2007けんざい
社団法人日本建築材料協会
ホーム お問合せ
会員団体出展者専用ページ 協会の概要 会員名簿 業種別名簿 品目・業種別分類表 統計資料 関連リンク



けんざい241号掲載




耐火集成材の木造架構が一望できるエントランスホール

大 阪木材仲買会館
 
断 熱性が高 く、 調湿作用 が あり、人にとって快適で健康な空間をもたらしてくれる......二酸化炭素を吸収し、環境にやさしい循環型社会に役立ってくれる......木は、非常に優れた建材で す。 そんな木の魅力を存分に味わえる、大きな木造オフィスビルが今年の4月、都会のど真ん中に現れました。「 コンクリートから木へ―」の思いが、ここから全国に発信されます。 

「けんざい」編集部



国 内初の耐火木造オフィスビルが完成
  江戸時代、舟運による木材の集積地としてにぎわった大阪の堀江かいわい。その一画に、2本の桜を懐に抱くようにして立っている大きな木造ビルが あります。 国内初の耐火木造のオフィスビル、大阪木材仲買会館 です。木材の卸売事業者を会員とする「大阪木材仲買 協同組合」の新事務所として、今春完成したばかり。 館内は木の香りがいっぱいに漂い、心が癒されます。 シャープな造形で ありながら、木のぬくもり、優しさ が あふれるそのたたずまいは、都会のオアシスのよう です。
 大阪木材仲買協同組合は、1947(昭和22)年に発足し た木材卸売市場の買方団体を起源とする組織。理事長 の雪本政通さんに、お話をうかがいながら館内をご案内いただきました。
  「組合として、木材の魅力を内外に発信し、コンク リート社会から木の社会への転換を図っていきたい。 今回会館をガラリとリニューアルしたのには、このような意図が背景に ありました」と雪本さん。設計施工 は、コンペによって決定されました。「建物南側についたアールは、桜の木を包み込むようなイメージに なっているのがわかると思います。実は『桜を生かす』というのが、設計ポイントとして条件の一つに なっていたんですよ」。この2本の桜は樹齢65年。組合 とともに育ってきた特別な桜なのです。
防火地域でも大規模木造建築の建設が可能に
 同館は、1階がRC造で2、3階が木造。内装・外装共 に、国産の木材がふんだんに使われており、建物全体 がまるで木材のショールームです。
 同館の最も注目すべき特徴は、構造材に耐火集成材 が使われた木造ビルで‚ るという点。この耐火集成材 が、設計施工を手掛けた株式会社竹中工務店の開発による「燃エンウッド」です。カラマツの荷重支持部を中心にして、「燃え止まり層」と「燃え代層」が表面に貼り付けられた もの。
  「『燃エンウッド』は1時間耐火部材として国土交通 大臣認定を受けているので、最大4階建の耐火木造建 築物を、通常の建築確認申請だけで建設することがで きるのです。当館は、耐震目的のためRCとの混構造 にしています。木造部分の2、3階の柱と梁はすべて「燃エンウッド」になっています」。  付近一帯は防火地域に指定されているため防火・耐 火の規制が厳しく、これまで大規模な木造建築が建て られなかったといいます。それが「燃エンウッド」の使用によって可能になったというわけです。また、国土交通省の「木のまち整備促進事業」に採択されたことにより、建設 費・設計費で助成金を受けることができたそうです。




柱と梁が印象的な大会議室

壁の吸音および意匠に使われたフィンガージョイント

蟻型の加工が意匠として使われた演台






■木を楽しむ創意工夫が随所に盛り込まれる
  外観で特徴的なのが、大きく張り出したひさしとバルコニー。室内に火災時や緊急時の避難経路として約2 メートルが確保されています。また、大きなひさ しによって建物が風雨や日差しから守られ、メンテナンスもしやすくなっています。まさに意匠性と実用性の融合といえま しょう。こうしたアイデアは、内装デ ザインにも多く見られます。集成材の“つなぎ目”となる「フィンガージョイント」を壁の意匠に使いながら、吸音材として も役立てている例や、ヒノキをカン ナが 「1階エントランス横の広い空間は、今後ギャラリーと計画当初から建築業界の関心が高かった同館には、オープン以来、連日のように視察団や見学者が訪れます。雪本さんは 「国土交通省や林野庁、他府県の木材関係団体などが多いですね。もちろん一般の方々でも、自由に見学していただけます」 とアピールします。 各所の木材には、誰が見ても分かりやすいように木の名称が記されています。見て触れて、木という材料に親しめるような工 夫がなされているのです。けした薄 材を2枚のガラスで挟んで日よけにしている 例など、予想外の着想で見る者を楽しませてくれます。
 館内を歩いていると、柱と梁の存在感に目を奪われます。木のさまざまな表情を生かすために、こうした構造材もできるだ け「見せる」よう設計されているのです。3階の大会議室では、柱と梁のスパンが形成す るダイナミックな構造美を楽しむことができます。
 床面から天井まで大きくとられた開口部は、たくさんの自然光を館内に導き、いつも明るいオフィスを演出。この大きな開 口部に設けられた建具が生み出す縦の線は、ひさしの横線と交差して外観をより印象的にしています。

木 材業界のランドマークとして広く認知を
 計画当初から建築業界の関心が高かった同館には、オープン以来、連日のように視察団や見学者が訪れます。雪本さんは 「国土交通省や林野庁、他府県の木材 関係団体などが多いですね。もちろん一般の方々でも、自由に見学していただけます」とアピールします。各所の木材には、 誰が見ても分かりやすいように木の 名称が記されています。見て触れて、木という材料に親しめるような工夫がなされているのです。
 「1階エントランス横の広い空間は、今後ギャラリーとして木材などの展示を考えています。地元の人々にもどんどん活用 してもらいたい。都市の中の“森”のような存在を目指したいですね」と雪本さんは同館の存在意義を熱く語ってくださいま した。
 大阪木材仲買会館には、木造のよさや価値を全国に広め、知らしめる“木材業界のランドマーク”になってもらいたいもの です。

 



春はバルコニーから満開の桜が 楽しめる

カウンターの天板は樹齢120年のナラの一枚板

見た目に楽しい木のあしらい製材

製材が積まれた姿をイメージしたヒノキの壁

理事長の雪本政通さんと次長の大町洋三さん


 

大阪木材仲買会館

所在地:大阪市西 区南堀江4-18-10
TEL:06-6538-2351
URL: http://www.mokuzai-nakagai.com


一覧に戻る



 
Copyright (C) 2007 JAPAN BUILDING MATERIALS ASSOCIATION. All rights reserved.