で販売するという展開を行なっています。建材関連では、他にも多くの企業が中国市場に進出しております。
 中国国内販売成功のためには、まず進出のために周到に準備しておくこと、本社と中国現地での日本人責任者の目的意識を合致させること、日本企業以外の需要を取り込む努力をすること、きめ細かさや信頼を重視する日本流営業販売手法を徹底すること、などがポイントとなるでしょう。

■企業設立には幅広い検討が必要
 中国で企業を設立するには、中国側機関の許認可が必要です。審査のためには、企業化の計画を数値で示した調査書や、営業範囲を示した定款、各種証明書などなど、多種類の書類を準備する必要があります。
 現地法人の設立には、達成すべき明確な目標を策定し、事業化のための調査(Feasibility Study : F/S)を行なわなければなりません。さらに、独資なのか合弁なのか、設立場所をどうするかなども検討します。製造業に必須の工場の建設地、派遣される日本人の生活環境も慎重に選択しなければなりません。
 進出地域を決めるには、「政治・経済指標・政治的安定度」「投資に対する開放策」「税金」「人件費」などの項目を検討します。これにはジェトロの情報が役立つと思います。そして検討データは、企業進出のF/S作成時にも必要となります。
 現地法人(現法)運営にあたり、本社のスタンスは重要です。問題解決能力など、現法の状況をよく見て関与します。本社が過剰に現法管理すると、現地職員のモチベーション低下を招くおそれがあります。
 日本から派遣する担当者には、現法の運営を預かる使命があります。業務遂行能力やリーダーシップ能力をよく見て人選し、現法での地位を明確にします。担当者は、中国の歴史、文化、慣習、言葉を理解した上で、本社の理念やビジョンを現法社員に伝達する必要があります。彼らと積極的に交流して連帯感を醸成し、自主性を持たせなければなりません。今や中国における有能な人材は、低賃金では望めないからです。
 中国における法人設立には、準拠すべき法律・通達があり、独資企業と合弁企業で異なります。思わぬことが違法になる場合もあるので、中央政府・地方政府の法律や通達には常に注意を払いましょう。

■製品販売に欠かせない貿易実務の知識
 市場進出には、貿易実務も重要です。海外進出は、貿易取引(輸出入取引)、販売提携などを経て現地法人設立へと、段階を踏んだほうが首尾よく行くようです。したがって、初期の段階で貿易実務の知識、ノウハウを蓄積しておくことがとても大切なのです。
 たとえば、中国の展示会に出展して、中国企業から引き合いがあった時どう対応するかは、貿易実務に関わってきます。したがって、商品展示だけでなく、貿易取引を見越した準備が必要となります。具体的には、製品に関する必要条項を記載した物品売買契約書を、会社の標準的なフォームとして作っておくべきでしょう。そのためには、当初から貿易業務部門を設置し、社内体制も構築しておく必要があります。
 本日お話した内容が、今後皆さまの会社が中国進出される際の参考になれば幸いです。

●日本貿易振興機構(ジェトロ)
 http://www.jetro.go.jp/indexj.html

 
 
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