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けんざい241号掲載
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耐火集成材の木造架構が一望できるエントランスホール
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大
阪木材仲買会館
断
熱性が高 く、 調湿作用 が
あり、人にとって快適で健康な空間をもたらしてくれる......二酸化炭素を吸収し、環境にやさしい循環型社会に役立ってくれる......木は、非常に優れた建材で
す。 そんな木の魅力を存分に味わえる、大きな木造オフィスビルが今年の4月、都会のど真ん中に現れました。「
コンクリートから木へ―」の思いが、ここから全国に発信されます。
「けんざい」編集部
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■国
内初の耐火木造オフィスビルが完成
江戸時代、舟運による木材の集積地としてにぎわった大阪の堀江かいわい。その一画に、2本の桜を懐に抱くようにして立っている大きな木造ビルが
あります。 国内初の耐火木造のオフィスビル、大阪木材仲買会館 です。木材の卸売事業者を会員とする「大阪木材仲買
協同組合」の新事務所として、今春完成したばかり。 館内は木の香りがいっぱいに漂い、心が癒されます。
シャープな造形で ありながら、木のぬくもり、優しさ が あふれるそのたたずまいは、都会のオアシスのよう です。
大阪木材仲買協同組合は、1947(昭和22)年に発足し た木材卸売市場の買方団体を起源とする組織。理事長
の雪本政通さんに、お話をうかがいながら館内をご案内いただきました。
「組合として、木材の魅力を内外に発信し、コンク リート社会から木の社会への転換を図っていきたい。
今回会館をガラリとリニューアルしたのには、このような意図が背景に ありました」と雪本さん。設計施工
は、コンペによって決定されました。「建物南側についたアールは、桜の木を包み込むようなイメージに
なっているのがわかると思います。実は『桜を生かす』というのが、設計ポイントとして条件の一つに
なっていたんですよ」。この2本の桜は樹齢65年。組合 とともに育ってきた特別な桜なのです。
防火地域でも大規模木造建築の建設が可能に
同館は、1階がRC造で2、3階が木造。内装・外装共 に、国産の木材がふんだんに使われており、建物全体
がまるで木材のショールームです。
同館の最も注目すべき特徴は、構造材に耐火集成材 が使われた木造ビルで‚ るという点。この耐火集成材
が、設計施工を手掛けた株式会社竹中工務店の開発による「燃エンウッド」です。カラマツの荷重支持部を中心にして、「燃え止まり層」と「燃え代層」が表面に貼り付けられた
もの。
「『燃エンウッド』は1時間耐火部材として国土交通 大臣認定を受けているので、最大4階建の耐火木造建
築物を、通常の建築確認申請だけで建設することがで きるのです。当館は、耐震目的のためRCとの混構造
にしています。木造部分の2、3階の柱と梁はすべて「燃エンウッド」になっています」。
付近一帯は防火地域に指定されているため防火・耐 火の規制が厳しく、これまで大規模な木造建築が建て
られなかったといいます。それが「燃エンウッド」の使用によって可能になったというわけです。また、国土交通省の「木のまち整備促進事業」に採択されたことにより、建設
費・設計費で助成金を受けることができたそうです。
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柱と梁が印象的な大会議室 |
壁の吸音および意匠に使われたフィンガージョイント |
蟻型の加工が意匠として使われた演台 |
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■木を楽しむ創意工夫が随所に盛り込まれる
外観で特徴的なのが、大きく張り出したひさしとバルコニー。室内に火災時や緊急時の避難経路として約2
メートルが確保されています。また、大きなひさ
しによって建物が風雨や日差しから守られ、メンテナンスもしやすくなっています。まさに意匠性と実用性の融合といえま
しょう。こうしたアイデアは、内装デ
ザインにも多く見られます。集成材の“つなぎ目”となる「フィンガージョイント」を壁の意匠に使いながら、吸音材として
も役立てている例や、ヒノキをカン ナが
「1階エントランス横の広い空間は、今後ギャラリーと計画当初から建築業界の関心が高かった同館には、オープン以来、連日のように視察団や見学者が訪れます。雪本さんは
「国土交通省や林野庁、他府県の木材関係団体などが多いですね。もちろん一般の方々でも、自由に見学していただけます」
とアピールします。
各所の木材には、誰が見ても分かりやすいように木の名称が記されています。見て触れて、木という材料に親しめるような工
夫がなされているのです。けした薄 材を2枚のガラスで挟んで日よけにしている
例など、予想外の着想で見る者を楽しませてくれます。
館内を歩いていると、柱と梁の存在感に目を奪われます。木のさまざまな表情を生かすために、こうした構造材もできるだ
け「見せる」よう設計されているのです。3階の大会議室では、柱と梁のスパンが形成す
るダイナミックな構造美を楽しむことができます。
床面から天井まで大きくとられた開口部は、たくさんの自然光を館内に導き、いつも明るいオフィスを演出。この大きな開
口部に設けられた建具が生み出す縦の線は、ひさしの横線と交差して外観をより印象的にしています。
■木
材業界のランドマークとして広く認知を
計画当初から建築業界の関心が高かった同館には、オープン以来、連日のように視察団や見学者が訪れます。雪本さんは
「国土交通省や林野庁、他府県の木材
関係団体などが多いですね。もちろん一般の方々でも、自由に見学していただけます」とアピールします。各所の木材には、
誰が見ても分かりやすいように木の
名称が記されています。見て触れて、木という材料に親しめるような工夫がなされているのです。
「1階エントランス横の広い空間は、今後ギャラリーとして木材などの展示を考えています。地元の人々にもどんどん活用
してもらいたい。都市の中の“森”のような存在を目指したいですね」と雪本さんは同館の存在意義を熱く語ってくださいま
した。
大阪木材仲買会館には、木造のよさや価値を全国に広め、知らしめる“木材業界のランドマーク”になってもらいたいもの
です。 |
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春はバルコニーから満開の桜が
楽しめる
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カウンターの天板は樹齢120年のナラの一枚板 |
見た目に楽しい木のあしらい製材 |
製材が積まれた姿をイメージしたヒノキの壁
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理事長の雪本政通さんと次長の大町洋三さん |
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