今回はトイレについて、公共施設での障害者の利用に配慮したものと、住宅・福祉施設における高齢者の利用に配慮したもの、二つのテーマで解説します。
ハートビル法、交通バリアフリー法、その他条例、改正などでさまざまな動きがありますが、トイレは公共施設でも住宅でも、現在は建物のバリアフリーを切り口にしたリニューアルが増えています。
まず予備知識として、障害にはどのような種類があり、それがトイレの行為にどう影響を及ぼすのかを述べます。障害は身体障害、知的障害、精神障害に大別され、トイレでは身体障害者への配慮がメインです。
脊髄損傷、脳血管障害などの原因による手足の不自由のため歩けない、衣服の着脱ができない場合、車いすのスペースや手すり、介助者が入れるスペースが必要になります。また、心臓疾患、肝臓疾患など外からは見えないのが内部障害です。数年前からクローズアップされているのが、オストメイト(大腸がん手術で腸を切除したため人口肛門を腹部に装着した人のこと。腹部に穴を開け便をパウチにためる)に配慮したものです。専用の汚物流しや湯の出るハンドシャワーなど、オストメイトが安心して利用できるための設備が大きなポイントです。
障害者に配慮したトイレにはこのようにいろんな機能が詰まっていますが、パブリックトイレのポイントは広いこと、器具と位置が使いやすいこと、介助スペースがあることなどがあげられます。
当社では「多目的トイレプラン集」を作成して、空間の幅・奥行きサイズに応じたレイアウトプランを紹介しています。設定する条件に合わせていろんなバージョンを用意できます。大便器ブースにただたくさんの設備を詰め込むのではなく、例えば百貨店の場合、レストラン、子供服、婦人服、それぞれの売り場のフロアに応じてバリエーションを持たせることによって建物全体をバリアフリーにするといった最近の流れを考えたものです。
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次に住宅・福祉施設における高齢者の利用に配慮したトイレについて。
自立・歩行可能な高齢者の場合、最低1,250mm×1,250mmの空間と、手すりと介助スペースを確保します。自立・車いす利用の高齢者の場合は、移乗のための縦手すり、長時間楽に使用できる肘掛付背もたれ、車いす用として1,000mmのスペースが必要になります。また、自立ではなく何らかの介助が必要な人の場合、立ち座りが難しいため洗面台での手洗いが困難になり、手を伸ばし、肘を乗せて洗える大型の洗面台が必要であり、介助者が余裕を持って動けるよう最低1,800mmの奥行きも確保します。このように、高齢者の身体状況によってトイレ内の大きさも変わります。
これまではパブリックにせよ高齢者福祉施設にせよ、手すりをつけて車いすが入ればよいという考え方でしたが、身体状況を細分化し、どんな人にでも対応できる細かい配慮を盛り込んだトイレがこれからの流れになると思います。
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