天空に高く伸びた、ナニワ庶民の憩いのまち
ナニワ庶民の憩いのエリア・あべのに、いろいろな「日本一」を持ったビルが完成しつつあります。今年3月7日グランドオープン予定、高さ300mの「あべのハルカス」です。百貨店、ホテル、オフィスの主要3要素で構成され、ターミナルステーションや美術館、展望台などの施設を融合した、いわば立体都市。すでに大阪の新しいランドマークとしてその存在感を十二分に示しています。
一つ目の日本一は高さ。これまでの日本一「横浜ランドマークタワー」を4m上回る300mです。近畿日本鉄道株式会社の小林昭夫さん(あべのハルカス事業本部 事業部課長)が経緯をご説明くださいました。
「当初から超高層ビルの構想はありましたが、あべのハルカスの計画検討がスタートした2006(平成18)年秋当時は、伊丹空港の航空規制のため高さ制限がありました。ところが偶然にもその約半年後に航空規制が緩和され、この場所には高さ制限がなくなったのです。このタイミングで初めて、300mで日本一にと決定しました」。
あべのハルカスには、地域活性や集客を図るための魅力づくりとして多くの工夫やアイデアが満載されていますが、やはり最も分かりやすくアピールできるのが「高さ」なのです。グランドオープンに先駆けて『けんざい』取材班も300mのビューを堪能しました。
次に大幅に増床する近鉄百貨店は営業面積が約100,000m2。これも日本一です。「単なる増床ではなく、非物販スペースに1/4を使って(買い物目的でなくとも楽しめる)一つの『街』を演出しています」と小林氏。「日本一滞在時間の長い」百貨店を目指すといいます。
空き地ゼロの場所で超高層ビルを建てる離れ技
あべのハルカスは、高さの違う3つのブロックが合わさったシンプルな形状で、超高層ビルのないあべのの街でひときわ直線的にそびえ立っています。
「威圧感のないよう、外装は全面カーテンウォール。周りの景色が映り込み、風景に溶け込んでいるような印象を与えます。地上100mのブロックと地上300mのブロックに挟まれた200mのブロックは、実は直方体ではなく、断面が台形のようになっています。よく見ないと分からないレベルなのですが、これによって単調な印象が和らいでいるんですよ」とご説明くださるのは、技術部課長・柏雅之さん。
あべのハルカスの建設には難題がありました。空き地がほぼゼロだったのです。「敷地はすき間のない都心のど真ん中。交通量も人通りも多く、近鉄百貨店の一部は営業したまま、1階では近鉄電車が運行している。そんな場所で大量の資材を運び込み、300mのビルを建てるのは困難でした。屋上を使って資材置き場を捻出したり、特殊なクレーンを開発したりなど、離れ技ともいえる手法によってあべのハルカスの建設は実現しました」(柏氏)。
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