2007けんざい
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建材情報交流会ニュース

 第53回
「大阪工業大学梅田キャンパスにおける省CO2の技術とデザイン」

 講演資料は2日前に掲載予定です。
 当日の配布資料はモノクロ印刷です。
 カラーが必要なの方はダウンロード・プリントアウトお願いいたします。
 *講演録ができましたら掲載いたします
  掲載情報は全て著作権の対象となります。転載等を行う場合は当協会にお問い合わせください。

 

「OIT梅田タワー建築概要」〜都市型アーバンキャンパスの先駆けとして
 南 博之氏 兜桾伯囃z事務所 取締役設計部長
 

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■21階建ての都市型タワーキャンパス誕生
 2017年4月、梅田・茶屋町エリアの一角に大阪工業大学梅田キャンパス「OIT梅田タワー」が開校しました。従来のロボット工学科、システムデザイン工学科、空間デザイン学科の3学科で構成される新設学部「ロボティクス&デザイン工学部」の拠点として活用されています。
 OIT梅田タワーは、地上21階建て、地下2階建て、面積約33,000uの鉄骨造です。最上部の高さは125.15m(図1)。梅田駅の東側、ちょうどJR東海道線に隣接した土地です。この辺りはあまり高い建物がなく、よい立地でした。
 皆さんが入って来られた北側のメインエントランスの前に、今10mほどの道路が広がっています。しかしもともとそこは、暗く狭いにもかかわらず人通りや車が多く、社会的な問題を抱えていた土地でした。
 そんな中、大阪市茶屋町地区の地区計画が制定され、その一帯のエリアの再開発が進められることになりました。この地域に求められたのは、土地の高度利用、周辺地域との連続性、歩行者の回遊性、にぎわいの創出などです。
 歩行者のネットワークを充実させるために新たな「まちかど」(広場)を整備することになり、そこを基本的な方針として進めてきました。広場をつなぐことによって歩行者の回遊性を高める計画としました。
 メインエントランスの前には大きな広場ができ、今は歩行者も自由に行き来できるようになり、非常に明るく開放的な空間になっています。北東角も、もともとは狭い交差点でしたが大きな広場になっています(図2)。
 敷地南側は、隣地側ではありますが、総合的で一体的な面的整備を行うことによって、南側の敷地(ヤンマー本社)からの歩行者ネットワークも確保し、人の流れを創出するような計画にしています。敷地南東角も、当初は完全に裏通りでしたが、人の流れを出しやすい歩行者用通路を整備しました。

■広く市民に資する施設として多くのエリアを一般開放
 地下2階は、本日通って来られた方もいると思いますが、地下街から地上に上がらずにこの建物の1階エントランスに上がって来られる動線をつくりました。地下鉄、JR、阪急などから直接、雨天時でも濡れずに建物の中まで入って来ることができ、地下部分でも歩行者のネットワークを形成しています。
 地下1階は、この建物としては駐車場や駐輪場のエリアですが、隣接の建物の地下駐車場とも接続しています。周辺の駐輪需要が多いので、一部に、誰でも利用できる公共駐輪場を確保しています。本来なら地上に駐輪施設として設けるのですが、それを建物の中に取り込み、一般の方に使ってもらえるようにしました。
 地上部分では、建物の周りで回遊動線をつくろうと試みました。建物の中は、エントランスホールを含めた縦の動線が公共利用に開放されており、一般の方々が自由に行き来できるようになっています。
 その他1階には、一般の展示施設としてギャラリーを設けたり、にぎわいを創出するためにレストランやコンビニなどの店舗を設けたりしています。
 大学エリアには、セキュリティーゲートを通って入ります。大学エリアは学生や教職員などしか入れませんが、それ以外のエリアは、2〜4階でも一般の方がいつでも入れるようになっています。

■遮音性能を確保した約600人規模の大ホール
 今この講演を行っているセミナー室があるのが2階です。セミナー室も一般開放しており、申請すれば誰でも利用できます。3、4階には「常翔ホール」という約600人規模の大ホールがあります。一般利用も可能です。大学施設内のホールなので、学会発表やプレゼンテーションなど学術的な利用をメインにしています。  
 しかし非常にスペックの高いホールであるため、音楽会などにも人気があります。600人規模というのは、周辺にある大ホールほどではないのですが、この立地でこの規模は少ないようです。
 常翔ホールは、講演利用を主体とした高機能なコンベンションホールとして設計しました。特徴をいくつか紹介します。JR東海道線の営業線が隣接しており、電車の行き来が非常に多いところなので、設計を始めるにあたり、音や震動をいかにシャットアウトするかがポイントでした。まず外側に固定遮音層という、大体の音をシャットアウトする層があります。そして固定遮音層と完全に縁を切った状態で浮(うき)遮音層を設け、二重の遮音層にしました。遮音層の箱の中にもう一つ箱をつくっているイメージです(図3)。

■コミュニケーションボイドで空間をつなぐ
 続いて積層計画です。これまで紹介した一般開放部分は、「にぎわいゾーン」といいます。6階から上が大学エリアです(図4)。
 5階はエネルギーセンターです。主要な設備機器を配置し、エネルギー供給を行っています。サブ防災センターも5階に設置しています。
 大学エリアですが、6階に設けたのは学生が自主的に学習できる「ラーニングコモンズ」です。「キャンパスフォレスト」という屋上庭園もあり、学校ならではの工夫が施されています。その上からは、大学の「実験研究ゾーン」が続いています。 
 高層部分は、両端に縦動線やエネルギーの供給ラインが入っている「コア」があり、真ん中に実験研究ゾーンを配置しています。実験研究ゾーンは、いろいろな用途で使用したり、将来の利用形態が変わったりすることを考え、フレキシブルな無柱大空間として構成しています。
 その部分を上下階につなぐのが、大きな吹き抜けになった「コミュニケーションボイド」です。4層と9層の吹き抜けがつながっています。当初からのコンセプトとして「学科間・学年間の垣根がない」学校づくりを進めていきたいという強い思いがありました。それを実現するために、ボイド空間を縦でつなぐことで物理的な垣根を取り払おうと考えました。
 都市型キャンパスは平面が窮屈になり、内部の居心地が悪くなる事例が多かったというのも、垣根を取り払った理由の一つです。
 研究室は、一般的な大学の研究室のように個室が並んでいるものではなく、大空間を皆でシェアしながら使っています。教員室はありますが、仕切りはガラスで開放感あふれる空間です。
 15階から20階まではほぼ同じような構成です。真ん中に、スタジオなり実験室なりの大きな空間があり、それがコミュニケーションボイドの中の階段でつながっています。
 最上階の21階はレストランで両側にテラスがあります。22階もあるのですが一般には入れない機械室になっています。その上が125mとなり、緊急離着陸場(ヘリポート)が設置されています。

■外観を特徴づける、透明感に満ちたカーテンウォール
 北面高層部は、大きな1枚のカーテンウォールで構成されています。圧迫感がなく、非常に透明感のあるカーテンウォールです。中から外、外から中が見渡せるように、できるだけ透明感のあるカーテンウォールに、という当初のコンセプトに基づいています(図5)。
 南側は、高性能な外装材を用いています。環境配慮のため太陽光発電パネル一体型庇を設け、日射のコントロールと有効利用を同時に実現します。
 構造に関しては、鉄骨造で一部CFT(コンクリート充填鋼管構造)造やSRC造となっており、制震構造をとっています。
 軸組は一般的な軸組ですが、透明感のあるカーテンウォールを実現するための構造設計を行いました。透明感を出すために柱を限界まで細くしたいと思いました。そのため、21階と22階にハットトラスという非常に剛性の高い軸組を設け、そこからカーテンウォールを8階まで吊っています。写真からも分かるように、屋上のハットトラスからカーテンウォールが吊り下がっています(図6)。
 施工で特徴的なのは、下のRCの躯体が出来上がるまでに上をどんどん積んでいく逆打(さかう)ち工法です。これによって工期がかなり短縮できました。
 制震構造に関しては、各階のよく見える位置に制震装置を多数設けました。今回採用したのは3種の装置(1.増幅機構付き減衰装置(減衰こま)、2.粘性制震壁、3.オイルダンパー(ブレース付き))。工学系の大学ということもあり、教材に使えるようにあえて見せる配置をしました。
 都市の建物には防災拠点機能が求められます。設計当初から、どんな災害で建物がどんな被害を受けるかを考え、その計画に基づいて細かく設定しました。例えば津波や内水氾濫などの水害の場合。この地域は地震発生時、津波の被害よりも淀川左岸側の決壊による内水氾濫の被害のほうが大きい地域です。
 水の高さは約5.5mになるので、このビルの1階が全部水につかってしまいます。これを想定して、5階にエネルギーセンターを持っていきました。水害が発生した際も建物の機能を維持できるようにというコンセプトで設計しています。
 また、防災拠点機能という意味では、この建物は帰宅困難者750人を5日間収容できるだけのキャパシティーを持っています。通常は3日あれば公共交通機関などが復旧するので3日間想定が多いのですが、プラス2日まで可能としました。
 


「タワー型キャンパスにおける環境配慮施策とパッシブデザイン」
 東原 理子氏 叶ホ本建築事務所 設計監理部門 建築グループ次長
 

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■大阪工業大学梅田キャンパスの事業のコンセプト
 学校法人常翔学園は、1922年に関西工学専修学校として創設され、学生数・生徒数約23,000人、3大学・ 2高校・2中学を有する総合学園です。
 大阪工業大学梅田キャンパスは、OIT梅田タワーとして、創立100周年に向けた「学園のフラッグシップシンボリック拠点」として整備されました。関西では初の都市型のタワー型キャンパスとして地上125.15mを誇ります。
 ここに、大阪工業大学のロボティクス&デザイン工学部が新設され、都心の立地を活かして、デザインと技術を融合した新しい学びによるイノベーション人材育成が行われています。高齢化社会に向かう中で、デザインやロボットによって人の生活をより豊かにする方法を研究し、発信していく学部です。
 この建物は、地域コミュニケーションの創出を図るため、地域貢献施設として約600席の「常翔ホール」などを整備しています。また、環境配慮を重視した計画を行い、 国土交通省の「住宅・建築物省CO2先導事業」の採択を受けています。
 敷地はJR大阪駅北側、グランフロント大阪、阪急梅田の並びにある茶屋町地区に立地します。都市の交通網の交点に位置するので、近接して高いビルが建つことはなく、都心立地においても非常に条件のよい恵まれた環境にある といえます。
 建物の周りには、都市に回遊性をもたらす歩行者空間や広場となる緑地空間「常翔の杜(もり)」を整備しました。また、ビル風対策を兼ねた常緑の高木や、北側には地区の街路樹となるケヤキ並木を配置しています。南側にはサクラ並木が隣地から連続し、都市に新しい風景をもたらしました。

■省CO2施策の全容・断面構成
 地球に優しい都市型タワーキャンパスとして、環境配慮を重視した計画を行いました。テーマはタワー型キャンパスの特性を活かした省CO2技術の採用、都市型大学キャンパスにおける先進的環境技術の継続的な普及です。そしてこれらの環境施策を地域防災にも活かすことが考えられています。
 高層部の南北の外装は、高性能な機能を持つ「エコロジカルスキン」が特徴的です。
 6階から上が大学ゾーンです。先述の「エコロジカルスキン」は、大学ゾーンの南北面に相当します。大学の各階は、柱のない無柱空間として、様々な学習形態にフレキシブルに対応します。その各階を、北側の「コミュニケーションボイド」という学生の憩いの場となる吹き抜け空間でつないでいます。
 低層部は地域開放ゾーンとして常翔ホールなどが入り、学術利用から音楽利用まで行える多機能ホールを有しています。6階の「キャンパスフォレスト」は、森の図書室として、100種類以上の樹種が学べる緑の空中キャンパスです。植物園のように樹名板があり、QRコードからより詳しくその植物について学ぶことができます(図1)。

■環境配慮関連施策の具体例
 高層部は、高性能化した外装と様々な環境施策によって、ゼロエネルギー化を目指す「ZES」(ゼロ・エネルギースペース)という空間を設けています。
 低層部は、日常的に利用する環境技術を災害時にも活用する「サステナブルBLCP」(事業生活継続計画)を特徴としています。
 タワーキャンパスのエコに対する取り組みは、エコツアーなどで情報発信される予定です。
○南面エコロジカルスキンと太陽光パネル一体型庇
 南面のエコロジカルスキンには「太陽光パネル一体型庇」という外装材を設けています。斜めの部分に太陽光パネルを設置して、庇状に80cm出た形状で高層部の各階に配置しています(図2左)。80cmの庇の出はシミュレーションによって決めており、夏場の日中の強い日差しはほとんどカットすることができます。
○南面エコロジカルスキン:多機能ダブルスキン
 南面の「多機能ダブルスキン」は、外側と内側2枚のガラスで構成され、その中に「グラデーションブラインド」というブラインドを設置しています。これにより人の目に影響のある範囲は遮光し、影響のない天井の付近では羽が水平になって採光して奥のほうまで明るさを取り込めるよう制御しています(図2右)。
 また多機能ダブルスキンでは、夏は日射熱の排熱、冬は太陽熱の集熱利用、中間期は涼しい外気を取り込む自然換気を行います。中間期は庇の上部から外気を取り込み、建物の中を通って北側の吹き抜け空間を経由し、その上部にある排気口から排出されます。
○北面エコロジカルスキンと超高断熱ガラス
 次に北面の「エコロジカルスキン」です。北面にあるコミュニケーションボイドのガラス面には、超高断熱ガラスを採用しています。0.85W/uKという熱貫流率の数値は、コンクリート外壁に断熱材を施したものと同等の断熱性能です。超高断熱ガラスは、三層複層真空ガラスと呼びますが、Low-Eガラスと真空ガラスの、計3枚のガラスで構成されています。かつてはなかなか普及しなかった Low-Eガラスが現在では広く使われている様に、このような断熱ガラスも今後普及していくことを期待しています。
○タスクアンドアンビエント照明制御
 デザインスタジオという製図室に採用した照明制御です。アンビエント照明とは、天井面や柱、壁を照らす照明のことですが、バランスをとりながら人の目に感じる明るさを適正に調光制御します。夜はセンシングによって、人が滞在する場の周りを明るくします。
 直接照明にはタスクライトを採用し、全体的に快適な明るさの中に、必要なところは必要な明るさをさらにとるといったように、従来型の照明方式より快適性と省エネルギー性の向上を図りました(図3)。
○タスクアンビエント空調システム
 アンビエントとなる天井放射空調と、タスクとなる吹出し空調の組み合わせによって、床からの熱負荷に応じて可変風量制御を行います。平面を16の制御エリアに区分けし、人がいる在席エリアとその近接エリアに応じた空調制御を行います。天井放射ならではの快適性と省エネルギーを実現するシステムです(図4)。
○地中熱利用のアースチューブ
 南面にある外部階段に沿ったダクトから、地下に外気を取り込みます。アースチューブピットの中では、見学会を想定して空気の流れを矢印で示しています。取り込んだ外気を地下1階から地下2階へ、また平面的にもなるべく長く経由することで、夏は涼しく、冬は暖かい空気を低層部の空調に利用します。
 昨年夏の計測では、外気と最後の空気の取り入れ口では約5℃の温度差が確認できました。

■ゼロ・エネルギー制御
 このようにさまざまな環境施策を用いることによって、ゼロ・エネルギー化を図る「ZES」というスペースを設けています。それが学生たちの集いの場となる吹抜け空間、コミュニケーションボイドです。ここでは、太陽光発電の発電量と、年間で使用する照明や空調エネルギーをプラスマイナスゼロにすることを目指しています。
 ZESでは、エネルギーの最適化制御によって、自然通風、自然採光、地中熱、太陽熱など、あらゆる自然エネルギーを積極的に活用し、照明や空調のエネルギーを適切に自動調節するエコモードというシステムを備えています。
 ZESエネルギー情報は各階にあるタッチパネルで誰でも見ることができます。学生をはじめとして、環境に興味を持ってもらい、利用状況によってゼロ・エネルギー化が進んで行き、ZESが広がっていくことを目標としています(図5)。

■サステナブルBLCP(事業生活継続計画)
 本キャンパスは、日常で利用する環境配慮の施策を災害時に活用することが考えられています。災害時の対応としては、高圧2回線受電やコージェネレーションシステムなどのオンサイト電源の設置およびエネルギーの多重化などがあり、災害レベルに応じた電力供給系統連携システムを備えています。
 建物内には「エコサイン」が各所に掲示されています。これまで紹介したさまざまな取り組みを随所で紹介しています。1階には「エコモニター」で自然エネルギーの利用状況などをリアルタイムで紹介しているエリアがあります。
 これらの取り組みによって、省CO2効果は基準建物より約40%の削減を目指しています。教育施設ならではの「継続性」を活かし、 先導的省CO2の取り組みについて、社会への継続的な普及 ・波及に貢献していくことを意図しています。

■設備計画の概要
 電気設備計画では、高圧の2回線を別変電所から受電しています。5階のメイン電気室、12階の中間設備室、22階の屋外機置場にキュービクルを設置し、高圧ループ送電を行っています。22階のキュービクルからは高層部に動力系の電力供給を行ない、 中間設備室のキュービクルからはコンセント・照明の電力供給、5階からは低層部の動力・コンセント・照明の電力供給を行い、搬送エネルギーのロスを抑えた計画です。
 発電はガスコージェネレーションと太陽光発電により、高層ゾーンの中間階となる12階にPCS(パワーコンディショナー)と蓄電池を設置しています。中央監視設備はBAcnet(バックネット)によるオープンシステムを採用しています(図6)。
 機械設備計画について、主熱源は電力です。高層階では空冷ヒートポンプモジュールチラー、低層階ではヒートポンプモジュールチラーと温水焚吸収冷温水機の併用です。低層系と高層系の熱源は、熱交換器によって相互利用ができます。
 上水は5階に受水槽、12階に中間水槽、屋上に高架水槽を設けています。地震時などに水を守るため、各水槽には緊急遮断弁を設置しています。雑用水は井戸水をメインに利用しています。雨水利用も併せて活用し、補給水として市水でバックアップするシステムになっています。

 



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