兵庫県立歴史博物館は、姫路城の大天守閣から東北の方角300mの公園内に建っている。 藩制時代の区分にしたがって兵庫の5つの地方−摂津、播磨、但馬、丹波、淡路−の歴史・文化が各地域別に紹介されている。教育文化立県構想の一環として県内の教育、学術、文化の発展に寄与し、県外からの来訪者にも兵庫県の歴史を知ってもらうことが目的である。普及課指導主事・陶山浩さんに案内していただいた。 来館者は約6万人(平成16年度)で圧倒的に県内、特に姫路周辺からが多いという。 常設展示は1階に「原始・古代・中世・近世」を、2階に「近現代」の資料を展示している。近世の「城と城下町」コーナーでは姫路城はじめ日本中の城に関するあらゆる情報が展示されており、とりわけ15分の1の姫路城模型の迫力に圧倒された。この模型は上階から見下ろすこともでき、本物ではなかなか見られないアングルから全景を眺められるのが面白い。年間5回行なわれる展覧会のうち2回は外部から収蔵物を借りて開く特別展で、特に力を入れている。 案内や説明は、県内から登録した130人のボランティアから約50人があたっている。
博物館の設計はコンペで丹下健三氏(1913〜 2005)の案が採用された。去年3月に没した丹下氏は東京オリンピックの象徴・代々木体育館や東京都庁舎の設計で知られる建築界の巨人。同館は文化勲章受賞後最初の設計である。 設計の大きな特徴は、姫路城の存在感を十二分に活用して建築の意匠に採り入れていることだ。 白御影を贅沢に使用した外壁は城の石垣を模している。建物全体が、白鷺城と称された美しい白漆喰の色で統一されている。内部では壁の上方のあちこちに直径30cmくらいの穴が並んでいるのが目にとまる。これは空調用の通風孔なのだが、鉄砲や弓矢などで敵をねらい撃ちするために開けられた穴(狭間)をイメージしたのがよくわかる。 展示室をつなぐ渡り廊下は、姫路城の櫓と櫓をつなぐ渡り廊下を思わせる。 2階展示室へは長く緩やかなスロープが伸びている。壁面は片面が石垣風白御影、対する片面は全面ガラス張りで、お城が一望できる。ベストポイントだというスロープの踊り場からは、まさに絶景が楽しめた。「スロープのガラス越しに見ると、じかに見るのとはまた違った趣があります。私はここから見るほうが好きなんですよ」と陶山さん。 もう一つのビューポイントは裏庭。姫路城を背にして立つと同館のシンボルとも言えるティーラウンジのミラーガラスに姫路城が写り込んで、はっとするほど美しい。
開館20余年を経て傷みが生じてきた同館は、来年内部をリニューアルする。周辺地域全体が国の指定史跡であるため、外装を変えることはできないが、間取りやレイアウトなどかなり大がかりに改修する。今年9月に着工し、平成19年度春にはリニューアルオープンするという。リニューアルのテーマは“交流博物館”。来館者とボランティアの交流をもっと深めるようなプログラムも検討中という。ぜひリニューアル後にも訪れてみたいものだ。 リニューアルに先がけて、去年4月から、ウェブサイト「ひょうご歴史ステーション」を開設した。“閉館時間も休館日もない24時間入館できる博物館”と銘打って兵庫県の歴史情報を紹介している。10年間にわたり、1年ごとに1つずつコンテンツを増やすという。 (記:蒲田晃子)
兵庫県立歴史博物館