2007けんざい
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けんざい243号掲載




まさに天空に向かって伸びていくビル

あべのハルカス
 
地上300m、日本一。“チンチン電車”が走り、人情味を色濃く残すのどかな、あべのの街中にそびえる、シンプル&スマートな超高層ビル「あべのハルカス」は、美しいカーテンウォールを全面にまとい、キラキラと輝いています。「街のような場」を演出した百貨店「あべのハルカス近鉄本店」、ハイグレードな大阪マリオット都ホテル、大阪有数の広さを誇るオフィスフロアを中心とした、縦長の立体都市。今春のグランドオープンを前に、一足早くその全貌を見届けて来ました。 

「けんざい」編集部





天空に高く伸びた、ナニワ庶民の憩いのまち
 ナニワ庶民の憩いのエリア・あべのに、いろいろな「日本一」を持ったビルが完成しつつあります。今年3月7日グランドオープン予定、高さ300mの「あべのハルカス」です。百貨店、ホテル、オフィスの主要3要素で構成され、ターミナルステーションや美術館、展望台などの施設を融合した、いわば立体都市。すでに大阪の新しいランドマークとしてその存在感を十二分に示しています。

 一つ目の日本一は高さ。これまでの日本一「横浜ランドマークタワー」を4m上回る300mです。近畿日本鉄道株式会社の小林昭夫さん(あべのハルカス事業本部 事業部課長)が経緯をご説明くださいました。
 「当初から超高層ビルの構想はありましたが、あべのハルカスの計画検討がスタートした2006(平成18)年秋当時は、伊丹空港の航空規制のため高さ制限がありました。ところが偶然にもその約半年後に航空規制が緩和され、この場所には高さ制限がなくなったのです。このタイミングで初めて、300mで日本一にと決定しました」。

 あべのハルカスには、地域活性や集客を図るための魅力づくりとして多くの工夫やアイデアが満載されていますが、やはり最も分かりやすくアピールできるのが「高さ」なのです。グランドオープンに先駆けて『けんざい』取材班も300mのビューを堪能しました。
 次に大幅に増床する近鉄百貨店は営業面積が約100,000m2。これも日本一です。「単なる増床ではなく、非物販スペースに1/4を使って(買い物目的でなくとも楽しめる)一つの『街』を演出しています」と小林氏。「日本一滞在時間の長い」百貨店を目指すといいます。

空き地ゼロの場所で超高層ビルを建てる離れ技
 あべのハルカスは、高さの違う3つのブロックが合わさったシンプルな形状で、超高層ビルのないあべのの街でひときわ直線的にそびえ立っています。
「威圧感のないよう、外装は全面カーテンウォール。周りの景色が映り込み、風景に溶け込んでいるような印象を与えます。地上100mのブロックと地上300mのブロックに挟まれた200mのブロックは、実は直方体ではなく、断面が台形のようになっています。よく見ないと分からないレベルなのですが、これによって単調な印象が和らいでいるんですよ」とご説明くださるのは、技術部課長・柏雅之さん。

 あべのハルカスの建設には難題がありました。空き地がほぼゼロだったのです。「敷地はすき間のない都心のど真ん中。交通量も人通りも多く、近鉄百貨店の一部は営業したまま、1階では近鉄電車が運行している。そんな場所で大量の資材を運び込み、300mのビルを建てるのは困難でした。屋上を使って資材置き場を捻出したり、特殊なクレーンを開発したりなど、離れ技ともいえる手法によってあべのハルカスの建設は実現しました」(柏氏)。





最上階(60階)展望台「ハルカス300」の屋内回廊

ワンフロア730坪のオフィスフロア

あべのハルカス美術館 入口(16階)






 耐震・耐風構造も最高水準です。「3種類の鉄骨のブレース、ATMD(Active Tuned Mass Damper:強風時の振動を抑える振り子システム)、心棒ダンパー、波形鋼板壁、オイルダンパー、回転摩擦ダンパーといった、あらゆる耐震・制振構造を何種類も組み合わせ、想定される最大の地震でも安全性を確保できるようにしています」と柏氏は言います。

 あべのハルカスの外観には、ポイント的に「<<」模様があしらわれているように見えますが、実はこれ、メガブレースという巨大なブレース。これも外観が単調になるのを避けるため、耐震部材をデザインアクセントとしてわざわざ見えるように配置したそうです。

あらゆる省エネシステムを一つのビルに網羅
 さらなる注目ポイントが、省エネ・CO2削減システムです。こちらは技術部課長・松本太一氏からご説明。「窓はダブルスキンウィンドウで、採光性、断熱性、遮熱性に優れ、空調の負荷を低減します。照明はほとんどの箇所でLEDを採用しています。そして、できるだけ自然の風を利用して外気冷房や排気を図ろうと、ボイドという大きな吹き抜けを設けました。16階と58階には屋上庭園、またそこに降った雨を中水としてトイレに利用。ホテルや百貨店から出る生ゴミをビル内で処理し、さらにメタン発酵槽に取り込んでバイオガス発電も行います。ほかにも、ビル内の各施設が連携したエネルギー利用など、実に多種多様な取り組みが導入されています。個々のシステム自体は既存のものですが、これらを一つのビルに網羅している例はないと思われます。その点ではこれも日本一と言えるかもしれませんね」。

 これらの取り組みが合わさって年間約5,000tのCO2削減(奈良公園と同じ面積のスギによるCO2削減量に相当)が図られます。

 まちのようなにぎわいづくり、最新鋭の省エネシステム……建築という視点以外でも、あべのハルカスの魅力は尽きません。きっと訪れるたびに新しい発見が生まれることでしょう。ますますグランドオープンが待ち遠しくなった取材班一行でした。

 

 



地上80m、16階の庭園

大阪マリオット都ホテル ロビー(19階)

展望台「ハルカス300」の3層吹き抜けの屋外広場(58階)

ビル内に風の通り道をつくる「ボイド」

鉄骨ブレースの一つ、コアブレース


 

 



あべのハルカス/

所在地:大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43
TEL:092-725-9111
URL: http://www.abenoharukas-300.jp/


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