弊社では、従来の太陽光発電システムに新しい魅力を与えるために、日常的にはエコロジーでエコノミー、かつ震災時には防災機能を発揮する「省エネ・防災住宅」を発売しました。「エコロジーでエコノミー」は建物の高断熱仕様と省エネ機器で実現し、防災機能は非常時だけでなく、日常でも省エネ性や利便性を発揮できることを考慮しました。
最近は建物自体が壊れることはほとんどなくなってきましたが、ライフラインの途絶などの理由で、震災後は避難所の生活を余儀なくされます。その避難所での生活が問題であり、高齢者や体の不自由な人に十分な配慮がなかったり、車で寝泊まりして体調を崩したりする例が多く見られました。そこで、震災後も自宅での生活が可能になることを考えたのが「省エネ・防災住宅」です。「省エネ・防災住宅」は、生活空間の確保、水・食料の確保、エネルギーの確保という3つの確保を重要なポイントとしています。生活空間の確保とは余震や火災に対する安全確保、家財管理、プライバシーの確保です。水・食料の確保とは飲料水や食品ストックのほか、トイレ洗浄水など生活用水の確保です。エネルギーの確保とは、照明の確保、携帯電話・パソコン・テレビ・ラジオの電源確保による情報源の確保です。このエネルギーの確保のために開発したのが本日のテーマである蓄電池併用太陽光発電システムです。
機器の構成を説明します。電力会社からの電気は通常の分電盤を経て、蓄電池につながったパワーコンディショナーへ入ります。ここから自立用分電盤という別の分電盤につながって、非常時使用可能な機器(照明や非常用コンセント)へと届きます。コンセントは、日常も非常時も使えるコンセントと、非常時は使えないコンセントに分けることによって非常時に使える機器を制限し、電力の消費を軽減しています。
蓄電池の総容量は8.96kWhです。通常は半分の4.48kWhで充放電し、残りの4.48kWhは非常時のために確保しています。日常と同じ生活はできませんが、非常時の最低限の電気は十分確保できる電力量です。蓄電池は現在最も普及している鉛式のものですが、電解液の補充などメンテナンスがほとんど不要の完全密閉型で耐久年数も約10年です。電力会社との契約上、太陽電池で発電した電力のみ逆潮流させ、蓄電した深夜電力は逆潮流しない制御機能をつけています。
システムの概要を説明します。日常は安価な深夜電力を蓄電して昼間に使うことで電気代を軽減し、非常時は昼間に太陽光で発電した電力を蓄電して夜間に利用しようというものです。
日常時、家庭内の電力使用量より太陽光発電量のほうが多いときは、蓄電池を使わず太陽光発電で発電した電気を優先的に使い、余剰分を電力会社に売電します。逆に使用量より太陽光発電量が少ない場合は、太陽電池に加え、蓄電池の電気を使います。それでも足りないときは電力会社から買電します。
夜間は安価な深夜電力を使いながら、蓄電池に充電します。日常の生活では日中に4.48kWhをほぼ使い切ってしまうため、年間2万から2万4,000円のコストメリットが生まれます。
非常時は、蓄電池総容量の8.96kWh全てを使って充放電を行います。日中、太陽光発電で発電した電気を蓄電し、夜間に放電することで1日中電気を使うことが可能です。
曇りや雨の日が続いても最低限の電力量は確保でき、非常時の継続的な生活は可能です。
従来の省エネルギー機器は、導入時のコストアップを何年で償却できるかという考え方が大きな影響力を持ち、普及が進みにくいという問題がありました。そこで、近年、住宅の要素としてニーズが高まっている防災という観点を加え、新しい魅力を付加すれば普及促進に寄与できると考えました。 |