2007けんざい
社団法人日本建築材料協会
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建材情報交流会ニュース
  第14回「建材情報交流会」”音の環境”−遮音について−

*機関誌「けんざい」掲載分です。ホームページ用に再編集しておりませんのでご了承ください
  
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「生活騒音とその対策」
 (財)日本建築総合試験所 環境試験室
 専門役 和木 孝男 氏
資料はこちら(PDFデータ)
ピアノ事件で顕在化、生活騒音が社会問題に
生活騒音が社会問題化しはじめたのは、1974年神奈川県平塚市でピアノ殺人事件が発生してからです。鉄筋コンクリート造の県営住宅で、ピアノの音がうるさいと腹を立てた階下の住人が母子3人を殺害しました。
生活騒音とは、生活を営むうえで発生し、他の住戸で気になる音のことです。
騒音は音の伝わり方によって、空気を伝わる空気伝播音と固体を伝わる固体伝播音に分けられます。また、生活騒音の主原因として、遮音の不備によるものと住まい方によるものとがあります。
生活行為に伴う騒音には人間の声、足音や飛び跳ね音など人間の移動で生じる騒音、建具家具の動きによる騒音、入浴やトイレなど個人行為による騒音、家事による騒音があります。
実例をあげると、アルミサッシを閉める音が約54dB(A)、スチール製の玄関ドアを強く閉めると81dB(A)です。そのほかエアコン、冷蔵庫、洗濯機、掃除機、プリンタなど設備器具が出す騒音、楽器、テレビ、ステレオ、電話、風鈴なども騒音になります。例えばジェットバスなども騒音になるし、エアコンは室外機からコンクリートの壁や床を伝わって他住戸に音が響くのでよく問題になります。ピアノ音は空気伝播音と固体伝播音(ピアノの足を伝わって床からひびく)の2つが複合された騒音になります。
雨音や風切音といった自然現象も騒音です。マンションの階段室用ルーバーやベランダの手すりに風があたって生じる風切音はかなりうるさいものです。やっかいなのがペットで、飼い主にとってはかわいいのですが周りには騒音でしかありません。
生活騒音による被害の2大要素は「睡眠の妨げ」と「精神的イライラ」です。めまい、頭痛、肩こりなどの症状も引き起こします。被害感が大きいとされているのが子どもの飛び跳ね音・物を落とす音と車・オートバイの空ぶかし音です。前者には加害感(うるさくて悪いという感覚)があるのですが、空ぶかしなどは加害感が少なく、被害感しか生まないので問題が起こりやすいという特徴があります。
生活騒音トラブルは未然に防ぐ
生活騒音対策は困難な場合が多いものです。技術的に難しく、コストも割高なうえに、工事で居住者は一時的に移動せねばならず、新たな騒音や震動も発生するからです。従って生活騒音トラブルは未然に防ぐのがベストなのです。設計段階、施工前になんとか防ぎたいものです。
試験所に持ち込まれた生活騒音の苦情は、訴訟になったものが多くあります。
電車が建物と並行して通るマンションで、窓が遮音性能の低いサッシだったため急行電車が通ると窓の外で75dB(A)、室内で49dB(A)になり、うるさくてテレビの音も聞こえないという苦情で訴訟になりました。このケースは電車の騒音を考慮してもう少しランクが上のサッシを使っていれば苦情は出なかったと思われます。
あるワンルームマンションで話し声が筒抜けだという住人の苦情がありました。界壁をはがしてみるとALCを中心とした壁と床のすき間が8mmも空いていました。天井裏を見ると配線用の貫通孔が全くふさがれず空きっぱなしでした。おまけにこのALCが屋根裏まで到達せずすき間が空いたままで、吹き付けで塞いでいるような状態で、界壁の遮音構造の基準を全く満たしていませんでした。
リフォームに伴う生活騒音苦情の例では、床リフォーム後に騒音がひどくなったと階下の住人から苦情があり、直張り床を重ね張りするなど改善はしたのですが、やはりうるさいということで訴訟が続いています。これは床の構造そのものを変えないとまず解消できないものです。リフォームしてしまった後で応急対策をしても限界があるのです。
このような事例を見ても、生活騒音問題は前もって対処しておかないと対策が困難になってしまうことがよくわかります。
日本板硝子環境アメニティ(株)のデモによる解説
ピアノ騒音の具体例をコンピュータシミュレーションによるデモでお話します。実際のピアノ騒音は約90dB(A)でかなり大きいと言えます。そこで防音対策が必要になります。われわれが提供するのは、クレームの出ない、部屋の中につくる完全な構造の防音室です。遮音天井、遮音壁を組み合わせ、90dB(A)から30dB(A)まで下げることが可能です。実際音を出して、遮音壁でどれくらい聞こえなくなるかを聞いていだだきます。(※コンピュータによるデモ)
見た目重視の安いリフォームは禁物
防音床材の遮音性能は床の構造によって違います。大ざっぱにいうとカーペット張りのL値(床の遮音等級。数値が小さいほど遮音性能が高く、軽量衝撃のLLと重量衝撃のLHがある)はLL-40くらい、ワラ畳はLL-50、直張りの防音床は現在LL-40等級くらいまで性能が向上しています。
最近はリフォーム対象になるマンションが増えていますが、後のことを考えず安易に見栄えだけを考えて表面を遮音性能の悪いフローリングにしてしまうと、騒音問題が生じかねません。
住宅性能表示制度(住宅の品質確保の促進等に関する法律)は2000年4月に施行されました。この法律では性能表示に関する共通ルールの作成、評価に関する信頼性・公平性の確保、住宅に関わる紛争処理体制の整備を目的としています。
まとめ――騒音は未然に、住まい方にも工夫を
生活騒音は建築的対策が難しく、設計・施工段階で未然に防ぐべきです。また、住まい方によって防げるものもありますがやはり限界があるので、日頃のコミュニティの形成による理解が必要です。リフォームによる生活騒音は、管理組合による規約制定と施工業者による適切な防音対策が必要となります。

「遮音壁システムについて」
 吉野石膏(株)
 大阪支店 営業2課長 島崎 潤悦 氏
資料はこちら(PDF資料)
空気層をはさんだ二重壁で遮音効果増大
音の概念には、大小と高低があります。音の大小は波(振幅)が高いほど大きな音となり単位dBで表し、音の高低は波長が長いほど低音となり単位Hzで表します。
部屋の防音には遮音、吸音、防振、制振の4条件全てを考慮します。
壁や窓の材料の遮音性能を表すものを透過損失(TL)といい、単位はdBで表します。音源からの音がその材を隔てて聞いたときにどのくらい音が小さくなったかを示し、材料の質量(面密度)に比例します(質量則)。
遮音壁の構造原理では、単体壁(一枚壁)の透過損失は質量則で決まり、重く、柔らかく、厚いものほど遮音性能は向上します。空気層をはさんで2枚の単体壁を独立して建てる独立二重壁構造では透過損失は各々の壁の透過損失を加算したものになり、大変効果的で経済的で、これが中空間仕切壁の遮音原理です。
石膏ボード間仕切壁遮音性能について説明します。
単体壁は面密度性能が変わりますが、コインシデンス(材料に音波が入射したことによって生じる屈曲波の波長と音波の波長が合致したときに音波と同調し、あたかも何も無いかのごとく透過してしまい、遮音性能が低下する現象)の影響を受けて500Hzをピークとして遮音性能が上がらなくなります。
中空間仕切壁は、空気層をはさむことによって透過損失効果が増大し、さらに面材を重ねることで重量が増して質量則による効果もあがります。中空の大きさによって低音中空共鳴の位置が決まり、石膏ボードを使用する中空間仕切壁の中空を広げると、低音域の透過損失が増します。この場合も2,000Hzあたりで石膏ボードのコインシデンスによる落ち込みは否めません。
共通間柱では、間柱に起因する音の架け橋が発生し、本来の中空壁遮音効果が得られませんので、独立間柱構造や間柱の千鳥配置で対処します。
前述したコインシデンスによる特定周波数帯での透過損失低下現象を避けるために、当社ではA-2000・W1という、下張りに21mmの強化石膏ボード、上張りに9.5mmのスーパーハードという硬質石膏ボードを使用し、厚みも比重も違うボードを合わせる工法を開発しました。下張りが振動する周波数帯では上張り部分で頑張り、上張りが振動する周波数帯で今度は下張りで頑張り、振動が相殺されることによって遮音性能を大きく高めることができるのです。
測定可能な最大値、TLD80を実現
遮音性能にはいくつか表し方があります。実際の建築物の2室間の遮音性能をD値(室間音圧レベル差)、実験室で測定した壁単体の遮音性能(透過損失)TLをDに整合させたのがTLDです。D値は現場での数値ですから、実際設計図書に書かれるのはTLD値で、正しい遮音性能はTLD値を目安にしてください。建築基準法上はTLD40以上でよいのですが当社ではTLD45以上のもののみを遮音壁と位置づけています。最高はTLD80です。現在国内でTL80が測定できる残響室は当社にしかありません。
TLD80の界壁は、主にシネコンの間仕切り等に使われます。どれほど聞こえないかというと、ジェット機が飛び立つときの騒音120dBが、居眠りもできるくらいの40dBに落ちるのです。
そのほか、遮音性能の詳しいしくみや製品の詳細はカタログに記載したホームページをご覧下さい。また、東京の虎ノ門にショールームがあり、本日お目にかけたものよりも大きなサンプルがそろい、音響体験室もあり、騒音の体験ができるようになっています。

「防音床構造について」
 大建工業(株) 内装材事業部 商品開発室 
 音響建材開発課 課長  川井 洋 氏
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騒音の低減には床スラブ+防音床材
 防音床構造とは上階床で発生した床衝撃音を伝わりにくくするための構造で、性能はL値で表します。床衝撃音は固体伝播音で、発生源によって、比較的軽くて固い衝撃音である軽量床衝撃音(LL)と重くて柔らかい衝撃音である重量床衝撃音(LH)に分かれます。
床衝撃音を低減するには建物の構造と防音床材を合わせた対策が必要になります。
代表的なマンション向けの防音床材には直張り、二重床、発泡プラスチック床などがあります。
直張りの特長は、スラブに直接接着施工するため床高さを抑えられる、スラブの重量床衝撃音遮断性能を悪化させないなどです。二重床には、床下空間を配管スペースなどに利用できること、支持脚の高さ調整でバリアフリーに対応できるなどの特長があります。
硬質ウレタンボードで簡単に住宅断熱
一般に住宅の断熱にはいろいろな性能が要求されます。断熱性では低熱伝導率・低熱貫流率、防露性では室内側で非透湿性、屋外側で透湿防水性、また、施工信頼性、保守性、技能の非特殊性なども要求されます。しかし硬質ウレタンボードなら、文句なしの低熱伝導率、低い透湿性、外断熱工法に適したボード形状で、簡単に切れて自由自在に加工できます。ウレタンボードの表面材により断熱性能の劣化は小さく抑えられています。
L値は実験所で算出する性能推定値
床衝撃音の性能を表すL値は、試験所で測定し、現場での床衝撃音レベルを推定して表します。試験所ではまずコンクリートスラブ素版を床衝撃音発生器で叩いて床衝撃音レベルを測定し、次に防音床材施工をして同様に床衝撃音レベルを測定、後者の値から前者の値を引いて防音床材の改善量を算出します。この改善量を現場のコンクリートスラブ素版の推定値(各種建物の平均値)から引き算したものが、現場における床衝撃音レベルの推定値になります。これらの推定値をL等級曲線にあてはめて、LL-45やLH-50などのL値を推定するわけです。
L値はあくまでも実験場という特定の条件下での推定値であり、実際の現場での性能はスラブ厚や梁条件、間取りなどによって違うので、保証値ではありません。
では、製品カタログにも載っている試験所でのL値と、実際の現場での性能値はどの程度の差があるのでしょうか。
試験所での性能推定値がLL-45、LH-50の二重床の現場での性能測定値は、平均でL数はLL-47.5、LH-51.7というデータもあります。
防音床に関する公的規格もあります。住宅金融公庫の高規格住宅割増融資基準は、スラブ厚20cm以上または同等以上の遮音上有効な措置を講じた構造で、仕上げ材は木質フローリングの場合、LL-45程度の遮音性能を持つものとなっています。そのほか都市再生機構の採用基準、住宅性能表示制度の等級設定、JISではJIS A 1440でL値推定の基準となる試験方法を定めています。
業界では、防音直張りフロアのメーカー、副資材メーカー、施工業者で組織する日本防音床材工業会が品質確保のために防音フロアの取り扱いマニュアル、工業会標準施工法や美装作業上の注意を配布したり、施工技術認定などを行なっています。日本乾式遮音二重床工業会という組織もあり、より良い防音床材の開発、啓蒙に尽力しています。
L値は実験所で算出する性能推定値
防音床材は今後、課題として、
1. 現場性能の安定:スラブの大スパン化、多様化(中空スラブや合成スラブなど)、軽量化に対応した防音床構造の設計、納まりなどの影響を受けにくい防音床仕様を検討する。
2. 現場性能と居住性の両立:現場性能の安定化によって床の弾力性が増すと壁際で沈みが生じたり歩行時にやわらかすぎると感じたり、家具がガタつくという悪循環からの脱却。
3. 内装材としてのグレードアップ:表面の樹種、色、寸法などのデザインの多様化や、耐傷性、耐キャスターといった機能性を向上させる。
4. 施工や環境配慮:軽量化、VOC対策、リサイクル資材など施工や環境に配慮した製品づくり。
といったことを焦点に取り組むことになるでしょう。

「自動ドアにおける防音について」
 ナブテスコ(株) ナブコカンパニー
 技術部 石橋 松美 氏
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開閉時の振動を抑えて静かな自動ドア
自動ドアには、閉め忘れがない、荷物があっても出入りが自由、バリアフリー、省エネ、防音・防塵などのメリットがあります。そのなかで今自動ドアに求められていることはスムーズな開閉、低騒音化、安全面の配慮、耐久性や施工性の向上などです。
利便性が高い自動ドアは多様な場で使用されます。例えばビルの玄関出入り口や商店の出入り口ドアとしては一般自動ドアを、マンションの玄関には静音・防振ドアを使用します。空港・高速道路周辺ビルの玄関や病院の手術室、工場のクリーンルームには防音・気密が使用され、また、避難通路にはブレークアウト機能、防火区画の開口部には自閉・耐火構造の自動ドアを使用します。
一般的な自動ドアの発生音は65dB(A)以下基準となっており、実質60dB(A)以下ですので、マンションなどの玄関ドア近隣の発生音はあまり問題にならないのですが、自動ドアのある直上階の住人から開閉音が気になると苦情が出ることがあります。特に寝ているときに開閉音が耳について眠れない、というものです。静かな時の居室暗騒音は30dB程度とされています。原因は、開閉時の建具の振動が天井スラブを経由して居室の空気と共鳴するため、もしくは天井スラブや壁に伝わる振動が骨感振動として人体に伝わるためです。
発生振動を抑えた自動ドア、「サウンドレスドア」は自動ドア駆動部の振動を建具側に伝えない構造で、居室暗騒音30dB(A)以下を達成しています。
設置場所に応じたさまざまな機能・構造
防音・気密性能を持つ自動ドアで、一般ビル玄関に使用する簡易気密用ドア(ロスカドア)は、隙間風を防止して空調効率を向上させるのが目的。強化ガラスドアに縦フレームとシール材を追加しており、約1/36の気密効果、約7dBの遮音効果があります。
基地や空港周辺、高速道路沿いの場所では防音対策工事に補助金が出ます。自動ドアの要求性能として、防衛施設庁発行の「防音工事仕方書」で二級工事が規定されています。この二級工事とは、JIS A 4702「建具の性能」という基準に基づいており、気密性能がA-4(内外圧力差10Pa/m3時、空気の漏れ量2m3h/m3以下)、遮音性能がT-1(音響透過損失25dBライン以上[平均28dB以上])、耐風圧性能がS-5(内外圧力差2,400Pa/m2時、最大変位量1/70以下)となっています。
病院や工場のクリーンルームなどに設置する防音・気密ドアには、ドアパネル構造を採用し、シール材には開口部に特殊植毛構造ゴム、床シールとしてドアボトムを採用して防音・気密性を高めます。
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