けんざい219号掲載
大阪の中心、中之島を南にのぞむ堂島エリアは、江戸時代、諸藩の蔵屋敷が連なり、おびただしい人とお金と情報が動いた場所。そんな都心の中の都心に、新しく生まれた街が「ほたるまち」です。 2つの多目的ホール、超高層マンション、多彩な飲食店から放送局までがそろうこの街は今、大阪でも注目を集めている場所。私もワクワクした気分で取材にうかがいました。
株式会社 久我 森井恭子
朝日放送の谷浩司部長(右)と
■水の都・大阪の再生を目指す大型プロジェクト 「ほたるまち」のプロジェクト名称は「水都・OSAKAαプロジェクト」。1993年(平成5)に移転した大阪大医学部付属病院跡地の約2.1ヘクタールの再開発事業で、2002年(平成14)には都市再生緊急整備地域にも指定されています。事業の中核的役割を担った独立行政法人都市再生機構(UR)西日本支社で、保田敬一郎マネージャーにお話をうかがいました。 「かつての堂島は、各藩の蔵屋敷を経由して、全国の富と情報が集まった場所でした。それが、近松や西鶴を生み、懐徳堂や適塾を育てる力にもなった。慶応義塾の創始者・福沢諭吉が生まれたのも、ここです」。 そんな歴史を持つ堂島には、どんな街づくりがふさわしいのか。打ち出されたのが、「水の都・大阪の復活につながる街づくり」という基本方針でした。 「出発点は、大阪市が設置した懇談会が、事前に発表した提言。ビジネス拠点やショップだけの街ではなく、さまざまな目的を持った人が集まり、安らぎ、交流する水辺の街を創ろうということです」。 この基本方針から生まれたのが「文化・情報を発信する」「水辺に人のにぎわいを呼ぶ」「都心に快適に居住する」という3つの機能。URを核に、コンペで選ばれた各企業がその具体化に取り組みました。 「朝日放送さんは放送局と多目的ホール、カフェ&バー。ビープラネッツさんは、別の多目的ホールと高級賃貸住宅。オリックス不動産さんは、超高層マンションと商業施設。さらに、慶応大学・大阪芸術大学のサテライトキャンパスも誕生します。それぞれの持ち味が発揮され、『情報発信』『にぎわい』『都心居住』のすべてが、具体化していきました」。 それにしても、気になるのが「ほたるまち」というネーミング。モチーフは「淀船の 竿の雫も ほたるかな」という与謝蕪村の俳句だそうですが・・・・。 「きらびやかな光のような街ではなく、ほたるのようなやさしい光で水辺を照らし続ける街を目指そう。それが、この名前に込めた私たちの思いです」。 だから、あえてカタカナの名前を避けたのですよ、とうかがって、私も納得しました。 最後に、「ほたるまち」の未来について、保田さんの思いをうかがいました。 「住む人が安らげる、訪れる人が楽しめる街になってほしいのはもちろんですが、水の都・大阪の再生の起点になってくれるとうれしいですね。川の眺め、川からの眺めを考え、水辺の触れ合いを大切にしているのが、この『ほたるまち』。その思いが人々に共有され、同じような街づくりが続けば、この付近の風景も大きく変わるのではないでしょうか」 水の都・大阪の再生も夢ではないはずですよ、という保田さんの思いに、私も深く共感しました。
建築家・隈研吾氏が設計した朝日放送新社屋
ほたるまち (水都・OSAKAαプロジェクト)/
所在地:大阪市福島区福島1丁目 TEL:06-6969-9883 福島一丁目地区再開発協議会 ※独立行政法人都市再生機構西日本支社内 URL: http://www.suito-osaka-alpha.com/ 音響のよいホール内は、最大2,000人収容可能 竣 工:2008年(平成20)5月(まちびらき)