2007けんざい
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  第18回 “サスティナブル建築 PART-T” 光触媒の最新技術

*機関誌「けんざい」掲載分です。ホームページ用に再編集しておりませんのでご了承ください
  
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「光触媒産業の最新動向」〜光触媒工業会の役割〜
 光触媒工業会 副会長
 松下電工(株) 先行技術開発研究所
 機能材料研究室 室長 濱 孝一 氏
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光触媒とは
 まず光触媒の原理からお話させていただきます。光触媒といいますと、産業界で用いられているのはほぼ酸化チタンです。光触媒のメカニズムは、一般的に380nm(ナノメートル)から400nm以下の光があたると電荷分離をおこしh+(ホール・正孔)とe-(エレクトロン・電子)を生成し、h+側では水酸ラジカルを、e-側では活性酸素種を発現し対象物を酸化分解していくというもの。ただしこのメカニズムは負荷量と得られる光の量のバランスにより効果が発現します。光の量に比べて負荷量が多いと発生はするが大前提として効果が得られない。光の量が十分でないと分解活性が得られません。光触媒をアプリケーションに用いる際の一番の難しさです。
 光触媒は日本発の技術といわれております。酸化チタン上での光化学反応発見の歴史は、一番古いのが1972年に発見され世界的にも有名な「本多・藤島効果」です。酸化チタン電極と白金電極に光をあてると酸化チタン電極から酸素、白金電極から水素が発生するという、いわゆる「水の光分解」の発見です。
 次に現在の光触媒ブームの発端となったのが1992年の「薄膜光触媒」の発見です。それまで光触媒は水素、酸素などのエネルギーをつくるものとして研究されてきましたが、1992年に方向転換されました。
 もともと有機物を分解する効果は分かっていたのですが、それを生活空間にある対象物、負荷量の小さな対象に用いれば、非常に弱い光でも(例えば量の少ないガス成分などを)分解できるのではと考え、酸化チタンを薄膜状にすることで反応面積をたくさんとり、いろいろなガスを分解してみる発想が今の流れをつくりました。
 もう一つの大きな方向転換が1997年、東大の橋本・藤島教授とTOTO機器の渡部氏の三人による「光誘親水性反応」の発見です。水滴の付着した酸化チタンに光があたると表面が超親水性になります。普通、表面に水をたらすと表面エネルギーの関係で水滴がこんもりとした形状になり接触角(水滴の表面の角度)が30〜40度になりますが、そこに光があたると水滴が広がり、接触角が5度から0度近くになります。この現象を「超親水性」と呼びます。
 この2つのメカニズムと、対象物を希薄なものにするという考え方の二つの流れが現在の光触媒技術の発展につながっているのです。
建築材料としての光触媒
 建築材料に使われている光触媒技術は、おもに親水性を利用した汚れの付着防止です。例えばガラスなどの表面を水滴が広がることで汚れや曇りを防ぎます。光触媒コーティングのない表面は水が汚れを避けるようにして流れ落ちていきますが、光触媒コーティングがあると水となじみの良い新水基(-OH)で被われることで完全に汚れの下に水が入り込み汚れを持って落ちていきます。光触媒によるセルフクリーニング効果です。
 光触媒を利用した建築材料の中から主な二つ、光触媒化粉チタン・光触媒酸化チタンコーティング剤を紹介します。
 光触媒酸化チタンの粉は従来、白色顔料として使われていましたが、現在の光触媒酸化チタン粉は従来と比較して粒子形状が非常に細かくなっています。光触媒活性を高くするには反応物との接触面積が多いのが望ましいため、酸化チタンの粒子が小さい数十ナノメーターの細かいものが用いられることが多いようです。
 光触媒酸化チタンコーティング剤のポイントは、基材を保護するコーティング剤です。酸化チタンを基材に直接塗ると有機物(プラスチックなど)なら何でも酸化分解し、基材まで劣化させしてしまうので、コーティング剤が必要なのです。
ただ基材には密着しなければならないし、上の酸化チタン層からは基材を守らなければならない。販売の際、表面に酸化チタンを含んだコーティング剤と基材保護のコーティング剤がセットになっている場合が多いのはこの理由からです。だから今、保護コーティング技術の開発が重要になっています。
光触媒製品の応用分野と市場の将来展望
 光触媒製品の応用分野は非常に幅広く、大きくわけて防汚・脱臭・防曇・抗菌・浄水・大気浄化の6つがあります。
日本市場における光触媒関連市場の分野ごとの実績は2004年度、外装材料分野48%内装材料分野17%道路資材分野3%、合わせて60%を超えています。1999年度時点の予想では、空気清浄機・冷蔵庫などの脱臭関連分野と下水処理・排水処理などの水処理分野が市場の大半となるだろう、とされていましたが、実際には建築分野が大半を占めています。
 希望的観測も含めてですが国内市場において光触媒市場拡大の気運は高まっています。そこで現状としての日本市場の有利な点を考察すると
1. 日本で発見されたオリジナル技術
2. 研究者の数が多く成果も最先端
3. さまざまな角度から上市されている製品が多い
4. テレビ・マスコミにより消費者の認知度が高い
5. 日本の民族性は欧米に比べ清潔・健康指向が非常に高い
などが提示できますが、もちろん光触媒業界にも問題点はあります。業界を事業体で分類すると、@粉体・分散体:酸化チタン、スラリーなど一次原料を扱う事業体、A工業原材料・塗料(コート材):塗料、担持体など二次原料を扱う事業体、B工業製品:道路の防音壁、空気清浄機など工業製品を扱う事業体、C現場コ−ティング:塗料を現場で実際に使用する事業体の大きく4つの事業体に分けることができます。
 この中で特に混乱を招いているのが現場コーティング事業です。そこで現場コーティング事業の現状について詳しくお話させていただきたいと思います。
 対象製品(基材)の幅が広く、取り扱いも塗るだけで容易なために市場参入しやすいのがこの業界ですが、結果“まがい物”を販売、使用する業者も出てきています。全く日のあたらない雨の降らない場所に使用し、セルフクリーニング効果があるといって販売する業者もいるそうです。当然ユーザー側から「この製品は効果がないのでは」といったクレームが増えています。
 そこで光触媒工業会では製品を正しく選んでもらうための対処方法として次の4つを実践していこうとしています。
1. 試験法(JIS→ISO)を定める
2. 製品規格(業界規格)に時間を費やしてでもしっかりとしたものに
3. 各種表示(業界ガイドライン)を定め正しい使用方法を提示
4. テレビ・マスコミにより消費者の認知度が高い
次に標準化の必要性を整理しますと
1. 光触媒性能の確認・比較を進める
2. 浄化材料の高性能化・開発促進
3. 効果のない・ユーザーメリットの低いものを排除することで消費者保護をしていく
4. 光触媒製品の導入・普及促進
5. 新たな環境産業の創出につながる動きをしていく
6. 国際規格:我が国発の産業技術の優位性の確立
これら6点の実現のために経済産業省を中心に光触媒標準化委員会を発足し、2003年6月から今年3月まで活動して参りました。結果、抗かび以外は実現案のほとんどを達成することができました。
今年4月に光触媒工業会設立
 光触媒工業会は2006年4月1日に発足し、光触媒製品フォーラムと新規会員が加わりました。光触媒製品技術協議
会も今年9月をめどに合併し、オールジャパン体制で進んでいく団体として新たな光触媒工業会を設立します。
 発足の理由は、光触媒技術の応用と拡大と認知活動を通じ製品の普及を図り、技術の向上と高品質な製品の供給により、健全な市場形成を促し、結果、関連産業の発展および国民生活の向上になるだろうと考えたからです。
光触媒標工業会は5つの委員会からなっております。
1. 標準化委員会:試験方法の標準化活動(JIS、ISO)の促進と製品規格化活動など
2. 規格運営委員会:製品認証表示・運用規定の策定および管理、フォローなど
3. マーケティング委員会:市場普及状況や技術動向調査、展示会開催など
4. 技術委員会:アカデミックな視点から技術講演会や研究会を実施、技術調査と課題の整理など
5. 国際委員会:海外団体との関連委員会、諸団体との交流及び協力など
 海外でも標準化団体の活動が盛んです。事業体で区分すると欧州が日本と同じ基礎研究実施型になり、アジアがキャッチアップ開発型となります。技術の輸入型は今のところ見受けられません。
 欧州では日本の光触媒研究者との交流が活発で、基礎研究が終了段階にあります。今後は欧州企業が応用研究、製品研究中心の段階に入っていくとみられます。日本の対応策としては、知財の確保による技術、製品の保護をしていく方法が考えられます。
 アジアでは特に中国、韓国、台湾の活動が活発で、既に産・官・学連係の光触媒関連団体も存在し、認知度も高まりつつあります。地元企業による光触媒製品の上市も始まり今後、急速に大きく広がる可能性が高いと思われます。日本としては、特許法が通用するのかが疑わしいためシェアを抑え基礎販売力のスピードアップを図るなどの対策が求められています。
 光触媒製品には、「環境」「安全性」「省エネ」「快適性」の面で優れている、強力な分解力と超親水性との優れた性能を有するため環境ホルモンに対しても有効、建物冷房負荷軽減にも寄与できる可能性があるなどの技術的特徴があります。
 一方これからの課題点としては、紫外線が必要で可視光応答型は開発中、表面での作用なので水中の効果的応用には工夫が必要である、分解反応速度には限界があり効果的な応用分野を選定する必要などに迫られています。
 また新規アプリケーションの開発も望まれており、現在の産業分野の中でもニーズの高い分野へ適用できる省エネ技術への展開、光触媒性能からスタートしたエネルギー製品は未だになく、それの開発(水の完全分解から水素と酸素をつくる)、光触媒を使った既存のアプリケーション改善技術(農業分野への応用、生鮮食品の鮮度保存)など大きな事業として発展する可能性が期待されています。
 光触媒をより普及させるための条件といたしまして
1. メリットの定量化:価格上昇と得られる経済的効果、抗菌性能と得られる効果など定量化をする
2. 一般消費者の効果把握の容易化:新しい技術で消費者になじみが少なく効果が眼で見て把握しにくい点(セルフクリーニング効果など効果が確認できるまでに3ヵ月はかかる)の改善
3. キラーアプリケーションの開発:光触媒の技術そのものが人々の需要をかきたて市場拡大に重要な役割を果たす応用先がまだない
4. 気候・風土・生活習慣・国民性を考慮した商品展開:雨の少ない地域、太陽光の少ない地域、エアコンの必要性、抗菌に対する国民性などニーズごとに対応した多彩な商品展開
5. 使用環境の制限除去:紫外線の少ない環境、微弱可視光などに対応できる技術開発の必要
6. 水質浄化技術の開発:未だ商品化されていない工業製品としての比較的高額な商品への展開の可能性
 などが待望されます。
 最後に、これらの光触媒産業界の動向を踏まえたうえで、どんな最新製品があるか、光触媒がいかに発展していくか、皆様にワールドワイドに見ていただく機会を設けようということで、光触媒工業会のメンバーからなる国際光触媒展実行委員会が実施する「国際光触媒展2006」が、10月2日から東京ビッグサイトで開催されますことをお知らせして私の講演を終わらせていただきたいと思います。

「光触媒を利用した防汚外装建材パネル」
 JFE建材(株) 商品研究所
 要素技術室 主任研究員  切通 哲 氏
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外壁に求められる機能
 私どもがなぜ、外壁に求められる機能として光触媒機能を付加価値として考えているのかをお話させていただきます。
 建物は構造と用途により外壁も変わってまいります。構造につきましてはSRC造・RC造・S造の3つに、用途は事務所・店鋪・工場・倉庫・学校・病院などに分けられます。次に構造・用途に合わせたデザイン:色調・表面テクスチャー、大きな比重を持つコスト、機能が加わり材料が選定されます。
 機能の内容について考えますと、基本的な防水性・防火性に加えて求められるのが耐久性・遮音性・断熱性・耐湿性・下地追従性などです。そして都市部における建物の汚れが目立つということで、耐汚染機能への欲求が昨今高まっております。この高まりは、いかに低コストで企業イメージや資産価値のための美観維持ができるかを重視するユーザーの増加に由来するものと考えられます。
 汚れの原因因子を分析しますと、浮遊粉塵・降雨・酸性ガス・苔・カビ・それらの複合物などに加え、特に都市部では車の排気ガス・タイヤのかすといった油性のものがあり、建築地域にもよりますが終工して半年で壁面に筋汚れが着くこともあるようです。以前セルフクリーニングと呼ばれていた、あえて人為的に表面劣化を起こすことで表面に溝をつくり雨で汚れを洗い流す方法は耐久性の面で問題がありました。
 現在は塗料メーカーの努力で耐候性を備えた低汚染性塗料が開発、上市され解決されつつあります。
 防汚というキーワードを考えますと、汚染による負荷を低減するのが最も有効であるといわれております。方法としては壁面ディテールの設計・施工の工夫、建物の場所・使用箇所の工夫・汚れづらいデザインに設計・施工するなどがあげられますが、具体的には庇の出を大きくしたり、吹き溜まりを少なくしたり、汚れないデザインにする方法が考えられます。
 また仕上げ材料の選定、開発も重要です。汚染に有効な材料特性は超親水性材料が良いのか、超撥水性材料が良いのか、ということで意見の別れるところですが、私どもではコストパフォーマンスと市場ニーズを考慮して光触媒による超親水性を採用し防汚外装建材パネルを開発するに至ったのであります。
 JEF建材では金属焼付塗装パネルといたしまして1.「リバービューロンF」:耐久性に優れたフッ素樹脂塗装2.「リバービューロンCX」:有機と無機のハイブリッドの無機質系塗装3.「リバービューロンPX」:重防食塗装ステンレスの3つを提供させていただいております。
 さらに光触媒を利用した塗装鋼板製外装パネル「リバービューロン・セルフクリア」を今から5年ほど前に上市いたしました。この商品は光触媒の性質の中でもおもに超親水性を利用しています。3層構造の厚膜、高温焼付で高耐久性であり、セルフクリーニング効果を持ったパネルです。汚れを気にせずに安心して白色、淡色を採用していただくことができます。また有機物の分解機能を持ち、結果、環境汚染防止にも貢献します。外装建材(塗装)の性能比較の実験結果を検証しても見劣りする要素はございませんでした。
 製造工程は、鋼板は亜鉛メッキ、アルミ鋼板、ステンレス鋼板の3つからお客さまのご要望に応じて選んでいただき、次に前処理(化成処理)、下塗りになるエポキシの粉体を塗装、上塗りとなる無機系のシリカ系塗料でバリア膜づくりをしたあと、光触媒の吹き付け、そして焼付けの順番の3コート3ベイク工程です。
 私どもJFE建材の他の光触媒製品では、建築用建材がホーロー鋼板製外壁パネル「リバーホーロー」(汚れ防止)・ホーロー鋼板製内装パネル「ケイフレックス」(抗菌、消臭)、土木用建材が金属遮音壁(大気浄化、防汚)・ポリカ、アクリル透光遮音壁(汚れ防止)があります。
 今後のわれわれの製品課題は、既存製品のコストダウンのために製造方法・材料を見直すことです。
 施主様の中に光触媒製品による環境汚染の防止に理解を示して下さるかたも多いので、わが社もできるだけお安く提供したいのですが、付加価値に見合った価格を付けておりますし、営利が基本なのでそうもいきません。しかし何とかお安く高品質なものを提供できるよう努力していきたいです。
 次に用途の拡大と展開です。再度、光触媒の有益な機能を見直し、お客さまの生きた声を反映させ用途の幅広い展開、商品化を図りたい。またヒートアイランドに有効な放熱部材への効果的な手法と改良を進めていきたいです。光触媒から少し離れますが、光触媒といえば酸化チタンですが新防汚技術も検討し、それ以外の親水性材料も模索することで、ひいてはサスティナブル建築につながるのではと考えております。
 最後になりますが、今回の講演会のタイトルでもあるサスティナブル建築の意味をふまえ、光触媒を活用し、未来環境、社会、経済の成長に寄与できる製品づくりができたらと思っております。

「内装材(窓・床・壁)における、光触媒製品について」
 アスワン(株) 商品本部
  マーチャンダイザー 湯浅 肇 氏
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インテリア業界での商品化の現状
 私どもアスワン株式会社はカーテンやカーペット、壁紙を提供させていただいているブランドメーカーで、インテリア業界としては早くから内装に光触媒を用いてきました。
 インテリア業界では5年前の2001年から、カーテン・ブラインド・壁紙・カーペットなどに光触媒を用いて室内環境の浄化を目的とした製品が開発されています。課題となってきたのは、光触媒のメカニズムに必要とされる紫外線が内装材にどこまで届くのか、という点でした。
 内装材のインテリアで利用される光触媒の効果とは、シックハウス対応のVOC低減効果、カーテンに付くタバコ・ペットの不快な悪臭をとる消臭効果、トイレの抗菌効果、壁紙を中心としたセルフクリーニング効果などがあります。
 インテリア製品に光触媒を応用するための課題で、特に問題になるのが、ブラインドを除く製品の基材となっている有機素材の劣化防止に加えて、ファブリックスの特徴を残すことです。カーテン・カーペットなどの繊維(ファブリックス)製品、特にカーテンにあてはまりますが、洗濯堅牢度の確保が特に困難でした。クリーニングなどに対するカーペットの磨耗耐久性の確保も同様です。壁紙に関しましては、リーズナブルな光触媒加工コストの設計と、製法・素材からくる問題の克服のためマイクロカプセル発泡剤の使用や可塑剤を使わない設計としました。
部屋の中の汚れを光触媒で解決
 部屋の中にはホルムアルデヒドなどのVOC、ペットの不快臭、タバコの臭気・ヤニ汚れ、日常の生活臭・生ごみ臭、菌類などでいっぱいです。光触媒は、紫外線により有機物を分解してしまうため、カーテン・カーペットの生地や壁紙の基材も分解します。私どもアスワンは生地や基材を分解しない工夫をすることで「スーパーチタンデオ」・「スーパーチタン」を開発し、実用化を可能にしました。世界特許レベルの技術であると自負しております。
 昭和電工(株)と共同開発した光触媒チタンを使用したカーテン・カーペット「スーパーチタンデオ」は、光によって分解されない無機物と光触媒とを複合して、繊維・布と光触
媒が直接接触することを防ぐ加工や形状で、VOCの低減や消臭・抗菌効果を発揮します。開発段階で非常に時間をかけたのが、被覆体と酸化チタンの接着剤の役割を果たすウレタン系のバインダー使用による洗濯堅牢度の確保でした。
 大塚化学(株)・日華化学(株)・アスワン(株)の3社共同で開発した光触媒壁紙「スーパーチタン」では、柱のような形状の特殊な酸化チタンを利用し、壁紙表面に均一なコーティング層をつくることができました。結果、壁紙の表面につく、タバコのヤニのセルフクリーニングや抗菌に十分な効果を発揮します。また室内の蛍光灯の微弱な光でも分解効果を発揮するといった満足なデータも得ることができました。
 多様なライフスタイルにより、蛍光灯以外にダウンライトなどの白熱灯の温かみのある柔らかな明かりが使われることが多くなり、家庭用窓ガラスにも紫外線カットタイプのものが増えるなど室内の環境も変化しています。
 紫外線の少ない室内空間では、有効に光触媒を発揮する高活性で安全な可視光型光触媒が求められています。今後製品への応用が進むことによって、市場は拡大すると考えられます。インテリア業界では光触媒が快適空間を実現する機能として、大変注目しており、私どもアスワンでは光触媒機能品をメインの商品として推していく考えでございます。

「外装用光触媒コーティング材について」
 オキツモ(株) 営業開発部
 第2技術開発課 課長 沢野 新吾 氏
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耐熱塗料の開発がベースとなった
 私どもオキツモ株式会社は塗料メーカーですが、外装用建材用塗料メーカーとしては実績がほとんどございません。そこで2000年9月に光触媒技術の先駆者でもある東陶機器株式会社(TOTO)と光触媒塗料の合弁会社JHCC(ジャパンハイドロテクトコーティングス株式会社)を設立して開発した光触媒コーティング材の紹介をさせていただきます。
 光触媒には防汚、脱臭その他いろいろな機能・性能がございます。形状も粉末、コーティング材、成形品と多岐に渡りますが、物に光触媒を付けてその機能を発現させるとなればコーティング材を使用するのが最も簡便な方法であるから、今後、建材・建築分野に光触媒コーティング材の用途が拡がるだろうと期待しております。
 今まで建築の外装塗装といえばフッ素、シリコン、ウレタンなど多様でしたが、時間の経過による外壁の汚れには抗うことができず、どうしても定期的な洗浄の必要が生じていました。そこで光触媒の特性、セルフクリーニングのメリットを生かしメンテナンスの間隔を延ばそうと考えました。
 オキツモは耐熱塗料の製造シェア50%を占め、キッチン周りの鍋、鎌、フライパン、自動車、暖房機器、またロケットが発射される際の台座などの耐熱性が必要な塗料商品を取り扱ってまいりました。光触媒は有機物を分解する特性を持っていますが、耐熱塗料は無機質の塗料技術がおもであるため、光触媒塗料の開発のベースとなり得ました。このことがTOTOとのJHCC設立に繋がっております。
環境負荷のない建材塗開発料を
 そうして商品化されましたのが「水性ハイドロテクトカラーコート」であります。ハイドロテクトは水・水まわりを守る技術
の意味で、親水性がありセルフクリーニング効果もある建材塗料として上市、商品展開しています。昨年開催されました愛知万博でも、人類・地球の持続可能性に貢献するもの、21世紀に相応しい新規性があるもの、世界各地のさまざまな環境で役立つ普遍性のあるもの、以上の審査基準を満たした『愛・地球賞』を受賞いたしました。受賞理由は、従来は溶剤系しかなかった光触媒塗料(カラーコート材)において、水性光触媒塗料を実現したことが新たな発展のための技術として評価されました。ちなみにエコマークも取得しております。
 おもな特徴は、雨によるセルフクリーニング効果と塗膜自体の帯電防止機能を利用した防汚性、空気清浄化・省エネ性を含む環境配慮、15年の促進耐候性試験にも光沢劣化の見られない高耐久性、街並みに調和する(通常の外装材にはないマット調仕上げ)カラーバリエーションなどがあります。
 特徴をもう少し詳しく説明しますと、防汚性の中の防カビ・防藻性のテストでは一般防カビ・防藻塗料以上に防カビ・防藻性能を発揮し、空気浄化機能では、1000m2分の水性ハイドロテクトカラーコートはポプラ16本分の空気浄化能力に匹敵します。ライフサイクルアセスメント(一つの製品の原材料から最後に廃棄されるまでのその製品の全生涯で環境にどんな負担をかけるかを全て洗い出し、数値化したものです)の数値を見ましても環境負荷がなく、逆に環境に良い数値です。
 JHCCでは商品が現場で正しく施工されるように、代理店のほか、登録施工店にも正しい塗りかたなどの商品情報を提供する「水性ハイドロテクトカラーコート現場施工塗料認定システム」を行なっています。ただ現場によっては、種々のケースがあり多少のばらつきが生じる場合があります。そこで開発・販売したのが工場施工用の塗料です。機械による施工ですので、均一な外観、生産性アップ、塗膜品質の向上、コストの削減が可能となり品質の安定に繋がりました。今後、ますます外装用の光触媒塗料に力を入れていこうと思っております。
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