第17回 建材情報交流会”省エネルギー PART-W”−温熱環境
*機関誌「けんざい」掲載分です。ホームページ用に再編集しておりませんのでご了承ください
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「電力会社における省エネルギーへの取り組み」
関西電力(株) 大阪北支店
お客さま室 エンジニアリンググループ
部長 祖川 二郎 氏
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省エネルギーはどんどん厳しく
近年エネルギー消費は非常に伸びています。部門別では運輸部門、民政部門の伸びが著しく、省エネに対する意識が未だに低いと言えます。
京都議定書は1990年比で2012年までに6%のエネルギー消費の削減を謳っていますが、実際には現状で約8%伸びている状態です。つまり8%を削減し、さらに6%削減しなければならないという非常に厳しい状況です。
エネルギー消費増加の原因の1つにエアコン・クーラーなど空調設備の充実があげられます。
世界のCO2排出量も年々伸び、特にアジア、中でも中国の伸び率が著しくなっています。
現在排出量が最も多い国はアメリカで、2位は中国です。中国の今後の発展を考えると、さらに厳しい状況が予想されます。
経済発展の裏返しとして地球が蝕まれているともいえるかもしれません。
IPCC(第3次レポート)の予測では、2100年には現在の平均気温に比べて最高で6度近く上昇するといわれています。
気温の上昇にともなう氷河融解海面上昇による小さな島々の水没、そのほか希少動物の絶滅や熱帯性感染病の蔓延、砂漠化、洪水、病害虫による作物への被害など、あらゆる面で被害がおよぶと想定されています。
こういった状況を何とか改善するため、日本としてはエネルギー消費の6%削減が目標となっているわけです。アメリカにも7%の削減を要請していますが、現状では京都議定書に批准していないので、今後は国際世論でアメリカに働きかけていかなければならないと思います。
国や自治体での対策として温対法や条例の改正があります。今年4月の改正後は、ある一定以上の規模の一般の事業者も削減計画などを国へ提出することが必要となっています。
また、「省エネ法」も改正され、今までは個別だった電気と熱の管理の一体化、さらに運輸部門では一定以上の車を所有している企業に省エネ対策などの提出が課せられることとなりました。
大阪府・京都府・兵庫県でも「地球温暖化の防止に関する条例」と同類の条例が出されています。
事業者にとっては年々締め付けが厳しくなってきていますが、逆に言えばこれくらい厳しくしなければ省エネは図れないということです。
エネルギー供給側としての取り組み「ニューERA戦略」
当社の取り組みは@エネルギー利用の効率化(Efficiency)、A温室効果ガス排出量の削減(Reduction)、B海外での温暖化防止(Activities Abroad)の3点です。
@では新エネルギー導入(風力発電所・太陽光発電所)の促進を行なっています。グリーン電力基金を設立し、啓蒙的な意味も含めて、自治体などの公共的な施設への新エネルギー導入を図ったりしています。
Aでは火力発電所の効率を少しでも上げようと努力しており、徐々に熱効率が上がっています。
また、水力発電所のリフレッシュも並行して行なっています。オーバーホールする際に水車効率を向上させて少しでも多くの電気を取り出せるよう努めています。
CO2の削減という意味で一番大きく貢献しているのはやはり原子力発電所です。美浜の3号機で事故があった2004年度は原子力発電の稼働率が下がり、全発電量における比率が43%でしたが、それ以前は50%以上でした。 原子力発電所はCO2の排出量削減に大きな役割を担っているだけに、そういった意味でも信頼を高める努力をすることはわれわれの責務だと思います。
Bではオーストラリアで植林をしたり、タイの沿岸地域でマングローブの再生を行なっています。タイでマングローブを伐採して養殖したエビは日本へ輸出されているとのことです。
それ以外にも、東南アジアやヨーロッパの火力発電所の改修を検討するなど、取り組んでいます。
お客様にも省エネを提案
電気を利用していただくお客様にも省エネルギーへの意識を高めてもらうためにさまざまな活動をしています。
具体的には受変電設備、空調設備、照明設備、給湯設備などのデータをチェックし、必要に応じて機器の性能診断の測定をするなどして、省エネへの方策を提案しています。
省エネ方策の例としては、空調設備の温度設定の緩和やブラインド・コントロール、室内機の定期的な清掃、高効率空調の採用など、また給湯設備では、省エネルギーに有効なヒートポンプ技術(エコキュート)の利用などを提案させていただいています。
次に照明設備、これは常識ですが使っていない照明を消すとか、そのために電気回路を小分けにするなどの改善を勧めています。
また昼光センサーを設け、昼間日射で十分な照度が取れるときには照明が自動的に消えるようにしたり、照明器具を高効率のものに換え消費電力量を減らすなどの提案もしています。
衛生設備関係では節水シャワーの採用で水道代低減を図るなどの提案をしており、これは給水ポンプの動力削減にも繋がります。
以上のように省エネに適した機器をご紹介する以外にも、今使われている冷凍機などの効率を測定し、メンテナンスを推奨したり買い換えの提案をしています。
最近、認知が広がっているコージェネレーションシステムですが、実運用における総合効率を測定し、これを向上させるための方策をアドバイスさせていただいたりもしています。 以上、省エネルギーに対する活動について述べてきましたが、電力をとりまく状況としては、ここでの省エネ対策活動に代表される環境改善活動に加え、安定したエネルギー供給で、しかも経済的にと、3つの課題(トリレンマ)を同時に解決することが求められており、大変に難しい状況になってきております。
現状を申し上げますと、安定エネルギー供給としては日本の電気信頼度は非常に高く、停電時間や回数がほかの先進国に比べ非常に少ない状況です。経済性につきましてもできる限り経費削減に努め、最近2度の値下げを実現しております。今後ともこの電力をとりまくトリレンマの解決に向けて努力し、これにより、電力自由化の中でも選ばれる企業をめざしていきたいと考えています。
「これからの省エネルギーに役立つ樹脂サッシの断熱性能」
(株)カネカ 住宅資材部エクセルグループ
営業企画チーム課長 一級建築士 高橋 茂信 氏
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開口部は家全体の性能にかかわっている
窓は採光・通風のために欠かせないのみではなく、家の性能に大きく関係するものです。内外装、設備などを考慮しながら窓もスペックを決め家を建てていきますが、実際には「これくらいで良いだろう」と妥協し、結果的に性能の低い家になっているのが現状です。
よくある意見を以下にいくつかあげます。
「冬、窓の結露でカーテンが濡れる、窓が凍り付いてしまう」
窓が結露するのは当然で結露水は後で拭き取ればよいと思いがちです。温暖な地域ではこの程度で済みますが、極寒地ではサッシが凍り付くこともあります。
木造住宅の主要材料である木材に水が発生することによって、耐久性の低下に結びつくこととなります。単なる結露で済まさず、住宅の寿命にも影響するもので非常に怖いものです。
「暖房してもリビングの窓際が寒い」
窓の性能が低く、コールドドラフト(窓面に発生する冷たい下降気流)の影響を受け、開口部が弱点になるのが原因です。そのため寒冷地では、熱損失の大きい開口部周辺に熱を加えるため窓下に暖房機を設置したりします。
「大きな窓をつけると冷暖房の効率が悪くなるのでは」「リビングを吹き抜けにすると、寒くなるのでは」
これらの問題は、開口部を含めた家全体の性能として考えないと、せっかく建てた家が思っていたものと違っていたということになってしまいます。
さらに開口部の重要性について省エネ基準とからめて説明します。各基準における家全体の熱ロス量は、夏・冬ともに新基準(平成4年〜)に比べ、次世代基準(平成11年〜)の方が減少し改善されていますが、逆に開口部から熱が流入・流出する割合は増加します。
これは開口部の性能が他の部位の性能に比べて性能向上が低いことを示しています。
居住する人間の感覚も考慮した輻射も加味すれば、冬期の場合には開口部をはじめ、床・壁・天井面の温度を均一に上げないと暖かく感じくなります。
その開口部のサッシ窓は、窓枠の材質や構造によって性能が異なります。窓枠の素材はその性能面において金属から樹脂(PVC)に変わりつつあり、世界的にもPVCサッシがトレンドで、ドイツ、イギリス、アメリカでは主流となっています。日本では北海道で90%、東北地方で60〜30%、信越地区で20〜10%のサッシ窓に導入されていますが、全体でみると10%以下にすぎません。ほとんどがアルミかアルミ+樹脂に複層ガラス程度が現状で、ガラスも含めた窓全体の性能を上げる必要があります。
当社製品の樹脂サッシ「エクセルウィンド」とアルミ樹脂複合およびアルミ熱遮断構造の3サッシをサーモグラフで見たとき、エクセルウィンド以外のサッシでは窓枠が結露し、それがガラスに及んでいるのがわかります。エクセルウィンドでは結露が見られず、窓枠の違いで窓の性能に差が出ることがわかります。
さらに樹脂サッシの中でも同製品の断面構造は従来の2室構造とちがって、より断熱効果の高い3室構造としています。標準としている12mmの空気層を持つ複層ガラスとこの3室構造による窓枠とで開口部の弱点を解消し、結果的に性能の高い住宅が実現できることになるわけです。
「外断熱の国内外の動向について」
東邦レオ(株)
外断熱事業部 部長 改正 総一郎 氏
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長寿命化、健康、省エネを実現する外断熱
一般的なRC造の建物に施される断熱には無断熱、内断熱、外断熱の3種類があります。日本ではほとんどが躯体の内側に断熱材を施す内断熱、一方海外ではほとんどが外側の外断熱です。外断熱の建物は躯体の外側でエネルギーを遮断します。
外断熱には、夏冬の温度差や風雨から建物を守って劣化を防ぐという長寿命高耐久化の実現、結露を防いで住人をカビ・ダニの被害から守るという「健康住宅」の実現、省エネルギー効果を向上するという「省エネ住宅」の実現―といった有効性があります。
欧米と日本の住宅サイクル年数を比較すると、日本の住宅の寿命がいかに短いかが分かります。日本が30年なのに対してイギリスでは141年です。これは、建物の性能以外にも建物に対する考え方の違いにも起因しており、日本は無駄なことをしていると言えます。内断熱の日本の建物は激しい温度差にさらされ、劣悪な環境にあるのです。そして住宅が人の健康を蝕んでいます。日本の住宅にカビが多く発生するのは結露が原因です。断熱材が室内側にあり、水蒸気を室外に逃がす工夫がされていないと、壁の室内側表面や内部で結露し、カビが発生します。そしてカビを栄養とするダニ類が発生し、アレルギーやアトピーを引き起こしています。
外断熱の建物はなぜ寿命が長いのか。建物躯体は真夏で60℃以上、真冬で0℃以下になり、この温度差による伸縮が建物の劣化につながることから、外断熱を施すことによって伸縮を最小限に抑えることができ、長寿命化がはかれるからです。
すぐ暖まるがすぐ冷める内断熱と比べて、外断熱は人に優しい断熱工法です。高齢者は急激な温度変化により体調が悪化することがあります。外出や就寝で暖房を止めても、ゆっくりと温まって蓄熱した躯体は冷めにくくなります。このコンクリートの蓄熱性のため、冬の寒さにも夏の暑さにも外断熱は有効なのです。
欧米では外断熱が主流、日本も徐々に普及
欧米の例を紹介します。スウェーデンのイエテボリに「外気がマイナス16℃でも暖房なしで室温25℃を維持する」というコンセプトで建てられた木造2階建ての住宅棟があります。壁の厚さは340mmで、壁自体よりも断熱材のほうが厚い構造になっており、日本にはない外断熱住宅です。
また、元穀物サイロからインテリジェントビルに建て替えられた物件では、1930年代の16基のサイロを利用して外側のコンクリートに外断熱を、ガラスの外にもストーンウールで外断熱を施しています。ヨーロッパでは一度つくったものを大切に使います。ドイツでも倉庫を老人ホームにコンバージョンするなど多数の事例があります。
アメリカのアトランタにある5〜60棟を対象にした再開発地区(アトランティックステーション)では99%が湿式外断熱です。ポイントは、外断熱の外壁をどうデザインしていくかでしたが、強化した発泡スチロールでさまざまに意匠が凝らされています。危険の少ない軽い素材で外壁をつくるのはアメリカの建築でよく見られます。また、超高層ビルの例では低層部分を乾式工法で、高層部分を湿式で施工しています。断熱材・外装材・内装材がすでに貼り合わせられてボードになったものを工場からトラックで運んできて、外側に貼っていきます。
日本では北海道をはじめ徐々に外断熱の普及が進んでいます。当社でも関西で数件のプロジェクトが動いています。関東以西では省エネというよりも結露防止が目的の場合が多いようです。
「2重葺き折板(インシュレーション工法)」
(株)淀川製鋼所 建材本部 建材開発グループ
グループリーダー 大隅 康令 氏
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折板の長所生かし、断熱・遮音を付加したIS工法
金属折板屋根には軽い、高耐久性、コストが低い、乾式のため短工期であるという長所があります。一方、断熱性能と音の問題に留意する必要があります。
鋼板には断熱性がありません。また遮音性や吸音性もほかの材質に比べてどうしても劣るので、そのような性能を持った断熱材と組み合わせて使用します。音の面では雨音、鋼板の熱伸縮による音鳴という問題もあります。
金属折板屋根の需要は従来は生産・流通施設が大半でしたが、近年は業務・商業施設でよく採用されるようになっています。建設費削減のニーズが高まっていることや、二重葺インシュレーション工法を中心とした折板屋根の高性能化が背景になっています。
インシュレーション工法とは、金属折板屋根の長所(軽量・ローコスト・短工期など)はそのままで、断熱性、遮音性などを付加した工法です。
インシュレーション工法の断熱性能は、日本建築総合試験所で熱貫流試験による性能確認をしました。各種工法との断熱性能比較(熱貫流抵抗値:数値が高いほど性能に優れる)はグラフの通りです。スラブ屋根と比較すると同工法はスラブ外断熱25mmと50mmの中間程度、折板シングルと比べると8倍の断熱性能があります。
需要の拡大で音鳴り問題が顕在化
高性能でコストパフォーマンスに優れたインシュレーション工法ですが、需要の拡大とともに熱伸縮にともなう音鳴り現象が問題になってきました。
日射や気温の変動によって折板の表面温度も変化し、夏季の直射日光では80℃まで上昇する場合もあります。折板の形状と日射方向の関係で、屋根全体の表面温度は不均一に変動します。温度変化にともない折板は伸縮しますが、金具で拘束されているため弱い部分にさまざまな動きや応力が発生する結果、音が鳴るのです。
ハゼ折板の場合、接合部分である大ハゼと小ハゼの「ギシギシ」という小さい摩擦音がしますが、上折板が伸びてハゼと吊子がずれて発生する音は「ドーン」「ガーン」というびっくりするような衝撃音になることがあります。また、鋼板に歪みがあるとき、よく熱湯を流した流し台が発するような「ポコン」という音がするときもあります。
この音鳴りは、従来金属折板を採用していた生産・流通施設では内部騒音があるためあまり問題視されていませんでしたが、商業施設などにも採用されるようになってからよく気にされるようになってきました。完全に解消するのは難しいですが、低減できるように各メーカーが工夫しています。
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