大阪府下最大の木造建築 優美な屋根の重なり、格調高い書院造
大阪天満宮の建築としての見どころはやはり本社と、そこから廊下でつながる参集殿、梅花殿である。権禰宜の柳野等さんに本社から案内してもらった。 大門から真正面に見える本社は権現造といわれ、手前に構える拝殿と一番奥の本殿、この両殿をつなぐ幣殿で構成されている。本殿は最も古く、天保14年(1843)に建立された。 近くで見ると描いていたイメージよりはるかに大きい。聞けばこの本社は大阪府下の木造建築では最大とのことだ。その屋根は入母屋造りで、両翼の部屋にも一段低い屋根が葺かれ、微妙に反ったそれぞれの屋根の複雑な重なり具合が優美である。 今でこそ銅板葺だが、大正15年まではすべて檜皮葺だったと記録されている。檜皮のほうが見た目には趣きはあるが、これだけの広い屋根を葺くには膨大な費用がかかるうえに持ちが良くない。また材料の檜皮自体が少なくなっている現在では、檜皮葺屋根は難しいようだ。
拝殿側から入り、奥の本殿を見る。やや薄暗くなった内陣に金箔をまとった装飾がきらきらと輝き、さらに奥の中央には天神様を中央に御祭神が5柱祀られている。 日ごろ神様をほとんど意識せずに生活している私だが、この空間にいると不思議と身がひきしまる。 本殿東側の参集殿は明治42年(1909)の建立、大広間を備えた書院造だ。平成11年(1999)に国の登録文化財に指定された。一列に書院、上段の間、脇床が並び、様式や面積など書院造の約束事が厳格に守られている建築物は、この天満宮の参集院を除けば西本願寺の鴻の間と醍醐寺の三宝院寝殿だけという。大広間の畳をめくると能舞台が現れるのは大きな驚きだった。 昭和2年に貴賓殿として建てられた梅花殿は、参集殿と同時に登録文化財になった。構造が寝殿造で内部が書院造になっており、現在は結婚式にだけ使われている。 建築美を引き立てるのは襖絵・板絵、透かし彫りなどだ。大阪のそうそうたる画人・彫物師の手に成ったというので楽しみにしていた。が、襖絵と板絵はすべて取り外され、博物館で保存されているそうで、あるのは実物大の写真だけだった。残念!あるべきところにあって、人に使われてこそ価値があると思うが、値段のつけようがない“お宝”とあれば仕方がないのかも知れない。
氏子に守られ戦火を逃れる 伝統を守りつつ現代的要素取り入れ
大阪天満宮