講演会 講演録

  • 2021年8月27日
    金属サイディング外壁重ね張りリフォームのご提案(カバー工法)
    (KENTEN2021特別講演)
    日本金属サイディング工業会
    代表幹事 古澤 純也氏

    軽量、高断熱、豊富なデザインが特長の外壁材

     金属サイディングとは、表面材と裏面材の間に芯材(断熱材)をサンドイッチした外壁材です。軽量で断熱性に優れ、ひび割れや凍害の心配がなく、豊富なデザインが選べるという特長があります。表面材は主に4種類で、現在は塗装ガルバリウム鋼板が主流です。
     金属サイディング重ね張り工法とは、既存外壁の上に新しいサイディングを施工する工法のことです。既存の壁を撤去する必要がないため、住みながらのリフォームが可能で、短期間で工事が完了します。また、廃材処理などの費用負担が小さく、環境にもやさしい工法です。
     成形方式は、柄付け加工→さね成形加工→断熱材成形→加飾(塗装)という流れです。表面材はエンボス成形やロールフォーミングで加工を行います。

    新築需要の減少に伴い、リフォーム需要に期待

     金属サイディングの歴史をご紹介します。1966年に石膏裏打ちの金属サイディングが登場。1979年にはJIS規格「JIS A 6711」を制定し、現在に至ります。1963年に登場した窯業サイディングと同様、50年以上の歴史を持っています。
     2020年は、消費増税やコロナの影響で新設住宅着工数が減少し、それに伴って金属サイディングの出荷量も減少しました。しかし10年前と比較すると、新設住宅着工も金属サイディング出荷量も増加しています。さらに金属サイディングはリフォーム比率が高く、新設着工の影響を受けにくいので、今後新築が減少する中、リフォーム需要に期待がかかります。
     外壁材市場においては、戸建新築用では窯業サイディングのシェアが圧倒的で、金属サイディングは5%です。ところが戸建リフォーム用では、金属サイディングのシェアが38%で1位となっています。
     金属サイディングの柄にはいくつかの特色があります。まず金属の持つシャープ感です。これがモダンなデザインをつくり、住宅・非住宅を問わずシンプルなフォルムを生かすことができます。また、組み合わせによって窯業系サイディングにはない新しさを出すことも可能です。近年はキューブ型の住宅が増え、直線的でシャープ感のある外壁・外観デザインが求められています。金属サイディングはこうしたニーズに最適な外壁材といえます。

    金属サイディング重ね張り工法の多彩な長所

     外壁リフォームには「塗り替え」と「重ね張り」二つの方法があります。リフォームでより強みを発揮する金属サイディングでは、重ね張り工法(カバー工法)を推奨しています(図1)。
     金属サイディングは、施工性・耐震性、断熱性・経済性、美観性など、多くの優位性を有しています。
    [施工性] 重量が窯業サイディングの約1/4と軽いため、住宅構造が同等の場合、躯体にかかる負担が小さく、施工も容易です。
    [耐震性] モルタル既存壁を金属サイディングで重ね張りすると、外壁の強度はリフォーム前より約2.6倍アップします。また、かん合部の片側だけを固定する構造なので、地震時にはかん合部がスライドして揺れに追従することによって、壁の変型を吸収して破損や脱落を防止します。
    [断熱性] 断熱性能に優れた芯材を使用しているため、他の外壁材に比べて高断熱で省エネです。夏は快適で冬は暖かい住環境を実現できます。
    [経済性] 通気構法を標準としており、壁の温度上昇を抑えたり、壁内の湿気を排出したり、悪天候時に通気層から雨水を排出するなどの効果が得られます。また、重ね張り工法は塗り替えに比べて侵入熱抑制効果が約1.8倍となり、夏場の冷房効率を高めます。初期費用とメンテナンス費用を合わせたトータル費用も、重ね張りが最もお得です(図2)。
    [美観性] 特徴的な柄、シンプルな柄など、柄が多彩でデザインも豊富です(約200柄800品種)。長尺設定が可能なので、中間水切りのない美しい収まりが実現でき、片流れ物件や非住宅にも最適です。
     その他、耐久性、防水性、防火性にも優れています。

    質感の調和で高評価を受けたリフォーム施工事例

     第19回金属サイディング施工例フォトコンテストリフォーム部門で最優秀賞を受賞した事例では、ブラックサイディングの横張りが光の加減で重厚感をかもし出しています。デザインの決め手となる凹凸部分に木目を配置して暖かくまとめ、新築のような見事な仕上がりとなったリフォーム作品です(図3)。その他、優秀賞の作品を数点ご紹介します。
     今回の審査では、「金属と木」のように、素材を組み合わせた事例が注目されました。金属のシャープな質感と柔らかな木目をうまく調和させたケースが高い評価を受けていました。このフォトコンテストは日本金属サイディング工業会が主催で毎年開催していますので、機会があればぜひご応募ください。

TEKTON - 日本建築材料協会デザイン委員 -TEKTON - 日本建築材料協会デザイン委員 -