2007けんざい
社団法人日本建築材料協会
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講演会の予定・講演録
「天災は忘れなくとも、やって来る」

   近藤 三津枝 氏

20世紀と21世紀の違いは、「情報の質と量」
 1995年1月17日早朝、自宅で大きな揺れで目を覚まし、2011年3月11日には再び大きな揺れを国会で経験しました。こうした「阪神・淡路大震災」、「東日本大震災」に直面した私は、もう「天災は忘れた頃に、やって来る」ではなく、「天災は忘れなくとも、やって来る」時代だと確信しました。
 前者の「天災は忘れた頃に、やって来る」の格言の起源は、1896年の「明治三陸地震」と、その37年後に発生した「昭和三陸地震」の二つの地震の間隔にあります。30〜40年の間隔で起きる大地震、大津波の記憶や教訓は、次の天災が起こった時には忘れさられてしまうことに警鐘を鳴らしたのが、「地震は忘れた頃に、やって来る」の格言です。
 しかし、20世紀と21世紀の違いは、「情報の質と量の違い」です。例えば明治三陸地震のとき、三陸沿岸を大津波が襲ったことが東京の政府に伝えられたのは、津波発生から24時間も経ってからのことでした。情報伝達が遅く、現地の被害の状況を伝える手段もわずかな写真しかありませんでした。
 現在ではテレビ、スマホ、ツイッターなどで状況がリアルタイムで映し出されます。今や、世界中で起こる地震や津波の恐ろしさが瞬時にキャッチできる時代、「天災は忘れなくとも、やって来る」時代になったのです。私たちは、災害の教訓を次に迫りくる「天災」に生かし、備えを怠ることはできない時代にいるのです。
ユーザーもどんどん変化していく時代、命を守る「建築材料」
 今年4月14日に発生した「熊本地震」も、いくつもの教訓を私たちに残しました。その一つのキーワードが「非構造部材」だと私は思います。
 「熊本地震」では、構造部材だけではなく、天井板や壁・窓ガラス・照明といった非構造部材が数多く損傷・落下しました。特に、こうした被害が自治体の指定する避難所で発生したので、避難所が使えない事態にもなりました。
 問題は、過去に建設された老朽化した非構造部材です。「そうです。皆さんの出番です!」
 私たちの生活空間の最も身近な「非構造部材」を数多く手がけている会員の皆さま方だからこそ、「非構造部材の耐震性、安全性」についても大いに提言をして頂きたいと思います。
 また、最近、スケルトン工事が盛んになってきています。大幅な間取り変更、環境性能や耐震性の向上が一挙にできるようになったからです。
 ユーザーはスケルトン工事の第一段階の解体工事で、マンションの共用部の構造部材や配管、また専用部にどのような建築材料が使われているのかを初めて目の当たりにします。住まいの裏側の構造や材料を、住む人がチェックできる時代となってきました。
 よりよい生活空間を確保し、大地震に対する信頼性を高めようと、建築材料や建築部品を消費者、ユーザーが直接選択する時代も近いでしょう。
 「建築」は日常生活の「衣食住」の「住」を担い、地震などの非常時には命を守ってくれる尊いものだと私は思います。建築物全体を考え、「一つひとつの材料」をデザインし、生産し、ユーザーに供給し、コーディネートしているのが皆さま方です。今日の私の話しが、時代の変化をとらえて活躍される皆さまのイノベーションに、少しでもお役に立てれば幸いです。
※本記事は5月19日に当協会総会で行われた記念講演を
基に、再構成して作成された講演録です。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
 
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