2007けんざい
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けんざい248号掲載




同志社大学のシンボル、クラーク記念館

同志社大学 今出川校地
 
同志社英学校が寺町今出川から移転した1876(明治9)年以来、140年の歴史と伝統を今に伝える校舎群。ここは、室町時代には、三代将軍足利義満が開基した相国寺塔頭(鹿苑院)、江戸時代幕末には薩摩藩相国寺二本松藩邸があった地です。明治時代以降に同志社がこの場所を受け継ぎ、今では煉瓦造の重要文化財が軒を連ねる歴史的景観を見ることができます。

「けんざい」編集部



異国情緒が京都のまちなみに溶け込む
 鴨川河畔にほど近い今出川周辺をぶらり歩きすると、まちなみの中でひときわ存在感を放つ赤煉瓦の建物群が見えてきます。北側の相国寺、南側の京都御所に挟まれて建つ、同志社大学今出川校地。キャンパス内には伝統的な近代建築物が多数現存し、うち5棟は国の重要文化財に指定されています。
 同志社は1875(明治8)年、新島襄(1843-1890)によって創立された同志社英学校が始まりで、140年の歴史を持っています。異国情緒あふれるキリスト教の校舎群ですから、創建当初はさぞかし異様な風景だったことでしょう。同大学広報部広報課課長・植村巧さんが、重要文化財5棟を中心にご案内くださいました。
 「相国寺は京都五山の一つといわれ、鹿苑寺(金閣寺)と慈照寺(銀閣寺)を山外塔頭(さんがいたっちゅう)とする禅寺で、御所は言わずと知れたかつての天皇家の拠点。そのど真ん中にキリスト教の同志社が建つわけですから、当時は物議を醸したようです。しかし英語教育の重要性が高まるにつれ同志社の教育価値が次第に認められ、また地域に開かれた学校を目指してきた努力のかいもあって、今ではすっかり京都の街並みに溶け込んだ、地域住民の方々に親しまれる存在となっています」。

端正で重厚、歴史の重みにふさわしい煉瓦建築
 烏丸通に面した西門を入ってすぐ左手に見えるのが、最も古い「彰栄館」。1884(明治17)年竣工で、現存する京都市内の煉瓦建築物としても最古です。宣教師で、同志社教員でもあったアメリカン・ボード(米国海外伝道協会)のD.C.グリーンが設計、外観は洋風(アメリカン・ゴシック)ですが内部の間仕切壁や小屋組など、構造は純和風とのこと。
 1886(明治19)年に建てられた礼拝堂(チャペル)は、プロテスタントでは日本最古の煉瓦造チャペルです(D.C.グリーン設計)。急勾配の切妻屋根が端正なシルエットを見せ、正面中央のバラ窓、左右のアーチ窓、尖りアーチの入口を持つデザインがゴシック建築の特徴を際立たせています。外観の印象以上の広さと高さに驚かされた内部は、シンプルなステンドグラスが幻想的な光のアートを各所に投影していました。現在は礼拝のほか、さまざまなテーマの講演会、卒業生の結婚式などに活用されています。
 鮮やかな赤煉瓦の時を経た美しさにはっとさせられます。「書籍館(しょじゃくかん)」と呼ばれた最初の図書館は、その役目を終えたとき「有終館」と名付けられました。1887(明治20)年の竣工当初は日本最大の学校図書館でした(D.C.グリーン設計)。昭和初期、火事で内部を焼失してしまいましたが、煉瓦壁の内側を鉄筋コンクリート壁で補強し、改修されたそうです。歴史を重ねた煉瓦のゆかしい表情にしばし見とれてしまいました。
 同志社で理化学教育機関を立ち上げたいという新島襄の強い意向で1890(明治23)年に建てられたのが「ハリス理化学館」(A.N.ハンセル設計)。アメリカの実業家J.N.ハリスの寄付で建設が実現しました。イギリス積みの煉瓦建築で、かつては屋上に八角形の天文台がありましたが、現在では天文台に通じる階段だけが残されています。
 同志社大学のシンボルとして最も印象深い建物はやはり、1893(明治26)年竣工のクラーク記念館でしょう。1890(明治23)年に死去した新島襄の名を冠した神学館を建設しようと募金活動が始まりましたが、お金がなかなか集まらず、あわや計画頓挫かと思われました。そこへアメリカのB.W.クラーク夫妻から「夭逝した息子のメモリアルホールにしてほしい」と寄付がなされたのでした。同志社5番目の煉瓦建築です。
 ドイツ人リヒャルト・ゼールによるネオ・ゴシック様式の重厚な建物は、空を貫くような尖塔が特徴的。長らく神学教育や研究機関として使われてきましたが、老朽化のため2003(平成15)年から5年をかけて大修復工事が行われ、美しくよみがえりました。クラーク記念館にもチャペルがあります。かつては、教室不足を補うために二つの部屋に仕切られていたのですが、修復を機にもとの広々とした礼拝堂の姿を取り戻したとのことです。






クラーク記念館内「クラーク・チャペル」

礼拝堂(チャペル)

最初の図書館となった有終館






地域に開かれたキャンパスは誰でも出入り自由
 「キャンパスはいつもオープンなので、誰でも出入り自由です。建物内へは入れませんが、随時キャンパスツアーを実施していますし、チャペルなら昼間のチャペルアワーに入ることができます。ゆったりした環境なので散策に最適ですよ。ぜひキャンパスの雰囲気を味わってください」と植村さん。
 歴史、伝統に支えられ、高い教育レベルを持ち、しかもカッコよく、洒落た校舎が並び立つ。こんなキャンパスで学生時代を送れたら……! といやが上にも向学心をかき立てられてしまう、魅力的なたたずまいでした。春の日ざしに誘われて、足を運んでみては?

 

 



ハリス理化学館

最も古い校舎彰栄館

お話をうかがった植村さん


 

 



同志社大学
 今出川校地/

所在地:京都市上京区今出川通烏丸東入
TEL:075-251-3120(代表・広報課)
URL: http://www.doshisha.ac.jp/information/campus/imadegawa/overview.html


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