けんざい237号掲載
京都水族館 私たちが水族館に心ひかれるのは、なぜでしょうか。青く広い海へのあこがれなのか、悠然と泳ぐ魚たちに癒されたいからなのか……。老若男女問わず広く愛される水族館が、京都市民の憩いの場所、梅小路公園内にO PENしました。山紫水明の都をもたらした水の恵みと生態系を再現する一方で、省エネ、水の再利用などエコな取り組みを徹底した、次世代の水族館です。
「けんざい」編集部
■全国最大規模の内陸型水族館、京都市に出現 今年3月、京都市のど真ん中に京都水族館がオープンしました。内陸型の水族館としては全国最大規模。京都の新たな注目スポットとして、地元の方々を中心に、連日たくさんの来館者が詰めかけます。 今回京都水族館を訪れて、多くの見どころを取材することができましたが、ここでは二つのポイントに集約してご紹介します。まず一つめは、省エネ、省スペース、再利用などのエコ機能を最大限に駆使した“スマート水族館”であること。もう一つが、いきものの生態を軸にして見せる展示手法です。 同館企画営業部係長の奥村さんにご案内いただきました。 水族館は、大量の海水を必要とします。特に、内陸型の水族館では海水をタンクローリーで運搬しなければなりませんが、同館では「人工海水製造システム」を導入することによって、自前で海水をまかなうと同時に、運搬にかかるエネルギー(CO2)を削減しました。100%人工海水の水族館は全国でも初めてとのこと。 「人工海水は、雑菌が少なく、安定した水質を保てるというメリットがあります。透明度も高く、いきものがとてもきれいに見えます」と奥村さんは言います。 そして、この水質を保つのに活躍しているのが、高性能のろ過システムを持つ「節水型ろ過システム」。「通常、水族館では水槽水の1割ほどの水を毎日補給します。これは大変な水量です。当館では、貴重な水をできるだけ節約、再利用するため、このシステムを導入。おかげで補給する人工海水は最大1%に抑えることを目指せるようになりました」と奥村さん。水槽の排水はさらにろ過して、ろ過フィルターなど設備機器の洗浄に使われます。水を慈しむ心が、こうした再利用への徹底的な姿勢にも感じられますね。 ■省エネ、省スペース。まさに“スマート水族館” 巨大なイルカスタジアムの大屋根には、客席からは見えませんが、一面に太陽光発電のパネルが張りめぐらされています。最大60Kwの発電が可能といいます。これは、石油に換算すると、年間約1万5,000リットル分に相当します。また、イルカプールの水温は夜間電力を利用して調整することで、エネルギーの効率化を図っています。 ほかにも、省エネのための取り組みは隅々まで見られます。水をミスト状にして噴霧し、空気中から気化熱を奪って気温を下げるミスト空調、ガラスルーバーによる自然換気システム、雨水利用にLED照明……。 もともと、京都水族館の建築には、日陰規制と埋蔵文化財の保護のため、上にも下にも空間に大きな制約がありました。これだけの規模の水族館になれば、設備機器の占めるスペースも相当な規模になりますが、そうなると展示スペースに影響が出てしまいます。そこを京都水族館は、人工海水製造システムや節水型ろ過システムはじめ、多くのエコな取り組みによってクリアし、省エネ、省スペースを実現。コンパクトでありながら充実した展示内容を持つ水族館となったのです。「まさに時代が生んだ、“スマート水族館”だ!」と思わずにはいられませんでした。
京都水族館/
所在地:京都市下京区観喜寺町35-1(梅小路公園内) TEL:075-354-3130 URL: http://www.kyoto-aquarium.com/