2007けんざい
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けんざい246号掲載





平等院鳳凰堂
 
同今年9月、2年をかけた平等院鳳凰堂の修復が完了しました。華やかだった藤原摂関時代をしのぶほぼ唯一の遺構として、その存在感を放つ鳳凰堂。池の中島に悠然とたたずみ、極楽の宝池に浮遊する宮殿のように、端正で美しい姿を水面に映しています。約60年ぶりの修復によって、これまでの色彩が一新され、鳳凰堂は創建当初の姿を取り戻しました。丹土の赤色と、輝くばかりの金色が、現代の私たちの目にはとても鮮烈です。

「けんざい」編集部





国宝、世界遺産、10円硬貨ー親しみ深い歴史建築
 鳳凰堂は、平安後期の1053(天喜元)年、時の関白・藤原頼通(道長の長男)によって建立された阿弥陀堂で、10円硬貨にも描かれている貴重な建築です。1951(昭和26)年に国宝に指定され、1994(平成6)年には「古都京都の文化財」の一つとして世界遺産に登録されました。
 関西圏のみならず、全国各地の方々が実際に目にしたことがあると思われますが、これまで私たちの目になじんできた鳳凰堂は、古い木の色をした、侘びた印象の外観をした建物でした。しかし今回の修復によって、創建時の鮮やかな姿を取り戻しました。「平等院ミュージアム鳳翔館」学芸員の田中正流さんに、生まれ変わった鳳凰堂をご案内いただきました。
 修復は、「文化財を現状のまま、可能な限り健全な状態で次世代に引き継ぐ」ことを目的に、京都府の事業として、2012(平成24)年9月から今年の9月まで2年かけて行われました。何しろ平安時代の創建ですから、もちろん今回が初めての修復ではなく、近年では明治や昭和の時代にも大規模な修復がありました。「とりわけ鳳凰堂は、極楽浄土を具現化すべく究極の美しさを求めて造営されたといわれており、屋根の張り出しが大きい、かなり無理のある構造をしているのです。通常の日本の古代建築が150年に一度修理するところを、鳳凰堂は60〜70年くらいで中規模な修理を、120〜130年くらいで大規模な修理が必要なんです」と田中さんは言います。修復方針は、「創建当初の姿を可能な限り忠実に」 今回の修復は約60年ぶり。国宝建造物などの修復は、綿密な調査研究と確実な資料に基づいて行われ、使用できる部材はできる限り再利用し、伝統的建築技法を踏襲しておこなわれます。鳳凰堂の場合は、調査により判明した最も古い時代のものに合わせて修復されることになりました。修復内容は、瓦のふき替え、柱や扉など外観の彩色、鳳凰像など建築装飾の金色復元などです。材料は、瓦関係以外、これまで使われていた材料がそのまま使われています。
 修復にあたっては、現代の技術を駆使した綿密な調査がなされました。今回最も劇的に変化したのは外観の色彩ですが、これは発掘で発見された瓦に付いていた創建時の顔料などをもとに再現されました。「丹土(につち)」という、黄土を焼いて赤色系に整えた酸化鉄系の顔料です。
 「昭和の修復でも赤く塗られたのですが、外観の古い色を重視して柱の下の部分までは赤くしていませんでした。それが今回はすべて赤色になったわけです」。丹土で塗られた柱や扉は、派手派手しい赤ではなく渋く落ち着いた色合いで、鳳凰堂の独特な造形にふさわしい端正な印象となっています。
 もう一つ、見た目の大きな変化といえば、金色に彩色された装飾金具です。鳳凰堂の平安時代の金工品を蛍光X線調査すると、厚い鍍金(金めっき)が施されていることが判明したため、金色彩色されることになりました。



金色の鳳凰像

二巴蓮華文の軒瓦

金色の露盤宝珠






 鳳凰堂のシンボルともいえる一対の鳳凰像と、左右の翼廊の屋根を飾る「露盤宝珠(ろばんほうじゅ)」は、目も覚めるような金色に輝いています。鳳凰像は、頭部に残る穴から、かつて毛が生えていたことが確認されています。そこで今回の修復を機に、鮮やかな毛を持つ模像が復元され、展示施設である鳳翔館に2015(平成27)年1月16日まで展示予定です。
 瓦は創建当初、木製だったことが分かっていますが、その約50年後の修復で、河内向山(現在の大阪府八尾市)で焼かれた特製の瓦によって総瓦葺となりました。今回は、総数約50,000枚のうち平安時代の約1,500枚を含む、再利用できる古瓦以外を全部ふき直しました。また、軒瓦の文様が変わったことも注目されています。修復前は、創建期の平安時代興福寺系瓦が使われていましたが、総瓦葺に変わった平安後期の文様に改めて復元されました。「二巴蓮華文」という、右回り二つ巴を中心にした六弁の蓮華文様です。堂をぐるりと回ると、背後からこの軒瓦がよく見えます。

修復を繰り返し、次世代に継承していく
 解体修理ではないため、躯体構造はそのまま。耐震が気になるところですが、池の中島にある鳳凰堂はもともと、地震の影響を受けにくい地盤に建っているため耐震性に問題はなく、実際に平安時代から一度も地震で破損したことがないそうです。
 ビジュアル的に大変化をとげた鳳凰堂。古い鳳凰堂を見慣れた人々の反応をうかがうと、「塗装の色が落ち着いて品のある印象を与えるため、皆さまからの反応はおおむね良好であると感じています。」と、田中さんはにこやかに答えられました。
 文化財は、修理を繰り返すことによってのみ継承することが可能になります。1000年近くも昔の建造物が、こうして当初の姿で私たちの目の前に生きて存在するのも、古代から受け継がれてきた人々の志あってのものだといえましょう。

 

 



平等院ミュージアム鳳翔館




 

 



平等院鳳凰堂

所在地:京都府宇治市宇治蓮華116
TEL:0774-21-2861
URL: http://www.byodoin.or.jp/


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