先ほども出ましたが、RC構造物の長寿命化の基本は、構造躯体(スケルトン)と内装・設備(インフィル)の分離です。たとえば、皆さんがイタリアの古い街に行かれたら、骨組みは400年500年前の石造のままです。しかし、中の生活環境は非常にすばらしい現代の環境に作り変えてある。欧州の伝統的なコミュニティも、そういう街の中で守られているわけです。
その上で次のような問題を考える必要があります。
○構造体などの安全性確保/100年200年を経た構造躯体の耐久性を心配する声がありますが、住宅品質確保法(品確法)の構造安全等級を、通常の1から3に上げれば、500年に1度ぐらいの地震にも対応できる。また、免震・制震技術の利用も有効です。これは、非構造部材や設備機器の安全性確保でも同じです。
○居ながらリニューアルの構法開発/リニューアルのたびに、生活の基盤をどこかに移すのは、住む人にとって非常に負担です。やはり、居ながらにして、リニューアルをする構法を考える必要があります。
○RC構造物のリノベーション/建物の長寿命化を考えるなら、基本設計の時点でリノベーションという発想も含めることが必要でしょう。そのために大事なのが、設計段階で計画供用期間を明確に示すことです。
日本では、計画供用期間が明示されず、維持保全への意識も低いため、耐用年数が短く見られがちです。しかし、RC建物の耐用年数というのは、本当にそんなに短いのか。建物の初期性能を極端に高めなくても、定期的に維持保全を行い供用中の性能を常に高めれば、今の技術でも長寿命化は十分可能だと考えています。
なお、計画供用期間に関して「JASS
5」では、建築主(発注者)または設計者の考えによって定め、特記することとしています。これは今後、建築物の発注者・設計者責任が問われることを意味する、というのが、私の解釈です。
○3000年RC建築物/古代ローマのパンテオンが2000年近くもったのなら、3000年もつRC建築物は造れますか、という人がいます。これは、そんなに難しい話ではありません。要は、中の鉄筋にさびないステンレスを使えばいい。今、これはJIS化されていますし、海水で練ったコンクリートを使った実験データも出ています。だから、3000年RC構造物を造る技術はもうある。それを使う使わないは、日本の街づくりをどうするかという問題かもしれません。
また、ステンレス鉄筋の使用は、鉄資源の有効利用にも関係してきます。仮に日本のステンレス鉄筋需要を、欧米よりやや低い0.25%と想定すれば、年間25,000トンの需要が考えられる。その分、鉄のリサイクルも、より安定化していくと考えられます。 |