イメージは歴史を進む「文化の船」 内部の設備、技術は最新鋭
何とも不思議な外観である。遠目には船、潜水艦にも見える。間近でよく見ると、チャコールグレーの鈍い光沢を放つ瓦タイルがびっしりと建物を覆っている。案内してくださった同館施設係の奥忠二氏によると、「奈良・平城京の地を海原に見立て、悠久の歴史を進む“文化の船”」が設計者のコンセプトだという。平成4年(1992)、国際建築設計競技で磯崎新の作品が最優秀に選ばれ、11年(1999)に竣工した。
メインは何といっても最大客席1,655席の大ホールだ。床、座席、ステージのすべてが可動式。ステージレイアウトは8形式に変化するので演劇やコンサートなどのいろいろなイベントで多様な演出ができる。同時通訳ブースを備え、国際会議にも対応する。
クラシックコンサートのための中ホールは、壁面が全部ガラス張りという常識破りのホールである。大きさや厚さの異なるガラスを組み合わせることで音の反響が調整される。ガラス張りのコンサートホールは日本中でもおそらくここだけという。
建物の外殻構造はコンクリート補強鋼板シェルで構成、その表面は燻し調の瓦タイル(せっ器質無ゆう外装タイル)。その数約15万枚、特殊な曲線を持つ外壁をくまなく覆うため、アールを何通りかに分けたタイルを特注した。奈良の寺院建築の大屋根をこの瓦タイルで表現したのである。2,155枚のタイルの裏側に市民の署名があるのは東大寺の屋根瓦の裏に寄進者が署名していたことにならっている。
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