2007けんざい
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けんざい244号掲載





神戸大学
 
阪急六甲駅からゆるやかに続く坂道をひたすら登って行くと、神戸の美しい街並みやその向こうにある海への眺望が開けてきました。ここは神戸大学の六甲台キャンパス。同キャンパスには国の登録有形文化財となっている建物が5棟もあるのです。六甲台本館、社会科学系図書館、兼松記念館、出光佐三記念六甲台講堂、武道場です。今回は、同様の様式(ロマネスク様式)を基調とする近代洋風建築の前者4棟を訪れてきました。修復を終えたばかりの建物群は、往時の姿そのままです。

「けんざい」編集部





柔らかな色とデザインは「白亜の殿堂」
 昨年秋、一斉に修復が始まった登録有形文化財の建物群。取材した4棟はいずれも、旧文部省設計、株式会社大林組の施工で、1932(昭和7)年〜1935(昭和10)年の間に旧制神戸商業大学の校舎として完成した建築物です。 今回のすべての修復の陣頭指揮を取られた神戸大学名誉教授・足立裕司先生(元同大学工学研究科建築学専攻 建築史研究室)が自らご案内くださいました。なお、修復の施工を手がけたのは、当初の施工者である大林組です。

 4棟に共通しているのは、太陽光を受けて白く輝くベージュのスクラッチタイルと、笠木の下部に施されたニュアンスあふれるテラコッタ製のパラペット、アーチの意匠などです。4棟のスクラッチタイルは同じように見えますが、4棟それぞれで微妙に色合いが異なるそうです。この色合いの自然なばらつきは、焼く際に塗る釉薬で調整するそうです。

 まず学内に現存する最古の建築物である六甲台本館。1932(昭和7)年に完成し、経済学部、経営学部、経済学研究科、経営学研究科の入った校舎は、神戸大学のシンボルです。玄関ホールの市松模様のモザイク・タイル、重厚な円柱と中央階段に目を奪われます。大教室、貴賓室、会議室と、意匠が凝らされたものばかり。足立先生が、修復部分と昔のままの部分の違いを指してご説明くださいます。

 「昔の姿を再現しながら、現在の設備や機能に合った修復を行うのには、大変な苦労が伴います。今回、電設機器や配管をさりげなく隠して、まるで建築当初からそこに何もなかったかのような自然さで修復されているところがたくさんあります。いわれないとまったく気づかないでしょう」と足立先生。
 竣工当初、「白亜の殿堂」と称された六甲台本館ですが、戦時中は近隣から「目立ち過ぎて空襲の標的にされる」と非難され、せっかくの美しい外壁を黒アスファルトで塗りつぶしたこともあったそうです。

 



六甲台本館の玄関ホールと廊下

兼松記念館の外観

アーチ型天井が美しい社会科学系図書館大閲覧室






修復は“ビフォー&アフター”ではない
 社会科学系図書館は1933(昭和8)年竣工で、書庫には当時珍しい昇降機装置が置かれました。正面玄関を入るとまず目に飛び込んでくるのが、同大学出身の中山正實画伯による大壁画「青春」と、印象的な図柄のステンドグラスです。高い吹き抜けのアーチ型天井を持つ大閲覧室にも同様のステンドグラスがトップライトとして設置されています。神戸商業大学の校章が入った木製の閲覧机が歴史の重みを感じさせてくれます。

 全体的にきわめて大規模な修復ですが、使える部分はできるだけ残して使うことがポイントです。竣工当時の建材は、一つひとつ叩いたり試験を繰り返したりして、メンテナンスしながら継続して使う努力をするのです。スクラッチタイルや壁材、床材なども、新旧が混在しているにもかかわらず、優れた修復技術のおかげで両者の違いがほとんど分からないものばかりです。足立先生はこう言います。「文化財の修復はパッチワークみたいなもの。さりげなく差し替えて、新旧の違いもかかった手間や苦労も、見る人には気付かせない。いかに変わったかを見せる“ビフォー&アフター”みたいな修復じゃダメなんです」。

 1934(昭和9)年竣工の兼松記念館は、4棟の中では比較的シンプルな意匠の外観をしています。日豪貿易の先駆者・兼松房次郎を記念する兼松翁記念会からの多額の寄付によって同館の前身となる記念館がつくられたことに名称の由来があります。現在は経済経営研究所が入っています。内部は手すりのアールデコ調の装飾が特徴的。折上格天井(おりあげごうてんじょう)が格調高さを伝える2階の記念室、ここにもアールデコの装飾が見られました。

建築を未来に残そうとする人々の心意気に感動
 出光佐三記念六甲台講堂は、1935(昭和10)年に完成しました。正面玄関の五連アーチがとても端正な印象です。船窓のような丸い窓の装飾や操舵輪をかたどった装飾によって、国際貿易都市であることが強調されています。舞台両袖と上部には中山画伯の壁画3点が描かれ、三位一体で独特の空間を演出しています。これほどの大規模な壁画を有する講堂は全国的に見ても珍しく、きわめて貴重だということです。

 「修復には、外からは見えない苦労がたくさんあります。取り壊して建て直したほうが楽だしきれいになるし、メンテナンスフリーにすればその後の手入れもしなくていい。しかし、建物は本来メンテナンスしながら使っていくべきものなのです。もちろん現在使っている人々の意向も踏まえながら、過去の味わいや雰囲気をそのまま未来に引き継ぐ。それが私たち修復に携わる者の役割だと思っています」。

 往時の姿と変わらず美しく修復された4棟を細部まで見学し、改めて感じたことは、古い建築物を未来に継承していくことの大切さと、残そうと一所懸命努力する人たちの志の高さでした。

 

 



図書館の壁画とステンドグラス

六甲台講堂内部。舞台は壁画に囲まれる。

正面から見た六甲台講堂

六甲台本館会議室。壁の色にこだわった。

ご案内くださった足立裕司先生


 

 



神戸大学

所在地:神戸市灘区六甲台町1-1
TEL:078-881-1212
URL: http://www.kobe-u.ac.jp/

 


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